第八話 『妹に我が国の政治情勢を叩き込む』
まず、政治というものについてだが、基本的には「外交」と「内政」という二つの分野に分けられる。
外交について話すなら、まずは我が国(T国)が国際社会においてどのような立場に置かれているのかを説明する必要がある。
周知の通り、我が国は四方を海に囲まれた島国だ。外交面では、長年にわたって近隣の大国(C国)から圧力を受け、干渉を受け続けている。
ただ、歴史や言語、血統において僅かな繋がりがあるという理由だけで、相手国は長年にわたり、我が国は自国の管轄下にあり、その一部であると主張し続けている。
そんな状況の中で、C国とは対立する立場にあるのが、我が国が併合されることを望まず。『世界の警察 』を自称する大国(A国)である。
その国による『 時折行われる』支援のおかげで、我が国の主権は国際社会において幾度となく圧力を受けながらも、どうにか維持されている。
こうした二つの大国が、それぞれ異なる思惑を抱えてせめぎ合う中、我が国はその狭間で、生き残るために必死に立ち回ってきた。
外交政策においても、基本的には両国のうちどちらか一方に接近するという考え方が主流であり、その方針によって国内の意見も大きく二つに分かれている。
そして、その対立は政治の世界にもそのまま反映されていた。
我が国は多党制を採用しているものの、この数十年間の政治は、基本的に二大政党を中心とした争いによって成り立ってきた。
一つは、A国寄りと見なされている『青草党』。
もう一つは、C国寄りと見なされている『海藍党』。
それぞれのイメージカラーにちなんで、人々はこの二つの勢力による対立を、簡単に『青緑対立』と呼んでいる。
そして前回の総選挙において、玲を擁立した新興政党『革新党』が勝利を収めることになった。
このように政治の構図を変えた彼らは、近年では民意に耳を傾けることを重視し、外交面においても国際社会との交流を積極的に進め、主要国との良好な関係を維持している。
少なくとも、俺が調べられる範囲の資料ではそのように示されている。だが、まだ彼らと直接会ったことがない以上、実際にどのような外交戦略を持っているのかについては、慎重に見る必要がある。ひとまず疑問符を付けておくべきだろう。
一方、内政については、その多くが時事問題と深く関わっている。基本的には国民生活に関わる問題が中心で、所得や収入、税制、年金、教育問題、物価、エネルギー、公共事業、公衆衛生……など、挙げればきりがないほど多くの課題が存在する。
だいたい一定の期間ごとに、メディアはさまざまな話題を大きく取り上げて世間の注目を集める。そこで俺は、今月の討論番組で頻繁に取り上げられているテーマを中心に、玲と一緒に復習することにした。
そして、それぞれの問題について彼女自身の考えや立場を引き出せるよう、導いていった。
理解力は決して高いとは言えなかったが、それでも玲は責任感を見せ、辛抱強く俺と一緒にしっかりとノートを取りながら、政治に関する基礎知識を学んでいった。
「……うん……うん」
柔らかな朝の陽射しが窓から差し込み、その光に誘われるように俺はゆっくりと目を開けた。霞んでいた意識は、少しずつ現実へと引き戻されていく。
目を覚ますと、俺はリビングの床で寝転がっていた。辺りには昨夜まとめたノートや資料が所狭しと散乱している。
寝床としては最低最悪の環境だ。そんな惨状とは対照的に、玲は俺の膝を枕代わりにして、穏やかな寝息を立てながらすやすやと眠っていた。
「……にゃふぅ、えへへ……」
すっかり寝ぼけている玲は、いつものような少し抜けた顔を晒しながら、そんな間の抜けた声を漏らした。いったいどれだけ熟睡していれば、こんな寝言が出てくるんだよ……。
もしかすると、これは相当疲れている証拠なのかもしれない。
何しろ昨日は一晩中、政治の基礎知識を必死に詰め込んでいたのだ。玲だけではなく、俺ですらいつの間にか眠りに落ちていた。
だって、このままここで寝かせていたら、風邪を引いてしまうかもしれないからだ。
だから俺は慎重に玲を抱き上げて彼女の部屋まで運び、そっとベッドに寝かせて布団をかけた。それを確認してから、ようやく安心して自分の部屋へ戻った。
自分の部屋に戻って最初にしたことは、俺たち二人の学校にそれぞれ長期休暇の申請をすることだった。
複雑な事情を説明した末、なんとか学校側の了承を得ることができた。そして、俺は机の上に置いてあったパソコンを起動した。
本番まで、あと数時間。番組は今夜八時からだ。
現在は午前十一時頃。本番までは、まだ時間がある。
それまでに玲には十分な睡眠を取らせておきたい。何せ今回は完全なアウェー戦だ。自分たちでどうにかできる要素や、当日のコンディションだけは万全の状態に整えて臨まなければならない。
もし玲が番組中にあくびでもしたら、間違いなくメディアに大げさに取り上げられ、あれこれ騒ぎ立てられるだろう。
それだけは避けなければならない。たとえ些細なことだったとしても、このスタートしたばかりの時期に、国民へ悪い印象を与えるようなことは避けるべきだ。
本話で語られる政治情勢はすべてフィクションです。
あまり深刻に受け止めず、気軽にお楽しみください。
もし似たような情勢が存在したとしても、それはあくまで偶然です(笑)




