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第五十一話 『妹の目から見れば(上)』

 皆さん、こんにちは。

 最近、国会議員になった玲華です。


 仕事については、まだまだ分からないことや慣れないことも多いけど、いろんな場所に顔を出したり、イベントに参加したりすることには、少しずつ慣れてきました。


 そして今、私はお兄ちゃんのクラスメイトの女の子と、この部屋で二人きりになっています。


 お兄ちゃんはどうしたのかって?

 とっくに追い出しました。


 目の前の彼女を私一人で面接したい――ということにして。


 正直、面接なんてどうでもいい。

 それよりも、私は目の前にいるこの人にものすごく興味がある。


 あのオタクなお兄ちゃんに女の子の友達がいる?

 しかも、どうやらお兄ちゃんに好意まで持っているらしい。


 ……おかしい。

 これはどう考えてもおかしい。


「うーん……むむむ……」


 もう一度、目の前の彼女をじっくりと見つめる。

 長いまつ毛、艶やかな黒髪、整った顔立ち、ほんのり赤い頬、すらっとした手足。

 そして何より――胸が大きい!

 くっ……羨ましい……。


 顔なら私のほうがちょっとだけ上だと思う。

 だけど、あの豊満な果実は……さすがに強敵すぎる。


「えっと……あの……私、どこか変でしょうか?」


 彼女は少し恥ずかしそうに、おずおずと尋ねてきた。


 どうやら、この態度は演技ではないらしい。わざとらしさも感じないし、ぶりっ子をしているようにも見えない。

 もし私が男の子だったら、こういうタイプの女の子に夢中になっていたかもしれない。

 綺麗で、優しくて、おしとやか。


「ああ……ううん。瑤曦さんって、本当に綺麗だなって思ってただけ」


「そ、そんな……玲華議員のほうがずっと綺麗です。それに、明るくて可愛らしいところも、私にはすごく憧れで……」


「あはは、そんなに褒めなくてもいいよ」


「い、いえ……玲華議員こそ……」


 そんなお世辞の応酬が終わると、再び気まずい沈黙が訪れた。


「…………」


 まあ、彼女をわざわざここに残したのは私だ。

 仕方なく、私はもう一度口を開いた。


「瑤曦さんって、別に私が目当てでここに来たわけじゃないんですよね?」


 さっきも、お兄ちゃんの力になりたい、できるなら近くで支えたいと言っていた。

 ここから話を切り出せば、そこまで唐突にはならないはずだ。


 そもそも、こうして二人きりで残った以上、これから何を話すのかなんて、お互いなんとなく分かっているだろう。

 ――お兄ちゃんのことだ。


「はい。友達として、力になりたいと思って……」

「でも普通、友達のために学業をいったん脇に置いてまで、仕事をしようとは思わないですよね?」

「……それは、確かにそうですね」

「お兄ちゃんも今はいないし、私ももう遠回しに聞くのはやめますね」


 私は瑤曦さんの顔をまっすぐ見つめた。


「瑤曦さん、お兄ちゃんのことが好きなんですよね?」


 私がそう尋ねた途端、瑤曦さんの顔が一気に真っ赤になった。

 恥ずかしそうに顎を引いて、口元を服の襟に少し埋める。

 ほんと、この人はいちいち仕草が可愛い。


 こんなに素敵な女の子が、いったいあのムッツリで朴念仁でオタクなお兄ちゃんのどこを好きになったんだろう。


 まあ、うちの家系の血をちゃんと受け継いでいるだけあって、顔は悪くない。

 でも、あんなに人付き合いを全然しない性格で、どうやったらこんな学校一の美少女みたいな子と仲良くなれるんだ?


 それだけじゃない。

 この前だって、あの絶世の美女である葛欣姉さんと、なんだかすごくいい雰囲気になっていた。


 ……何これ?

 お兄ちゃん、モテ期でも来たの?


 なんかちょっとムカつく……。

 ただの私のバカ兄貴のくせに……。


 ああ、もう。なんかモヤモヤする。

 何なんだろう、この気持ち。


 別に私はブラコンなんかじゃない。


 でも、いつも一緒にいるお兄ちゃんが、いつか他の女の人に取られるかもしれないと思うと、なんとなく面白くない。


 ……やきもち?

 いや、違う。

 ……たぶん違うよね?


 あ、分かった。

 きっとあれだ。


 冷蔵庫に入れておいた自分のプリンを、誰かに勝手に食べられたときと同じ気持ちなんだ。

 うん。きっとそう。


「……バレちゃいましたか」


「たぶん、誰が見ても分かると思いますよ。うちの朴念仁なお兄ちゃん以外は」


 というか、隠しているつもりがあるのか疑いたくなるくらい、その想いは分かりやすかった。


「……そうですね。私、彼のことが好きです」


 一度言葉を切って、瑤曦さんは自分の両頬を軽く叩いた。

 そして勇気を振り絞るように、まっすぐ私を見つめる。


「私、李亞洛が好き」


 声は相変わらず優しかった。

 それなのに、その言葉には不思議なくらい力があった。


 うわあああああ……。

 何この告白。すごい迫力……。


 もし私が男の子だったら、こんな顔でそんなことを言われた瞬間、たぶん恋に落ちてる。


 ……お兄ちゃん、いったい何したの?

 こんないい子にここまで想ってもらえるなんて、もったいなさすぎるでしょ。

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