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第三十六話 『水着写真、政界を震撼させる』

「つまり、私の投稿も最終的にはいい方向に働いたんだよね? やっぱり私って天才だ!」


 俺の分析を聞いた玲は、そんなふうに実に能天気なことを言った。

 楽天家――というより、単純に頭が足りないだけなのかもしれない。


「いや、むしろ悪い影響のほうが大きいと思うぞ。林主任や党全体にまで、広報上の危機を招いたり、いろいろと迷惑をかけたりしたかもしれないからな」


 俺は改めて、今回の件で迷惑をかけたのは玲自身だけではなく、党や周囲の人たちも同じだと念を押した。


「……そっか。じゃあ、葛欣姉さんには謝らないとね。でも、せっかくニュースになったんだから、この宣伝効果を利用して、もっと頑張って、ファンをいっぱい増やせばいいんだよね?」


 少し反省したような顔を見せた玲だったが、少し考えた末、結局また前向きな方向へと思考を切り替えていた。


 玲の言っていることは、実のところ正しい。

 もう起きてしまったことをいつまでも悩んだところで仕方がない。重要なのは、ここからどうやってこの騒ぎを利用するかだ。

 こういう広報危機なんてものは、いわば「災いを転じて福となす」のが一番だ。


 世間に「まあ、別に大したことじゃない」と思わせることができればいい。そうなれば、騒ぎは騒ぎでなくなる。

 ……要するに、みんなが気にしなくなれば勝ちなのだ。


「そうだな。これからのことをしっかりやればいい。ところで、あの水着は中学生にはちょっと派手すぎるから、これからはもう着るな。次からはもっと普通の水着にしろ、キッズ水着しか着てはいけない。」


「キッズ水着なんて全然セクシーじゃないし、今どき中学生がキッズ水着なんて着る人なんていないよ。」 


「なんでセクシーになろうなんてするの! それに、あんたのあの貧相な子供っぽい体型には全然似合わないし。」


「腹が立つ!! 今日、ネットでたくさん褒められたのに。それに、あれは私が苦労して貯めたお小遣いで買った、すごく気に入ってる水着なんだから!」 


「私に八つ当たりしないで。党部に迷惑をかけた罰だと思って、没収する!今夜、家に帰ったらその水着を私に渡して。」


「はいはい……分かったよ……」


 こうして罰として例の水着を没収することが決まり、今回の騒動についての話し合いは、ひとまず終わった。


 俺はパソコンに向かい、各方面への連絡に追われていた。

 その隣では、玲が仕事の予定もないことをいいことに、ビーズクッションの上でだらだらと過ごしている。しかも、『HUNTER×HUNT○R』を何冊も読み終えていた。

 ……こいつ、本当に議員なんだろうか。


 しばらくして仕事用のノートパソコンを閉じる。

 そして俺は、今日も元気に騒ぎを起こしている議員の妹を連れて、ケビンの運転する車で家へ帰った。


 それから玲は自分の部屋へ戻って水着を探し始めた。

 しばらくして、見るからに不服そうな顔をしながらリビングへ戻ってくる。


「はい、これ。没収なんでしょ。ちゃんと渡したからね」


 そう言って俺の手に水着を押しつける。


「でも、変なことに使ったら絶対ダメだからね! そんなことしたら、お父さんに全部言うから!」


「するわけないだろ。余計な心配をどうも。『封印されしエクゾディア』と同じように封印して、クローゼットの奥深くにでも封じ込めておくよ」


「……そこまで言うなら、せめて五つに分けるのだけはやめて。いつかまた着るんだから」


 互いにそんなツッコミを交わしながら、俺は玲から滑らかな手触りの水着を受け取った。


 ところで、なんで僕はリビングで妹の水着を手に持たなきゃいけないんだ? 変態じゃないのに。

 今の自分の姿がかなり恥ずかしいと気づき、僕は部屋に逃げ込み、その水着をテーブルの上に放り投げた。そのビキニをぼんやりと見つめていると、LINEの通知音が鳴った。ヤオシーからのメッセージだった。


 それにしても、どうして俺がリビングで自分の妹の水着なんか持っていなきゃならないんだ? 俺は別に変態じゃないぞ。

 今の自分の姿が、実はかなり恥ずかしい状態なのだと気づいた俺は、そそくさと自分の部屋へ戻った。そして、その水着を適当に机の上へ放り出す。

 その水着をぼんやり眺めていると、スマホからLINEの通知音が鳴った。

 ——瑤曦からだった。


「やっほー! やっほー! やっほー! やっほー! ニュース見たよ。二人とも、また大騒ぎを起こしてるね。玲華ちゃんの水着写真、すごく元気いっぱいで可愛かったよ。私もこんな妹が欲しいな~」


 普段、直接話すときの大人しい彼女からは想像もつかないほど、メッセージではお茶目な口調で話しかけてくる。

 どうやら、今回の騒動もニュースを見て知ったようだ。


「そうなんだよ……午後はその件について、二人でかなり激しい話し合いをしてたんだ」


「へえ、そうなんだ。それで、話し合いの結果はどうなったの?」


「玲が党にかなりの迷惑をかけたから、その罰として、あの水着は封印することにしたよ。ちなみに、今は俺の机の上に置いてある」


「え、没収? そうなんだ? つまり、今は君のところにあるってことだよね? じゃあ……ちゃんと大事に預かっておいてね。妹さんの水着なんだから、変なことに使ったりしちゃダメだよ?」


「……なんで君までそんなこと言うんだよ?」


 妹だけならまだしも、同じクラスの女子にまで疑われる始末だ。

 思春期の男子高校生って、そんなに信用がないものなのか?



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― 新着の感想 ―
初めて拝見しました。 最新話から読み始めたのですが、内容がとても面白く、題材も新鮮でいいですね。 これから少しずつ、過去の話も読んでいこうと思います。 玲っていうキャラ、すごく面白いなと思います。お兄…
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