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第三十四話 『お尻ぺんぺんの刑』

 事務所の契約を結んでから、すでに一週間が経った。

 この一週間、俺たちは事務所の掃除をしたり、家具を買い揃えたり、仕事に必要なものを少しずつ用意したりしてきた。


 つい先ほど事務所環境を整え終えたばかりで、居心地のいい空間に仕上がっていた。  そして今、俺たちはこの広々とした事務所の中でも一番広い部屋にいる。俺が「議員室」と書かれたプレートを取り付けた部屋だ。


「お兄ちゃん、次の一冊取って。ありがと」


 うちの議員様はというと、新しく購入したビーズクッションに寝転がり、すっかりだらけきった様子で手を伸ばしている。

 どうやら本棚から漫画の続きを取ってほしいらしい。


「ほら、これを受け取れ。お前、リラックスしすぎだろ? 女の子がスカートを履いて足を広げて寝転がってるなんて、パンツが丸見えじゃないか。誰かに見られたらどうするんだ?」


「大丈夫よ。ここにいるのはお兄ちゃんだけだし、あなたは『誰か』には入らないわ。」


「まあ、言ってることは分かるけどさ……その格好はどうなんだよ。せめて少しは起き上がれ」


「うわっ……お兄ちゃんってば、うるさいなぁ。私のパンツが見たいなら、こっそり覗けばいいじゃん。いちいち大騒ぎしないでよ、変態。エッチ。」


「そんなの興味ねえよ! それに、実の妹のパンツなんて、一体何が面白いんだ?」


 そもそも、いくら思春期が男に多大な影響を及ぼすからといって、物心つく頃からずっと一緒に育ってきた妹に欲情するなんてことは、俺にはあり得ない。


 ……いや、これは別に俺が自分に言い聞かせているわけじゃない。ちゃんと科学的な根拠があるのだ。

 心理学や人類学では「ウェスターマーク効果」、別名「幼少期の同居効果」と呼ばれる現象が知られている。幼い頃から共に育った二人は、成長したあとに互いへ性的な魅力を感じにくくなるというものだ。


「うぅ……お兄ちゃん、私のこと嫌いなんだ……。泣いちゃうよ……?」


 玲華は泣きそうな顔を作りながらソファの上に座り、下から俺を見上げるようにして甘えてくる。


「いや、嫌いってほどじゃないからな? ただ、そういう欲情の対象としては見られないってだけで」


「好きか嫌いか。どっち?」


 頬をぷくっと膨らませ、唇を尖らせながら、玲華は容赦なく答えを迫ってくる。


「……あーもう、分かったよ。俺の負け。好き。好きだって」


「うわ、キモい。ロリコン。妹コンじゃん」


 俺が答えた瞬間、玲華はころっと態度を変え、今度は露骨に蔑んだような目で俺を見ながらツッコんできた。


 ……絶対わざとだ。

 こんなの、完全に罠じゃないか。おとり捜査だ。


「よし、決めた。今度こそお前の尻をひっぱたいて、たっぷりお仕置きしてやる!」


 私の静かな怒り、彼女を膝の上に抱き上げ、お尻を激しく叩いた。殴りたくなるような妹は、思いっきり叩かれるべきだ。そうしてこそ、教訓を学ぶのだから。


「痛い痛い痛い痛い痛い!!やめて……これはセクハラよ……変態、性犯罪者、妹好き、ロリコン、性犯罪者!!」


 お尻を真っ赤に叩き上げた後、彼女をビーズクッションに戻した。今度は案の定、姿勢を正して座ることを覚えていた。それにしても、獣の調教というのはこういうものだ。ご褒美か、それともお仕置きか、どちらかしかない。


「ううううう……変態、エッチ、鬼畜お兄ちゃん。」

「また言ったら、また叩くぞ。」   

「降参、降参。もうやらない、お尻がもうボロボロになりそうだ。」

「ちゃんと反省したなら、それでいい。ほら、アイス」


 お仕置きが終わった後、彼女はとてもお利口だったので、冷蔵庫からアイスキャンディーを一本取り出してあげた。さっき話した獣の調教の話、覚えている?

 これがご褒美の部分なんだ。


「そういえばさ、ここ数日って仕事あんまり入れてないよね? お兄ちゃん、何か考えてるの?」


 玲華はそう言いながら、痛そうに尻をさすり、アイスの包みを開けてペロペロと舐めていた。


「正解。前に話した幕僚の募集を始める。俺たちだけで全部の仕事を抱えるのは無理があるからな。仕事を分担してくれるチームを作る――この広い事務所を借りたのも、そのためだ」


「幕僚? 秘書なら、もうお兄ちゃんがいるじゃん?」


「そうだよ。でも、他にもスタッフが必要なんだ。俺にも苦手なことはあるし、そういう分野に長けた人たちを募集して、俺たちを手伝ってもらうんだ、例えば、議員事務所には大まかに言って、こんな役割を担当するスタッフがいる……」


 俺は玲に、議員事務所で働くスタッフにはどんな役割があるのか、一つひとつ説明していった。


 事務所の責任者:事務所の日常業務を統括し、各方面との調整や人事管理を担当する。


 政策秘書・政策スタッフ:政策の調査や法案の作成、国会での質問原稿や公聴会の資料作成などを担当する。


 日程秘書:政治家の日々のスケジュールを管理し、面会や地方での活動予定などを調整する。


 広報担当・報道官:報道発表やメディアへの対応、問題が起きた際の危機対応などを担当する。


 SNS担当・広報企画:公式SNSの運営や動画の撮影、投稿の作成、政治家としてのイメージ作りなどを担当する。


 選挙戦略担当・選挙参謀:選挙戦略の立案、世論調査の分析、支持者や有権者の構成調査などを担当する。


 地方組織担当:地域の支援者との関係を築き、地方議員や各種団体との連携、選挙時の動員などを担当する。


「……まあ、ざっとこんな感じかな」


 ちなみに、俺の立場は今のところ、さっき挙げた「日程秘書」に近い。



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