第二十四話 『ソーシャルメディアでの発信戦略』
「お兄ちゃん、アカウント作ったよ。どんな投稿をすればいいの?」
「Face○bookには、お前が正しいと思った経済や政治、時事関連のニュースをシェアしていこう。それと、自分なりに思ったことや時事問題についての意見も書くんだ」
理由は単純だ。
このSNSは比較的年齢層の高い利用者が多い。
だからこそ、俺たちが真面目に仕事をする議員だということを知ってもらう必要がある。
普段から世の中の出来事に目を向け、政治や社会問題にも関心を持ち、自分なりの考えを持っている。
そういう姿勢を、まずは発信していくわけだ。
「インスタグ○ムには、食べ物とか、自分の写真とか、可愛い猫や犬の写真とかを投稿しよう。文章は短めでいい」
このSNSは、若者や流行を追いかける層が多い。
だから、こっちでは難しい話をする必要はない。
……まあ、俺自身も若者の一人だから、あまり偉そうなことは言えないんだけど。
正直、俺だって長々とした文章やニュース記事なんて読みたくない。
綺麗な写真が載っていれば、それでいいのだ。
このSNSの主流といえば、食べ物の写真、鍛えた腹筋の写真、ファッションや水着の写真、おっぱいの写真、盛りに盛った自撮り写真……。
……これ以上はやめておこう。下手なことを言うと、いろんな方面から怒られそうだ。
まあ、登録する目的は単純だ。
俺たちも若者の一員ですよ、と世間にアピールするためである。
ちなみに俺はあまり使わない。まあ、オタクだからな。
「Twit○erの投稿は、なるべく慎重にしよう。できれば日本語と英語の二か国語で書いたほうがいい」
俺たちの国ではTwit○erの普及率はそこまで高くない。
だが、海外では事情がまったく違う。
リツイートによる拡散力も高いし、何より俺たちは政治家だ。ちょっとした発言でも、海外の人間に見られる可能性は十分にある。
だからこそ、ここでの投稿はできるだけ慎重に、無難な内容にしておく。
変に目立つ発言をして、必要以上に言葉尻を取られたり、最悪の場合は外交問題にまで発展したりするのは避けたい。
無難でいい。政治家のSNSなんて、それくらいでちょうどいいだろう。
「Plu○kと比べれば、こっちはかなり気楽でいい。日記代わりに、適当に何か書いておけばいいよ」
前に挙げたSNSと比べると、Plu○kは利用者がそれほど多くない。
世界的に見ても普及率はそこまで高くないし、外国人によって開発されたサービスではあるものの、ユーザーの八割近くは俺たちの国の人間らしい。
そういう事情もあって、とりあえずアカウントだけは作っておくことにした。
ここは日記帳のような感覚で使えばいい。
議員が普段どんな生活をしているのか気になる人たちにフォローしてもらえれば、それだけでも玲の人気を伸ばす助けになるだろう。
俺個人のPlu○kに対する印象を言うなら……なんというか、オタク界隈の人たちがよく使っているイメージがある。
好きな声優について語ったり、好きなアニメについて熱く語ったり、どこかのコスプレイヤーの素行が悪いと愚痴ったり、立場の違う他のオタクの悪口を書いたり……そんな感じだ。
以上を踏まえて、あえてステレオタイプな分類をするなら――
中高年はFace○book。
流行に敏感な若者はインスタグ○ム。
外国人はTwit○er。
そしてオタクはPlu○k。
……なんとなく、そんなイメージだ。
他にもDca○rdやThr○adsなんかがある。
ただ、この二つは比較的、主観的な内容や感情的な投稿が多い印象がある。
俺たちとしては、まず世間に「客観的で理性的な政治家」というイメージを持ってもらいたい。
だから、この二つには今のところ手を出さないことにする。
まあ、こんな感じだ。
全部のアカウントを作っておけば、SNSごとに違った層の人たちにアプローチできる。
できるだけ多くの人に玲の存在を知ってもらうという意味では、悪くない方法だろう。
「オッケー。じゃあ、部屋に戻って自撮りとか投稿内容とか考えてくるね」
そう言い残して、玲はさっさと自分の部屋へ引っ込んでいった。
「……お前、たまにはテーブルの片付けくらいしろよ」
俺は惨状と化した食卓を眺めながら、呆れて頭を掻く。
仕方なくピザの空き箱をゴミ箱へ放り込み、ついでに食器と箸も洗っておく。
まったく。議員になったからって、家事まで免除されるわけじゃないんだぞ。
……いや、こういう雑用は秘書にやらせるものなのか?……って、秘書って俺じゃないか。
はいはい。分かりましたよ。
初めて秘書らしい仕事をした気がする。家の中でだけど。




