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【毎日更新!】魔剣に選ばれた王女 〜亡国から始まる反逆の戦記〜  作者: 筑紫隼人
第四章「真実の欠片」

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第95話 合理的ではない怒り

北へ向かう道は、乾いていた。


 


土はひび割れ、草は色を失い、風だけが無意味に吹き抜けていく。


 


「……変ね」


 


先頭を歩くライラが呟いた。


 


「この辺り、もう少し人の気配があってもいいはずなんだけど」


 


「避難してるのかもしれないわね」


 


メイラが周囲を見渡しながら答える。


 


「帝国の“合理化”が進んでいるなら、非効率な村は切り捨てられる」


 


その言葉に、ガイウスは何も返さなかった。


 


ただ、歩く速度がわずかに上がる。


 


セリスは、その背中を見つめていた。


 


(もう、止まらない)


 


そう感じていた。


 


やがて、一行は小さな村の入口に辿り着く。


 


「……ここが、エルム村」


 


だが――


 


そこに“生活”はなかった。


 


家々の扉は開き、荷物は散乱し、火の気はない。


 


人だけが、いない。


 


「……遅かったか」


 


ガイウスの声が低く落ちる。


 


その時だった。


 


「いいえ。ちょうど良い頃合いですよ」


 


背後から、声。


 


全員が一斉に振り返る。


 


村の中央通り。


 


そこに、一人の男が立っていた。


 


整えられた軍服。


 


無駄のない立ち姿。


 


そして――感情のない目。


 


「クラッセン……!」


 


ガイウスの声に、明確な殺意が混じる。


 


男――クラッセンは、わずかに首を傾げた。


 


「おや。これはこれは」


 


「生きていましたか、“失敗作”」


 


空気が、凍る。


 


次の瞬間。


 


ガイウスが地を蹴った。


 


「貴様ぁッ!!」


 


一直線の突撃。


 


剣が、唸る。


 


だが――


 


キィン、と乾いた音。


 


クラッセンは、わずかに体をずらすだけでそれを受け流した。


 


「単調ですね」


 


冷淡な声。


 


「感情に任せた動きは、最も非効率だ」


 


蹴りがガイウスの腹に叩き込まれる。


 


「ぐっ……!」


 


吹き飛ばされ、地面を転がる。


 


「ガイウス!」


 


セリスが叫ぶ。


 


だが、ガイウスはすぐに立ち上がった。


 


口元から血を拭う。


 


その目は、燃えていた。


 


「……非効率で結構だ」


 


低く、吐き捨てる。


 


「俺は、お前を殺すために来た」


 


クラッセンはため息をついた。


 


「理解できませんね」


 


「過去の命令に、いつまで拘るのです?」


 


「不要な感情は切り捨てるべきだ」


 


「それが“最適化”だ」


 


その言葉に――


 


セリスの中で、何かが引っかかった。


 


(この感じ……)


 


どこか、似ている。


 


“無駄を削ぎ落とす思考”。


 


“最適な選択”。


 


それは――


 


(ノイエ……)


 


自分の中にあるものと、同じ方向を向いている。


 


「セリス!」


 


ライラの声で、意識を引き戻す。


 


「今はあいつに集中しなさい!」


 


「……うん!」


 


セリスは地を蹴った。


 


同時に、メイラが詠唱を開始する。


 


「拘束陣、展開!」


 


地面に魔法陣が走り、クラッセンの足元を縛る。


 


その隙に、ライラが横から斬り込む。


 


「はぁっ!」


 


鋭い一閃。


 


だが――


 


クラッセンは、ほんの僅かに動いただけでそれを回避した。


 


「連携は評価します」


 


「しかし、最適ではない」


 


拘束を、力任せに引きちぎる。


 


「なっ……!」


 


メイラが息を呑む。


 


その瞬間、クラッセンの視線がセリスに向く。


 


「あなた」


 


静かな声。


 


「先日の報告にあった“例外個体”ですね」


 


心臓が、跳ねる。


 


「興味深い」


 


「あなたは“効率を超える力”を持っている」


 


「であれば――」


 


一歩、踏み出す。


 


「私の管理下に置くべきだ」


 


その言葉に、セリスの中で何かが弾けた。


 


「……断る」


 


低く、言い返す。


 


「私は、誰の“部品”にもならない」


 


「非合理ですね」


 


クラッセンは淡々と答える。


 


「ですが――」


 


その瞬間。


 


ガイウスが、再び踏み込んだ。


 


「黙れッ!!」


 


今度は、真正面からではない。


 


フェイント。


 


足運びが変わる。


 


重い一撃ではなく、連撃。


 


「……ほう」


 


クラッセンの目が、わずかに細まる。


 


「学習しましたか」


 


だが――


 


その程度では届かない。


 


受け流される。


 


崩される。


 


それでも――


 


ガイウスは止まらない。


 


「合理だと……?」


 


斬る。


 


「効率だと……?」


 


踏み込む。


 


「ふざけるなよ……!」


 


剣が、弾かれる。


 


それでも前へ出る。


 


拳で殴る。


 


血が飛ぶ。


 


「俺が見たものは――」


 


声が、震える。


 


怒りで。


 


「数字じゃない!!」


 


「人だ!!」


 


一瞬。


 


ほんの一瞬だけ。


 


クラッセンの動きが止まる。


 


その隙を――


 


セリスは、見逃さなかった。


 


(今……!)


 


右手に、力を込める。


 


“あの力”が、応答する。


 


空間が、軋む。


 


だが――


 


(違う)


 


今回は、飲まれない。


 


自分で制御する。


 


一点に、絞る。


 


「――そこだッ!!」


 


セリスの一撃が、クラッセンの防御を“歪めた”。


 


完全な破壊ではない。


 


だが――十分。


 


次の瞬間。


 


ガイウスの剣が、振り下ろされる。


 


鈍い音。


 


クラッセンの体が、大きく後退した。


 


初めて――


 


明確な“ダメージ”。


 


静寂。


 


クラッセンは、自らの肩口を見下ろした。


 


血が、滲んでいる。


 


「……なるほど」


 


小さく、呟く。


 


「非合理の連携」


 


「だが、無視はできない」


 


顔を上げる。


 


その目に、わずかな変化。


 


「評価を修正します」


 


「あなた方は、“排除対象”だ」


 


空気が、張り詰める。


 


次の瞬間――


 


戦いは、次の段階へと移行する。


 


 


(――来る)


 


セリスは、右手を握りしめた。


 


理屈では測れない戦い。


 


合理では届かない領域。


 


その中で――


 


自分は、何を選ぶのか。


 


 


答えは、まだ出ていない。


 


だが――


 


それでも、前に出る。


 


 


この戦いで、それを掴むために。


 


 


――戦闘、継続。

いつも応援ありがとうございます。

セリスの選ぶ「非合理な正しさ」と、それによって少しずつ変わり始める魔剣の関係性。書いていて私自身も、意志の力が世界にどう抗えるのかを考えさせられます。

実は、この『魔剣』とは正反対の「超合理的・現実的」な視点で歴史を再構築する物語も並行して執筆しています。


『室町ホールディングス再興録 〜過労死コンサル、足利義昭に転生す〜』

https://ncode.syosetu.com/n6067lz/


こちらは『魔剣』とは打って変わって、現代のビジネス知識で戦国の世を「ホワイト化」しようと奮闘するコメディ寄りの戦記です。

「意志」で戦うセリスと、「知略とシステム」で戦う義昭。

アプローチは真逆ですが、「理不尽な運命をどう塗り替えるか」という根底のテーマは共通しています。

もしよろしければ、息抜きがてら覗いていただけると嬉しいです。あちらの信長も、なかなかに「非合理」な男ですよ。

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【開始12時間で100PV突破の注目の新作!】意志を持つ禁忌の魔剣は、彼女を守る剣か、それとも彼女を喰らう器か? 復讐に燃える王女が世界の真実を斬り拓く、本格ダーク戦記。
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