五話 変転の時~セーフフィールド独立騎士団前にて~
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ケアフィールド王国の王都中心部。
王都で一番大きい表通りは、多くの人々が行き交い賑わっていた。
フィリアの身なりは、弟のリアムから借りた茶色のシャツとズボンで、その上からフードがついた乳白色の外套を被っている。
「うわぁ……思っていたよりずっと広いですね。ライザ」
愛馬であるライザに話しかけながら馬上から降りて、フィリアは手綱を手に父のアダムから聞いた、セーフフィールド独立騎士団本部へと歩いて行く。
三方が山に囲まれて、残りの一方は海であるケアフィールド王国だが、国土はそこそこ広い。
よって王都も広いし、表通りもかなりの幅があった。
大型の馬車が擦れ違うことも余裕だ。
「あらまあ。凄いですね、ライザ。人の数も多いのですね……」
感嘆しながら、フィリアはきょろきょろとあちらこちらを見ながら歩く。
左右に連なる店は様々だった。
雑貨屋もあれば、果物や野菜を専門に扱っている店。魚や海産物を専門に扱っている店。お菓子やケーキを扱っている店。
宿屋もあれば酒場もあり、建物の殆どは茶色いレンガ造りだ。
屋根には王国旗がかかげられていたりもする。
「ああ、美味しそうな匂いがします……」
視線を向けた先には食堂があった。
あまりの良い匂いに、フィリアは食欲をそそられてしまう。
が、まずは独立騎士団本部へ向うのが先決だ。
なので、後ろ髪を引かれる思いで、食堂から目を背け歩き出す。
王城は表通りを東に真っ直ぐ進んで行くと、その姿を現した。
が、まだまだ遠くにあるので、フィリアからは、石造りの立派な城で屋根は濃い茶色なのでレンガだろう。と言うことしか分からない。
「大きなお城なのですねぇ」
ある意味、『田舎育ち』と言っても、過言ではないフィリアは圧倒されてしまいそうになる。
「で、でも! 圧倒されてはいけないのです!」
小声で自分を奮い立たせながら、フィリアは歩く。
父から教えられた独立騎士団本部は、もうすぐだ。
「あった……」
ともすれば、見逃してしまいそうになるが、そこは独立騎士団の本部。
鈍色……濃いネズミ色の甲冑を身につけた騎士が二人、一見普通の民家に見える二階建ての家の扉前に、二メートルほどの槍を持って立っていた。
「あ、あ、あの! ここはセーフフィールド独立騎士団の本部で間違いないでしょうか?」
愛馬と共に立ち止まり、玄関前に立っている二人の騎士に、上擦りそうな声で問いかける。
「――ん? 間違いはないよ。坊主……じゃなくて、お嬢ちゃんかな? ここにどんな用があるのかな?」
答えてくれたのは、扉の前に立っている、向かって右側の騎士だった。
兜を取って、フィリアと視線を合わせながら話しかけてくれた。
薄い金の髪に、緑の瞳で柔和な顔立ちをしている青年だ。
フィリアは少し安心しながら外套の懐に入れてあった封書を差し出しながら言った。
「父のアダム・I・マースティンから命じられて参りました」
フィリアが父の名前を出したとたん、騎士は緊張した表情になる。
「あ、アダム・I・マースティン? 王立騎士団長がお父上……ってこと、は……?」
震える声で騎士は言った。
「はい。わたしはアダムの娘。フィリア・R・マースティンと申します」
フィリアが名乗ると、もう一人の騎士からも更に緊張した雰囲気が伝わって来た。
「あ、えぇっ!? つ、つまり男爵家の? 『あの』剣聖イアン様のお孫様!?」
騎士は信じられないものを見る目でフィリアを見つめる。
「あ、あの。どうか、団長であるアーサー・ヒューイ様にお取り次ぎをお願い致します」
二人の騎士の表情も動きも、一瞬、止まった。
「あ、ああ……だ、団長に取り次げば良いのですね。し、少々お待ち下さい」
フィリアと視線を合わせ、話していた柔和な顔立ちの青年騎士は、受け取った封書をもう一人の騎士に渡しながら、震える声のままで言う。
封書を受け取った騎士は、無言で頷くと、扉の中に入って行った。
「え、ええと、フィリアお嬢様お一人でこちらへ?」
緊張感を保ちつつ、フィリアの目の前の青年騎士は問うて来る。
「はい。……あの、騎士様のお名前を教えて頂けませんか? それと、お嬢様と呼ばずフィリアと呼んで下さい」
青年騎士は面食らったように唇を引き結んだ。
「え、あ、いや、ええと。わ、私は、カーシー・アトウッドと申します。フィリア様。で宜しいですか?」
が、明らかに面食らいながらも、騎士は名前を教えてくれた。
「アトウッド様ですね。どうか、フィリアと呼び捨てにして下さい」
フィリアは努めて笑顔で言ったが。
「……ぅえええっ!?」
アトウッドは驚愕の叫び声を上げて固まってしまった。
「き、騎士様! 騎士様! アトウッド様!!」
フィリアはアトウッドの鎧に包まれた体を両手で揺さぶったが、びくともせず、フィリアが何度声をかけても、アウトウッドの硬直は解けないままだ。
(ど、どうしましょう)
焦りまくっていると、ふいに独立騎士団本部の扉が開く。
扉から出てきたのは、フィリアの父とあまり変わらぬ年齢で、黒髪黒目の精悍な顔立ちの男性だった。
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