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四十四話 正騎士の時~謁見の間にて(三)~

全四十六話なので、今回入れてあと三話で終わります。

最終話まで宜しくお願いいたしますm(__)m

「――さて、フィリア・R・マースティンよ。そなたを王立騎士団に入団させたのち、正騎士へと昇格させ、我が娘グレースの専属騎士とする。異論はないな?」


 王座に座った国王陛下は慇懃いんぎんに言い放つ。


「いいえ。異論はあります」


 そんな国王陛下に対して、フィリアは真っ向から異論があることを告げた。


「何!? 異論があるのか!?」


 まさか、異論がある。などと言われると思いもよらなかった国王陛下は驚き、わずかに王座から腰を浮かせた。


「フィリア・R・マースティン! 国王陛下の決定になんの異論があると言うのだ!? 不敬だとは思わんのか――」


 と、いかり気味に言ったのは、王立騎士団長であるフィリアの父、アダム・I・マースティンであるが――


「――うっ!!」


 アダムの父親であり、フィリアの祖父でもある『剣聖』イアン・マースティンに殺気交じりの視線を向けられ、それ以上の言葉は紡げなかった。     

 

 イアンの隣でひざまずいているフィリアもその殺気を感じて、ゾッとする。


「フィリア。続けなさい」


 イアンはフィリアに穏やかな声音で告げた。


「は、はい。お祖父様。――国王陛下。おそれながら、無礼は承知で申し上げます。わたしはグレース王女殿下のお気持ちを直接お聞きたいのです」


 イアンに促され、フィリアは自分の考えを述べる。


「待て、フィリアよ。もしやそなた、我が娘を品定めするつもりか? 自身が仕えるに相応しい相手かどうかを」


 国王陛下が不機嫌な表情になる。


「いいえ。逆でございます」


 フィリアはそんな国王陛下の顔をおくせずしっかり見つめながら言う。


「グレース王女殿下が、わたしを品定めするのです」 


 すると国王陛下は表情を変えて、


「……我が娘に選ばせると言うのか?」


 意外そうな表情になった。


「はい。国王陛下がわたしを買って下さるのは、望外ぼうがいの喜びでございます。しかし、グレース王女殿下のお心は違うのかも知れません」


 フィリアは国王陛下から目を放さずに続ける。


「わたしが専属騎士になる為には、女性でありながら初の王位継承権を得られる、グレース王女殿下自身にも認められなくてはならない。と思うのです」


 フィリアは内心の緊張を圧し殺して自分の考えを言い切った。


「ふむ……確かにそうだな。我の意見を押しつけるだけではこれまでと何も変わらぬな……」

 

 幸いなことに、国王陛下はフィリアの言葉に納得してくれたようだ。


「……ならば、シャロン。フィリアをグレースのところまで連れて行ってやれ」


 国王陛下はシャロンに命じる。 


「我はグレースを今までこのような場に出したことがないゆえな。それに、グレースに選ばせるならば、フィリアのほうから出向くのが筋と言うもの」

 

 それは確かにそうなのかも知れない。とフィリアは思った。


「心得ましてございます。国王陛下」


 どうやらシャロンも同意見らしく、うやうやしくこうべを垂れてから、フィリアの手を取り歩き出す。


 フィリアはシャロンに引っ張られながらも国王陛下に一例して、歩き出した。


 謁見の間から控えの間へ、控えの間から廊下へ、廊下から階段へと、シャロンは迷いなく歩いて行く。


「あ、あの……シャロンは王城の内部に詳しいのですか?」


 迷わず歩いて行くシャロンにフィリアは問う。


「ええ。わたしは国王陛下が王子殿下であらせられた頃の話し相手兼遊び相手だったのよ」


 予想だにしなかった言葉にフィリアは思わず立ち止まった。


「シャロンが。国王陛下の話し相手兼遊び相手? それは――シャロンのお師匠様が先代の国王陛下から信頼されていたから……ですか?」


 階段を登っていたシャロンが、立ち止まって振り返る。


「そうよ。けど何故、フィリアちゃんが、お師匠様のことを知って――ああ、さっきイアン様が控えの間でお師匠様のことを話してたみいだけど、そのときに聞いたのね?」


 シャロンは、くすりと笑いながら言った。


「そう、です。でもシャロンが国王様の話し相手だったのは、今初めて知りました。……――あ! もしや、シャロンが国王陛下へ強気な態度に出ていたのは――」


 東の山での国王陛下への口の聞き方は単なる臣下のそれではなく、『ケアフィールドの盾』と言う二つ名を持っていても、疑問が残るような口の聞き方をしていた。


「そう。わたしは国王陛下を弟みたいに思ってるの。もちろん不敬なのは理解してるわ」


 と語りながら、シャロンは階段を登り出す。

 フィリアもシャロンのあとを負う。


「わたしはね。国王陛下と王女殿下と王妃陛下。お三方をあらゆる災いから護りの魔術でお護りしているの。西の山から時々ここへ来るのも、お三方に異変がないか確かめる為なのよ」   


 シャロンは三階の廊下を歩きだした。


 グレース王女殿下は三階いらっしゃるのだろうか? 


「まあ、王城へ入ればお三方の様子は手に取るように分かるのだけれど」


 シャロンは三階の、一番奥にある部屋の前でとまった。


「でも、だからと言って心が読めたりするわけじゃないから、聞きたいことがあれば、こうやって直接聞きに行かなきゃならないのよね」


 コンコン、とシャロンはドアを二回ノックする。


「誰ですか?」


 ドアの内側から落ちついた声が聞こえた。

 

「国家魔術師シャロン・L・ドーンです。ご無沙汰しております。グレース王女殿下。殿下もご存じだと思いますが……今日は、わたしが殿下の専属騎士候補を連れて参りました」 


 すると、パタパタパタと軽い足音が聞こえて、ゆっくりとドアが開かれた。


「……本当なのですね」


 ドアから少しだけ顔を出したのは、二十歳くらいの美女だ。


 腰の長さまである真っ直ぐな髪はオレンジがかった金色で。紺碧の瞳は、じぃっとフィリアを見つめている。 


「ハリソンが言っていた通りですね。『妹のがフィリア訪ねてくるでしょう』と……」


 薄紫色のワンピースを着て体の半分をドアに隠れながら、その美女――グレース王女殿下はフィリアから目を離さずに、思いもかけない人物の名前を口にした。

 お読み頂きありがとうございますm(_ _)m

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