四十三話 正騎士の時~謁見の間にて(二)~
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国王陛下は謁見の間にいる全ての者達に、娘であるグレース王女殿下へ暫定的に王位継承権を与えることを宣言した。
当然の如く、謁見の間がざわつき始める。
「王女殿下に暫定的に王位継承権だと?」
「国王陛下は何を――」
「いや、状況が状況だからな」
が、それらの声が聞こえたのはほんの数秒間だけだ。
既にそれは決定事項であり、しかも宰相からも他の側近達からも反対の声は出ていないのだから。
謁見の間が、シン、と静まり返る。
「異例のことゆえ皆が戸惑う気持ちは分かるが、この国も変化して行かねばならぬときが来たのだ」
国王陛下の声だけが、謁見の間に朗々と響く。
ここにいる女性はフィリアとシャロンだけだ。
フィリアもシャロンも国王陛下の決定を喜ばしいものだと思っているが、フィリアの父を含めた貴族の男性は、この決定に反対だと思う者も多いだろう。
その証拠が先ほどのざわめきだ。
ハンサウスを退けたばかりと言う状況もあるからか大っぴらに反対する者はいない。
この謁見の間で、暫定的にでもグレース王女殿下に王位継承権を与えることを、どれだけの者が許容しているのだろう。とフィリアは考える。
「異論はあると思うが、我らも少しずつ思考を変化させて行かねば、ハンサウスだけでなく、西の隣国に敵国認定されてしまう可能性とてあるのだ」
シャロンが守っている西の山の向こうには、ケアフィールドとは正反対の代々女性の王が治めている国があり、国そのものの考え方は男女平等だ。
だから西の国とは敵対している訳ではないが、友好を結んでいる訳でもない。
フィリアだけでなく、王家を含めたケアフィールドの者は「西の国はケアフィールドをあまり良くは思っていないだろうな」と、考えていた。
東だけでなく西までケアフィールドを敵と見なしてくるならば、ケアフィールドはリングノーズとしか国交を結べなくなる。
今は西の国とも、一応は船を使って物や人の行き来はあるのだが、それほど交流が盛んな訳ではない。
ケアフィールドを囲む三方の山は他国からの侵略を阻んでいるとは言え、それも万全でないことは既に証明されている。
しかも三十年前から東の敵国ハンサウスは、ずっとケアフィールドを狙い続けているのだ。
今回は退けられたとは言え、次はどうなるか分からない。
「我は今回の出来事で、北のリングノースだけではなく西の隣国とも同盟を結びたい。そう考えるようになった」
国王陛下はそこで一度、深く息を吸い込み。
「――その為には我が国が変わらねばならぬ!!」
力強く言い切った。
「西と同盟?」
「いや、しかし戦略としては間違っていないぞ」
「しかし、この国の考え方と合わないだろう」
貴族の男達がざわめくが、ざわめきの中から、「この国の考え方とは合わないだろう」の言葉が聞こえたとたん――
「この大陸では、我が国の考え方だけが時代錯誤になっていることを自覚せよ!」
国王陛下の一喝に貴族達は瞬時に口をつぐんだ。
それはケアフィールドの者達が目を背けてきた事実。
今回、ハンサウスからの侵略がなければ、まだ目を背け続けてきただろう事実だ。
国王陛下がこの事実に正面から向き合ったとなると、もはや誰も事実から目を背けることが許されなくなった。
「そしてもう一つ! セーフフィールド独立騎士団から、フィリア・R・マースティンを我が娘グレースの専属騎士として王立騎士団へ迎え入れたい」
――どよどよっ、と謁見の間にいる貴族達がどよめいた。
「フィリア・R・マースティン!?」
「王立騎士団長の娘!?」
「あの革鎧姿の娘がそうなのか!」
「しかし、女騎士など我が国では――」
今度は貴族達の口が止まらない。
フィリアはどうにも居たたまれないような気持ちになった。
が――
「静まらんか!」
国王陛下の怒声が響く。
「この中にハンサウスの『ヤシン・ブリアン』の名を知っている者も多いであろう? 先日東の山での戦闘で『ヤシン・ブリアン』にとどめを刺し倒したのは、フィリア・R・マースティンだ」
国王陛下の言葉に、再び貴族達がどよめいた。
「ヤシン・ブリアンを倒したのがあの娘!?」
「あれは王立騎士団の精鋭が倒したのでは!?」
「わたしは王立騎士団の精鋭と国家魔術師が力を合わせたからだと聞いているぞ!?」
まあ、本来ならば自分は北の山にいるはずだったのだから、これらの疑問はしょうがない。とフィリアは思う。
「――いいえ。フィリア・R・マースティンは間違いなく東の山で『ヤシン・ブリアン』との戦いに加わり、とどめを刺したのです」
と跪いたまま、声を大きくして言ったのはシャロンだ。
「わたしもその場におりましたから断言できます。国王陛下のおっしゃっていることに間違いはありませんよ。貴族の皆様方」
背を向けたまま語っているが、貴族達はそれが誰なのか、すぐに気づいた。
「シャロン・L・ドーン……『ケアフィールドの盾』がそう言うのならば……事実か」
ぼつり、と貴族の一人が呟くようにいった。
「そうだな……王立騎士団長の娘ならば、そこにいる『剣聖』イアンの孫娘でもあるのだしな……」
それはまるで、抵抗をやめたかのような言い方だ。
認めたくないけれど認めざるを得ない。
そう思っているのがありありと分かる言い方だな、とフィリアは貴族達の言葉を聞きながら思った。
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