三十七話 決戦の時~最終決戦(三)~
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フィリアは一瞬迷ったが、敵がヤシン・ブリアンとジンザだけなら、まずはジンザを集中的に狙おうと決める。
それにしても、ヤシン・ブリアンは強い。
王立騎士団の、正騎士五人に攻撃されながらも、その殆どを軽々といなしている。
(わたしと同じく、一対複数の戦闘も得意なタイプなのでしょうか? でも時々、しっかり攻撃を食らっているようにも見えますが……?)
そんなことを思いながら、フィリアは半壊した山小屋の横へ移動している国家魔術師二人の元へ走った。
「フィリア嬢。どうしたんですか?」
藍色のローブを着た国家魔術師の男性がフィリアに気づいた。
ローブについてるフードを目深に被っているので、顔の上半分は見えないが、やはり声が若い。おそらく二十代前半くらいで間違いないのだろう。
「ジンザが空中へ逃げてしまいましたので、わたしをジンザのところまで連れて行って下さいませんか?」
フィリアの言葉に国家魔術師二人が思わず空を見上げると、視線の先には灰色のローブを着たジンザの姿があった。
「ジンザを倒せば、ヤシン・ブリアンにかけられている防御の術が解けるのではないかと思うのです」
深緑色のローブを着た、三十歳前後の国家魔術師が暫し考える。
「……それは――いや、そうかも知れないな……」
どうやら彼はフィリアと同じ考えに至ったようだ。
「ジンザはケアフィールドの国家魔術師にも引けを取らない実力の持ち主です。無詠唱で防御の術を、自らとヤシン・ブリアンに重ねてかけているのではないかと」
フィリアの言葉に、深緑色のローブを着た国家魔術師は頷いた。
「そうだな――防御の術の効力が切れそうになっても、立て続けてかけているのならば、ヤシン・ブリアンの打たれ強さも腑に落ちる」
深緑色ローブを着た国家魔術師は、藍色ローブを着た国家魔術師のほうを見る。
「お前、空中飛行の術は得意だったな。フィリア嬢をジンザのところへ連れて行ってやれ」
と上から目線で命じた。
「えっ!? じゃあ先輩はここに一人でいるんですか?」
藍色ローブの魔術師は、深緑色ローブの魔術師の後輩なのだろうか。
「こっちのことは気にしなくて良いから、早くフィリア嬢を連れてジンザのところへ行くんだ」
そう言われても――と、藍色ローブの魔術師は少しの間心配そうな表情をしていたが――
「……ええい! 分かりました! フィリア嬢! 行きますよ!」
考えていても埒があかないと思ったらしく、呪文の詠唱を始めた。
「『――風よ。我らの身を運びたまえ』」
ふわり、と藍色ローブの魔術師と共に、フィリアの体が浮き上がる。
「わ、わわ……」
体が浮き上がり、空へと上昇して行く感覚が怖くて、藍色ローブの魔術師の腕にしがみつく。
「慣れないでしょうから、そのまましがみついていて下さい。ああ、少し速度を上げますね」
――速度を上げられるのですか?
と聞き返したかったフィリアだが、ひゅおっ、と風を切る音と同時に、自身の体が上空にいるジンザへ向かって飛んで行く感覚に、怯えて声が出せなかった――
「――じ、ジンザ! 空中へ逃げても無駄ですよ!」
少々怯えながらも、フィリアは両刃で幅広の剣を構え、ジンザへと斬りかかる。
が、慣れない空中なので、ジンザにあっさりと避けられてしまった。
「空中まで追いかけて来るとはなぁ……しかも微妙に怯えてるじゃないか……くくっ」
ジンザに呆れられ、笑われても、フィリアは引くつもりなどない。
「そんなことを言ってられるのも今のうちだけです! 両刃で幅広の剣は使う者の力量によって強くも弱くもなると言ったのは、あなたでしょう!!」
今度は空中でも臆せず、フィリアはジンザに飛びかかる。
「おっかない小娘だな……」
そう言ってジンザは、すーっ、と地上に下りて行った。
「――くっ! お願いします! 今度はわたしを地上へ下ろし――」
藍色ローブの魔術師にフィリアが頼み込むより早く。
「面倒くさい相手ですね――フィリア嬢、全面的に協力しますから、あの魔術師を叩きのめして下さい。あいつは僕と同じで殆ど攻撃魔法を使えないタイプですよ」
――えっ!?
と、思いもかけないことを聞いたフィリアは、声に出して驚きそうになったが、今度は自身が急降下して行く感覚に怯えて、藍色ローブの魔術師の腕にしがみつく。
「――ひ、えぇぇっ!?」
と、驚きではなく急降下の感覚に悲鳴を上げる。
上昇する感覚より、降下する感覚のほうが何倍も怖かった。
しかし、怖がっている暇などない。
地上へ下り立ったフィリアは脇目も振らず、ジンザへと飛びかかるように両刃で幅広の剣を打ち込んで行く。
「――し、しつこい小娘だな!」
だが、ジンザは魔術師とは思えないほど素早い動きで、両刃で幅広の剣を紙一重で避けて行く。
が、そこへ――
「『――我が敵に絡みつけ鈍重の鎖』」
藍色ローブの魔術師が、ジンザへ妨害の術をかけたようだ。
「――んなっ!?」
ジンザの動きが目に見えて鈍くなる。
「もう、逃がしません!」
動きが鈍った相手ならば、ものの数ではない。
「――倒れろぉぉっ!!」
フィリアは叫びと共に、ジンザに両刃で幅広の剣を叩きつけるように振り下ろす。
――ザグッ、とジンザは肩から体にかけて、斜めに斬り裂かれた。
「――く、小娘、が……」
ジンザは一瞬だけフィリアを強く見つめ、どさり、と地面に倒れ臥した。
フィリアはそのまま踵を返し、真っ直ぐヤシン・ブリアンへと向かって走り出そうとするが――
――ヒュボッ、とフィリアの横を何かが高速で飛び去り――
「――ぐっ!!」
王立騎士五人を相手取っていたヤシン・ブリアンの背中に、突き刺さった。
それは追尾の魔術が付与されている弓から放たれた矢だったようだ。
何故なら矢が飛んで来た方向には、円陣から空間移動の術で移動していたシャロンと、弓を持った国王の姿があった。
本来の持ち主――射手でもある王立騎士から渡されたのだろう。彼は剣も扱えるのだから。
それでもフィリアは気を抜かず、ヤシン・ブリアンの元へと走り出す。
ヤシン・ブリアンは背中に矢を穿たれたままでも倒れていないのだ。
(国王様が放った矢が効いている今なら――)
「これで終わりです!!」
フィリアが全身全霊を込めて両刃で幅広の剣を真っ直ぐ前につき出す。
「行けぇぇっ!! 両刃で幅広の剣っ!!」
――ザグッ、と風の刃がヤシン・ブリアンの右胸を貫く。
今度こそ声も上げられずに、ヤシン・ブリアンは地面へと崩れ落ちるように、倒れて動かなくなった。
「終わった……のですね」
我知らず、息の上がっていフィリアは無意識に呟くと、ずっと張り詰めていた緊張が解けて、かくん、と両ひざを地面へとつく。
「――あ……」
そのまま意識が遠退く。
「フィリア!?」
兄のハリソンがフィリアの名を呼び、走って来る音が聞こえる。
「――フィリアちゃん!?」
シャロンの心配そうな声も聞こえたが、フィリアはそこで意識を手放した。
五章終わり~終章 正騎士の時へ続く~
――お気に召して下さったらブクマ、星などの応援宜しくお願い致しますm(__)m




