三十六話 決戦の時~最終決戦(二)~
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ヤシン・ブリアンは右手で腰から片刃の剣を抜き、フィリアに打ちかかって来た。
――ガギッ、と両刃で幅広の剣とヤシン・ブリアンの剣が打ち合った。
「――く……っ!!」
負けるつもりはないフィリアだが、男相手に真正面から打ち合うとなると、身体強化の術がかけられていても、打ち負けそうになってしまう。
しかも相手は『将軍』の位まで与えられている歴戦の猛者だ。
いなす為にも、一度、後ろへ下がりたいが円陣を崩してはならない。
そこに、「『――我が味方達を護りたまえ』」と藍色ローブの国家魔術師の声が聞こえた。
おそらくだがフィリア達に防御の術をかけてくれたのだろう。
フィリアは藍色ローブの魔術師に感謝しつつも集中は切らさず、ヤシン・ブリアンに打ち負けまいと力を込める。
ふと、周囲で聞こえている刃が打ち合う音が少なくなって来たことに気づく。
「――フィリア嬢! 背後は気にしなくて良い! 国王様はシャロン殿が空間移動の術で、離れた場所に運ばれたぞ!」
後から、射手でもある王立騎士がフィリアに声をかけた。
フィリアはかけられた言葉の意味を理解するが早いか、体当たりするようにヤシン・ブリアンに向かって両刃で幅広の剣ごと全体重をかけ、その反動で跳ぶように後退する。
後退しながら、両刃で幅広の剣を斜めに斬り上げた。
そのまま風の刃で斬るつもりだったが、ヤシン・ブリアンの体に当たる前に、風の刃が消滅する。
「――なっ!」
戸惑いながらも、フィリアは正面から打ち合わないように、横や斜めからヤシン・ブリアンに向かって両刃で幅広の剣を降るって行く。
打っては引き、打っては引きを何度も繰り返すが、全て片刃の剣で弾かれてしまう。
風の刃は通じない。発生してもヤシン・ブリアン相手には無効になるようだ。
どうやら敵の魔術師ジンザがかけた防御の術は相当に固いらしい。
どうしたものかと考えながらも攻撃の手はゆるめない。
フィリアが何度目になるか分からない攻撃を繰り出そうとすると――ガギッ、とフィリア以外の誰か――兄のハリソンがヤシン・ブリアンに斬りかかった。
一瞬だけ、回りを見れば敵のハンサウス兵の数はジンザとヤシン・ブリアンを含めて五人にまで減っている。
円陣も崩れて混戦が始まりつつあった。
フィリアはヤシン・ブリアンから少し離れて、味方と敵の様子を伺う。
国王とシャロンは見当たらない。
混戦になっている場所から少し離れたこところに移動した国家魔術師二人は、それぞれ術の詠唱に入っている。
「『――我らが味方達を癒したまえ』」
藍色ローブの国家魔術師が回復の術を使ったらしく、フィリアの疲労が消えて行く。
「『――風よ、我の敵を切り刻め!』」
深緑色のローブを着た国家魔術師が、もう一人の魔術師の隣で攻撃魔術を唱えると――
「――ぎゃぁぁ!!」
ハンサウス兵の一人が見えない刃で全身をズタズタに切り刻まれ地面に崩れ落ち、地に伏した。
これで敵は残り四人だ。
フィリアは再びヤシン・ブリアンに打ち込んで行く。
ハリソンは怪我こそしていないものの、フィリアと同じく攻撃を全て防がれたらしい。
僅かに悔しそうな表情になっている。
フィリアはハリソンとは別方向から攻撃を仕かけるが、ヤシン・ブリアンの手甲を含む小手――手や腕の部分を覆う鎧のような防御の装備――で防がれ、弾かれてしまう。
ジンザの言葉通りなら、『両刃で幅広の剣は使う者の力量によって強くも弱くもなる』はずなのだ。
(それなのに――)
フィリアは自身の力が足りないことを心底恨むが……。
(――それでも! 諦める訳には行かないのです!!)
ここは戦場だ。逃げ出すことはできない。
女でも騎士になれるのだと、理解させ、納得させる為に、フィリアはたゆまぬ努力と意思でここまで来たのだ。
今までより強い敵だからなんだと言うのだ。
(負けるつもりはありません! 今回も勝ってみせるのです!!)
フィリアは今まで以上に気迫と気力を込めて 両刃で幅広の剣を振るった。
――ガキィン、とヤシン・ブリアンの手甲と小手目がけ、左の腕を斬り落とすつもりで振り下ろす。
パギッ、と小さな音がして、ヤシン・ブリアンの小手にヒビが入った。
「――ッ! 小娘!!」
怒りの籠った声がヤシン・ブリアンの口から漏れる。
(もう一度――いえ、何度でも!!)
フィリアは好機とばかりにヒビが入った場所へと両刃で幅広の剣を振り下ろす。
何度も何度も諦めずに打ち込み続ける。
――ガギッ、バリッ、と打ち込む度にヒビの大きさが広がって行く。
「――チッ!」
と舌打ち一つして、ヤシン・ブリアンは猫のように身軽く地を蹴り、後退する。
「このっ!」
打ち合いから逃げられたハリソンが、ヤシン・ブリアンを追って剣を振るう。
が、やはり片刃の剣で軽々と防がれてしまう。
それだけでなく、「――フッ!」と口の中から含み針を跳ばして来た。
ハリソンは咄嗟に剣の刃で防いだが、毒でも塗られていたらと思うと、ゾッとするフィリアである。
おまけにハリソンよりヤシン・ブリアンのほうがやや体格が大きいし、一見、筋肉量も上に見える。
しかし、筋肉量や筋力の強さは目で見ただけでは分からない。
ハリソンとヤシン・ブリアンの強さの差はやはり経験なのだろう。
ハリソンの攻撃をいなすのが上手い。
(いえ――そんなことより!)
まずは防御の術を消してしまえばもう少し攻撃が通るのではないか、と考えたフィリアは、攻撃対象を魔術師ジンザへと変えた。
一直線にジンザへ向かって走りながら、ヤシン・ブリアンも使った釘にも似た暗器を、履いているズボンのポケットから取り出し、勢いよく投げ打つ。
――ガカッ、と暗器が防御の術で阻まれるが、パリッ、と防御がヒビ割れる音も聞こえた。
フィリアはすかさず 両刃で幅広の剣を思い切り振るうが、無詠唱で防御の術が使えるジンザには風の刃は届かない。
ヤシン・ブリアンと同じく無効にされてしまうのだ。
「せいっ!」
今度は直接斬りかかろうとするが、ジンザは意外と素早く、簡単に避けられてしまった。
おまけにそのまま、ふわりと空中に浮き上がる。空に逃げられてしまうと、手も足も出せない。
「な――!」
風の刃も届かない。
届いたとしても、無効にされてしまうのだから。
苦々しく思いながらも、フィリアはどうすることもできず、ヤシン・ブリアンのほうへ走った。
気づけば敵は、魔術師ジンザとヤシン・ブリアンの二人だけになっていた。
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