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三十四話 決戦の時~決戦への道・遭遇~

 宜しくお願い致しますm(_ _)m

「止まれ」

 

 王の指示が飛び、山小屋から六メートルほど手前の位置でフィリア達は止まった。


「では、ここから先は作戦通りなのですね」


 フィリアは振り返ってシャロンに問う。


「ええ」


 シャロンは少し歩いてフィリアの隣に立ち、問いかけに答えると。


「では国家魔術師のお二人に頼むわね」


 後衛の二人に呼びかけた。


「了解しました」


 魔術師専用の藍色のローブを着て、ローブについているフードを目深まぶかに被った――おそらく二十代前半くらいの男性。


「了解した」


 深緑のフードつきの魔術師専用のローブを着た神経質そうな三十代前後の男性。


 二人の国家魔術師は、それぞれ呪文を唱え始める。


 まずは藍色のローブを着た国家魔術師が、全員に回復の術をかけた。

 

 フィリアは溜まっている疲労が軽くなったのを感じて少し嬉しくなる。


 続いて深緑色のローブを着た国家魔術師の呪文が完成し――


いかずちよ、我らが敵のに落ちよ!!」


 ――ドガァァン、と六メートルほど先にある山小屋に、天空から大きないかずちが落ちる。


 山小屋は焼け焦げ半壊したように見えるが――


(山小屋の中にいる者はひとたまりもないのでは……)


 フィリアは雷系の攻撃魔術の威力に驚きながら思った。


 だが、ハンサウス兵はおおよそ残り九人なのに、半壊した山小屋から出て来る者は一人たりともいない。


 一人くらいは出て来ても良さそうなものなのに――それとも先ほどの攻撃魔術で全員動けなくなっているのだろうか? などとフィリアは考える。


 今度は、藍色のローブを着た魔術師が別の呪文を唱え始める声が聞こえて来た。


「――ん? ちょっと待って」


 それをシャロンがさえぎると、藍色のローブを着た魔術師は呪文を唱えるのをやめる。


 フィリアは思わずシャロンのほうを見た。


「フィリアちゃん、辺りに人の気配は?」


 シャロンは山小屋を見つめながらフィリアに問いかける。


「山小屋のほうはよく分かりませんが……わたし達の周囲に人の気配はありません」


 常に周囲の気配を探っていたフィリアはよどみなく答えた。


「僕もそう思うよ。皆んなもだよね?」


 フィリアの兄であり王立騎士でもあるハリソンが同意して、他の者にも問いかける。


「ああ」


「人の気配はないな」


「フィリア嬢の言うように、山小屋のほうは分からんが」


 前衛三人の騎士が答えた。


「うん。気配はないね」


 後衛の、射手である騎士からも同じ答えが返って来た。

 

「誰も出て来ないなんて、おかしいわね。部下は分からないけど、ヤシン・ブリアンは攻撃魔術の対策をしてるはず――でも、これ以上は下手に近づけないし……」


 シャロンは暫し悩んでから後衛を振り返り、国王に問いかける。


「国王様、わたしが一人で様子を見て来ま――」


「それはならぬ!!」


 国王が強い声でシャロンを止めた。 


「そのような無茶をするなら我も無理矢理着いて行くぞ!」


 フィリアが国王を見ると、国王は半目でシャロンをにらむように見つめている。


「そ、それなら……そうね。少し待って下さい。あの山小屋を中心にわたしが結界を張ってみます」


 国王の気迫に少し押されたように言い、シャロンは長い呪文を唱え始めた。

 

 ――が、呪文の途中でシャロンは何かに気づいたように、正面を向いて山小屋を見る。


「――えっ!?」


 シャロンはそう言った切り黙って山小屋を見つめ続ける。


「……どうした? シャロン」 

 

 そんなシャロンに国王が問いかけた。


「……国王様。ヤシン・ブリアンの偵察部隊に魔術師がいるとの報告はありませんでしたか?」


 すると、シャロンは逆に国王へと問いかける。


「……魔術師? いや、報告はないが」


 国王の答えにシャロンはマスクに隠されてないほうの、左の眉をしかめた。


にせの情報をつかまされた可能性は?」


 シャロンは、王立騎士団の情報収集能力を疑う。


「シャロン殿、それは――いや、あり得るかも知れない……」


 シャロンの言葉に反論しようとしたのはハリソンだったが、何やら考え直したようだ。


「……王立騎士団は情報収集にけているとは言えないが――しかし、偵察が下手な訳でもないんだけれど――」


 が、それでもハリソンは悩んでいる。


「どっちにしろ、誤った情報を掴んだか、情報不足のどちらかだと思うわ」


 そんなハリソンの様子を見ながら、シャロンは総括そうかつするように言った。


「あの山小屋から何者かの魔力を感じるのよね……」


 とシャロンは、独り言のように言ってから、どこからともなく国家魔術師の杖を取り出した。


「う~ん……やっぱり魔力を感じるわねえ……なんの術を使っているかは、魔力の反応が小さくて分からないわね」

 

 シャロンは手に持った国家魔術師の杖で山小屋を指しつつ、何やら考え始めた。


「でも、魔術師がいるならどうして何も仕かけてこないのかしら? う~ん……?」


 どうやらシャロンは長考に入りそうだ。


「シャロン……先ほどまでと同じように、皆んなでゆっくり慎重に進んで行きませんか?」


 フィリアは長考に入りそうなシャロンに声をかける。


 このまま考えても意味がないように思えたからだ。


「……そうね。フィリアちゃんの言う通りかもね。それじゃあ、わたしが先ほどより、強固な防御の術を国王様にかけるわ」


 フィリアの言葉で考えるのをやめたシャロンは言った。


「ああ、それと国家魔術師のお二人は、それぞれ攻撃や回復や補助の術が使えるように、用意しておいてね。わたしはこのまま前衛で歩いて行くから」


 と、前衛に交ざることを決めたシャロンは呪文を唱え、国王にのみ強固な防御の術をかける。


 そうして一同は時間をかけて、山小屋の近くまで辿り着いたのだが――


「ここまで罠がなかったのは良いことだけど――……なるほどね。待ち伏せも罠も回避されたから、直接戦闘に持ち込むつもりなのね……」


 辿り着いたとたんに、半壊状態の山小屋から、ぞろぞろと敵が出てきたのだ。


 しかも、雷系の攻撃魔術を食らったにも関わらず、誰一人として怪我をしていない状態だった。


 その中にはシャロンが予想した通り、魔術師がいた。


 灰色の魔術師専用ローブを着た、長い金髪、金目、褐色の肌の三十代後半くらいの男である。


 その隣には――明らかに他のハンサウス兵とは違う雰囲気の中年男性兵士がいた。

 

 褐色の肌は間違いなくハンサウスの人間であることを示している。


 長い金色の髪を一つに纏め、深い夜空の青のような瞳でこちらを品定めするように見つめて来た。


 革の鎧を着ており、兵士と言うより傭兵か冒険者のように見える。


 フィリア達はすかさず円陣を組み、国王とシャロン、国家魔術師二人と射手しゃしゅでもある王立騎士を、円陣の中へと守るように囲む。


 射手でもある王立騎士は、剣を使って円陣の中の者を守れる上に、弓矢で中、長距離の攻撃もできるからだ。


「そう……あんたが防御の術でこちらの攻撃魔術を防いでたのね。かなり高位の魔術師と見たわ」


 円陣の内側から、シャロンが敵の魔術師に問いかける。


「ああ、高位かどうかは分からんが、攻撃魔術を防いだのは私だ……お前は、もしや『ケアフィールドの盾』か?」


 問いかけに答えた魔術師は、シャロンへと逆に問いかけた。


「よく知ってるじゃない。だから諦めなさい。わたしがいる限り、誰も傷つけさせやしないわ」


 シャロンは挑発的に答える。


「それでも、やってみないと分からないだろう?」


 シャロンの挑発にも一切乗って来ず、冷静な口調で魔術師は言い切った。


「ジンザ。しゃべるのはそこまでだ」


 ヤシン・ブリアンらしき男が魔術師の名を呼ぶ。


「ジンザ……聞いたことない名前ね。ところでヤシン・ブリアン。ジンザってのはあんたの部下なの?」


 唯一、ヤシン・ブリアンを直接見たことがあるシャロンが名を呼んだのだから、やはりあの男が『将軍』ヤシン・ブリアンで間違いないのだと、フィリアは思った。


「そやつが……」


 円陣の内側にいる国王が、小声で悔しそうに呟いた。


「ジンザが俺の部下に見えるか?」


 ヤシン・ブリアンがシャロンに聞き返す。


「分からないわ。部下と言うより相棒なのかしらね? ――それより、よくも面倒な罠を仕かけてくれたじゃないの!」


 シャロンが少しいかり気味にヤシン・ブリアンに返事をするとほぼ同時に、フィリアの前に一人のハンサウス兵が迫って来た。


 かなり強そうな相手だと感じたフィリアは、躊躇ちゅうちょなく両刃で幅広の剣(グラディウス・シルフ)さやから抜き放つ。


 ジンザとヤシン・ブリアン以外の敵と味方がやいばを交える音も、フィリアの耳に聞こえ始めていた

 お読み頂きありがとうございますm(_ _)m

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