三十ニ話 閑話・シャロン視点~シャロンと国王の会話~
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待ち伏せしていたハンサウス兵を返り討ちにし、使える装備は奪い、山小屋が見える場所まで辿り着く前に――
「シャロン! ここはベルモント精肉店の牧場ではないか!」
ヤシン・ブリアンが待ち構えているだろう山小屋が見える場所まで来たタイミングを狙い、シャロンは国王を連れベルモント精肉店の牧場に空間移動していた。
「シャロン! なんのつもりだ!」
当然、国王は怒る。だがシャロンは不機嫌な表情で国王を睨んだ。
「……そ、その目はなんだ? 我に意見する気か?」
するとシャロンは徐に口を開いた。
「……いい加減にして下さいよ。ジェームズ様」
ぴくり、と国王の片眉が僅かにつり上がる。
「た、立場をわきまえよ! 子供の頃から、我と妹の話し相手だったからと言って――」
「立場をわきまえるのはジェームズ様のほうですよ!」
国王の言葉へ被せるように、シャロンは言う。
「ジェームズ様は今、ケアフィールドの国王なんですよ」
続けて――叱るように、諭すように、それでいて呆れたような感情をも交じった声音で言った。
「しかも、正式な王位継承者のいない国王です。ジェームズ様がいなくなったら、この国は簡単に落とせると、ハンサウスに思われてるんですよ……」
シャロンは国王を睨むのをやめて、少しだけ悲しげ表情になる。
「イアン様とわたしが、王女様に『暫定的でも王位継承権を与えるほうが良い』と言っても、ジェームズ様は聞き入れませんでしたね……」
が、今度は睨むと言うより射貫くような視線になった。
「その結果がこれです! わたしもイアン様も言ったでしょう!? 覚えてないとは言わせませんよ!」
すると、国王は唇を引き結んで言葉を返す。
「伝統は変えられぬ!」
その言葉を聞いたシャロンは額に青筋を浮かべる。
「その伝統とやらは血筋のことですか!? それとも男しか王位を継いではならないと言う慣習ですか!?」
国王に向かって本音を言い放つシャロンは、この国も国王本人も王家をもが、心配でならないのだ。
シャロンの師匠はかつて王城を守る国家魔術師のトップであり、先代国王からの信頼も厚かった。
だからなのか、年齢が近いシャロンは、当時まだ王子殿下だったジェームズと、現在はリングノーズの王妃となっているアイリーン王女の話し相手兼遊び相手を任されていたのだ。
三十年前にハンサウスが侵略して来るまでは……であるが。
このまま山小屋に行けば、国王の命が狙われるのは分かっている。
しかし、国王には国王なりの理由があることもなんとなくは理解していた。
「ジェームズ様が……先のハンサウスとの戦でお辛い思いをしたのは、わたしも知っています。けれど、それはある意味、世継ぎとしての宿命でもあるのですよ」
シャロンは少しずつ怒りを静めながら言葉を続ける。
「ですが、その宿命とやらを打ち破りたいならば、伝統そのものを変化させるしかない状況でしょう?」
シャロンは諭すような口調で説得を始めた。
「このままジェームズ様が討ち取られたらどうなります? ハンサウスからの侵略をまぬがれたとしても、世継ぎが決まっていないケアフィールドは荒れますよ?」
国王は何か言おうとしているが、上手くシャロンを論破する言葉が見つからないのか、唇を噛み締めつつ黙っている。
「ケアフィールドの王位継承権を持っていらっしゃるのは……ケアフィールドの侯爵であらせらる叔父上のアーネスト様と従兄弟で――」
ケアフィールド王国の王位継承権を持つ者の数を、シャロンが指折り数え出す。
「……我に何を望んでいるのだ。シャロンよ」
国王とて、シャロンの望みは分かっているだろうが問う。
「山小屋へ行かずに王城へお帰り願いたいです」
シャロンも国王が分かっていると知っていて答える。
「……」
「……」
暫し無言のときが流れた。
国王とシャロンの視線が重なる――と言うか、ぶつかり合うと言うか……。
「我とて……シャロンの懸念はよく分かる……しかし、我は行かねばならぬ。我の親友を殺した男と相見える機会が与えられたのだから……」
やはり……。とシャロンは思った。
先の侵略戦争で、国王の親友でもあった王立騎士が、ヤシン・ブリアンの策略により、命を落としているのだ。
「そうではないかと、思いましたよ……」
シャロンは「ふぅ……」と軽くため息を吐いてから言う。
「それならば、わたしと一つだけ約束をしてくれませんか? 絶対にヤシン・ブリアンとは直接戦わないと……」
例えば無理に王城へ連れ帰るとしても、国王の心に後悔が残ってしまう。しかも心の傷になるような後悔がだ。
「分かった……我は前には出ぬ」
渋々と言った様子だが、国王は了承した。
「あの若い騎士を救えなかった後悔は、わたしのお師匠様も、イアン様も抱えておりますよ……」
シャロンは当時、見ているだけしか出来なかった自分の未熟さを悔やんでいた。
だからこそ、あのような悲劇が二度と起こらぬように、『ケアフィールドの盾』と呼ばれるようになるほど研鑽を積んだのだ。
「了承して頂きありがとうございます。国王様。不肖、シャロン・L・ドーン。『ケアフィールドの盾』の二つ名に恥じぬよう、御身を全力でお守り致します」
シャロンは恭しく国王の足元に跪いた。
四章終わり~五章 決戦の時へ続く~
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