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二十八話 戦乱の時~東の山のベルモント精肉店牧場にて・兄との再開~

 宜しくお願い致しますm(_ _)m

「お兄様!」


 三年振りに会った兄のハリソンは、すっかり精悍せいかんな顔つきになっていた。


「ずっと心配していたんだよ、フィリア。イアンお祖父様から時々フィリアの様子は聞いていたけど……まさかこんなところで再開するだなんて……」


 それでも、優しい性格は変わっていないようだ。


 黒く短い髪に碧眼の瞳の兄は、端正な顔を曇らせる。

 

 それはフィリアとて同じだった。まさか大好きな兄との再会が戦場でだなんて、思いもよらなかったのだから。


 どうやら兄は、王立騎士団の正騎士らしい。


 銀色の鉄鎧てつよろいには王立騎士団の紋章が彫られている。  

 それは王立騎士団の正騎士のみがまとえる鎧だ。


「お兄様は、王立騎士団の正騎士になられたのですね」


 フィリアは兄の鎧に彫られた紋章を見ながら言った。


「……あぁ、しかも大隊長の地位まで与えられたよ。……お父様にね」


 兄は自嘲じちょう気味に答える。


 大隊長……兄の若さでそれは重責じゅうせき過ぎるのではなかろうかと、フィリアは心配になった。


 王立騎士団は、騎士団長一人、副団長二人、大隊長五人、小隊長は十数人でその時々で人数が変わるはずだ。


 にしても、十代で大隊長の地位につくのは無謀むぼうな気がした。

 

 それに兄の口振りからすると、やはり父が贔屓ひいきしたに違いない。


 せめて小隊長ならば、十代でも居なくはないのだが。


「大隊長の地位につけたのは、きっと――お兄様が人の上に立つ資質があるからだと思います」


 とは言ったものの、十代で大隊長など明らかに贔屓としか思われないだろう。


「大隊長。妹さんが倒したハンサウス兵も全員確保しました」


 そこへ、兄とあまり年齢としの変わらぬ正騎士が報告に来る。

 その正騎士の兄を見る目は、まるで世話の焼ける友人を見るような目つきだった。


「あ、ああ、ありがとう。加工場に連れて行ってくれ……ええと、フィリアが倒して捕らえたハンサウス兵は全員加工場に集めているんだよね?」


 兄の言葉を聞いてフィリアは頷きながら言う。


「はい。加工場に集めて、従業員の人達に見張って貰っています。出来るなら誰か戦える人が一人ついていて欲しいのですが……」


 すると兄は国王の精鋭部隊に呼びかける。


「分かったよ――誰か二人ほど加工場に行って見張りをしてくれないか?」


 よく見ると、国王率いる精鋭部隊は殆どが、王立騎士団の若い正騎士ばかりだ。


「俺達が行って来るよ。ハリソン」


「任せておけ」


 二十歳をいくつか過ぎたくらい……つまりは十九歳の兄より、三つ四つほど年上の正騎士二人が兄の呼びかけに、こころく答えてくれた。


「お願いします。先輩方」


 兄は、その正騎士達を「先輩方」と呼んだ。

 

 ほかの正騎士達も特に不満そうな表情をしていないし、見たところ年齢も兄と同世代か少し上の者ばかり。


 フィリアはしばし考える。

 この精鋭部隊の構成を見るに、兄に合わせた年齢の者達ばかりなのだろうと。


 それでも十代で大隊長の地位についてしまった兄は、気苦労が多そうなことは想像にかたくない。


「――ところで、国王様」


 突然、シャロンの声が耳に入った。


 フィリアは兄との再開に気を取られて、国王に挨拶をしていなかったことを思い出し、そちらに視線を向ける。


「わたしが報告した通り、彼女――フィリア・R・マースティンはここを占拠せんきょしていたハンサウス兵を()()()十人は倒しました」


 精鋭部隊の先頭に立っている国王に、シャロンは凛とした声音で詰めよるように言った。


 ケアフィールドの現国王は四十六歳。フルネームはジェームズ・W(ウォルター)H(ヒース)・ケアフィールド。

 

 質実剛健を絵に描いたような実用一辺倒で飾り気のない銀色の鎧を身につけ、大剣を背中に背負っている。


(完全武装してらっしゃる……人質を取られて脅迫されたことに本気で怒ってらっしゃるのですね)


 フィリアは心の中で密かに思った。


 国王は、オレンジがかった金の髪と紺碧の瞳を持ち、少々頑固そうな印象を受けるいかめしい顔立ちだが……何故かシャロンの勢いにされている。


「女をあなどってはなりませんと、わたしは繰り返し申し上げたはずですよ?」


 シャロンの勢いに圧されている国王は、たじろぎながらも言葉を返す。


「いや……それはシャロンが手助けをしたからだろう……?」


 国王は男尊女卑思想(伝統を重んじる性格)の持ち主なので、フィリアが一人で十人ものハンサウス兵を倒したことを容易に認めたくないのだろう。しかし事実は事実だ。


「わたしは補助をしただけです。王立騎士団とて身体強化の術を使ったりしているはずですよ。それに、各個撃破だとは言え、王立騎士団の中でも一人で十人を倒せる者は少ないでしょう?」


 シャロンの言葉は真実なのだろう。

 国王の眉間にどんどんしわがよって行く。


「う……む。フィリアとやらは……確かに『剣聖』イアンの孫娘なのだな?」


 国王がフィリアに向かって問いかける。


「は、はい! お初にお目にかかります! 国王様! わたしは『剣聖』イアン・マースティンの孫娘フィリア・R・マースティンと申します!」


 フィリアは敬礼しながら答えた。

 本来ならば平伏するなりカーテシーのポーズでもすれば良いのだろうが、スカートはいていないし、何よりここは戦場だ。


 一見、牧歌的な風景が広がっていようが、フィリアが倒したハンサウス兵達の流した血溜まりがあったり、両刃で幅広の剣(グラディウス・シルフ)で切り落とした腕が転がっていたりする。


 この場はやはり敬礼するのが相応しいだろう。


「……そうか、イアンの天賦てんぶの才を受け継いだのが孫娘だとは聞いていたが……本当なのだな……」


 国王は血溜まりの中にある切り落とされたハンサウス兵の腕を見ながら言った。


「そうだな……シャロンはこのようなことで嘘はつかないな……」


 どうやらシャロンは国王からの強い信頼を得ているようだ。


 どことなく気落ちしたような表情になって軽く俯いた国王だが、次の瞬間、キッと顔を上げてフィリアを見据えながら――

 

「ならば! フィリアとやらよ! 我に力を貸すのだ! まずは未だに捕らわれた者達を奪還だっかんするぞ!」


 と、力強く言い放った。


「はい!」


 フィリアは国王を真っ直ぐに見つめながら、再度敬礼をし直した。


「ハリソン。我が見込んだ精鋭部隊への指示は任せた。みなを連れてついて参れ」


 本当に国王(みずか)おもむくのだなと思いながら、フィリアは兄が指示を任された精鋭部隊と共に、シャロンと並んで歩きだした国王について行った。

 

 この作品はカクヨムで完結済みですが、バックアップの意味も込めてなろうさんにも投稿しています。


 バックアップの意味を込めていますので、誤字脱字、ルビのミス以外はカクヨムにあるものと何も変えていません。


 そして、お読み頂いた全ての皆様に感謝致しますm(_ _)m

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