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二十二話 戦乱の時~シャロンと合流~

 宜しくお願い致しますm(_ _)m

 独立騎士団本部にいる団長から、北の山沿いの町と村にいる全ての騎士へと支部を通じて連絡が飛んだ。

 

 それは怒りの言葉だった。


『この非常時に内輪揉うちわもめしてる場合か! アトウッド、ゼック、ベルモント、マースティンに不満を持っている者は騎士団本部へ帰って来い!』


 更には、『不満をあらわにするなら平常時にしろ!!』である。


 つまりは非常事態にも関わらず結束を乱すような言動に団長は怒っているのだ。


 不満は今までにもあったのだろうとは、フィリアも思っている。


 だが、今それを表に出すのは間違いだとも思う。


 今は夜。フィリアは町に一軒しかない宿屋の一人部屋で、窓の外を見ていた。


 この位置からだと山がよく見える。

 だから何か異変がないかと、じっくり山を見ていたのだが――


「フィリアちゃん」


 突然、背後から声をかけられて、フィリアは一瞬、呼吸が止まるかと思うくらい驚いた。


 声と気配は同時に出現したのですぐには気づけなかったのだ。


 フィリアが振り返ると同時に彼女――シャロンはフィリアの肩に手をかける。


「シャロン! 無事だったのですね!」


 フィリアはシャロンの顔を見るなり抱きついた。

 いつも通り、白いマスクで顔の右半分をおおっている。


 目と口の部分は開いているが、実は鼻の穴の部分も開けていることを、フィリアはシャロンを親友だと認識し始めた頃に知った。


「良かった! 危険な目に会っていないか心配していたのです!」


 この三年間でフィリアの身長も伸びていたが、それでもシャロンのほうが数センチ高い。

 

 フィリアはシャロンの肩口に顔を埋める。


「フィリアちゃん……あなたを迎えに来たの。北の山は明後日にでも戦場になるわ。それを止める為にもあなたの力が必要なのよ」


 が、フィリアの体を軽く抱き締め返しながら、シャロンはいつになく真面目な口調で言った。


「北の山が戦場って……シャロンは何を知っているのですか?」


 フィリアは少しだけ顔を上げてシャロンを見る。


「フィリアちゃん。強引に連れて行くことを許してね」


 フィリアの問いには答えずシャロンは呪文らしきものを唱え始めた。

 フィリアには全く分からない言葉だ。


 シャロンが呪文を唱え終わると、フィリアは体が一瞬浮いたような感覚に陥る。


 しかし、それはほんの一瞬のことで、その感覚がなくなるとフィリアはシャロンと一緒に、宿屋ではないどこか暗い場所に移動していた。


「こ、ここは!?」


 シャロンから手を離さないまま、フィリアが辺りを見回そうとすると、上空で目映まばゆい光が輝き始める。


 それはシャロンが魔術でともした炎の明かりだ。


「ここはケアフィールド王都にある城の、古い宝物庫。ここの宝物庫を守っているのはわたしの魔術」


 片手を上げたそのてのひらに炎をともしたまま、シャロンは説明して行く。


「ここには、フィリアちゃんにあつらえたような剣があるの」


 宝物庫であるから様々(さまざま)な宝物がところせましと並べられている。


 シャロンはフィリアから離れ、勝手知ったる様子で宝物庫の中を歩き、一つの剣を指差した。


 それはつかまで入れて七十センチほどで剣としては短く、刀身は肉厚で幅広で、先端は鋭角に尖っている。


 一般的な剣より短い幅広な剣だ。

 

「切ってよし、突いてもよし、さやに入れたまま、相手を殴ってもよしよ」


 フィリアはシャロンに導かれるように、その剣を手にする。


 使ったことのないタイプの剣だが、魔力でも込められているのか、刀身があわい緑の光を放っている。


「この剣の名前は分からないけど、刀身に『グラディウス・シルフ』って文字が彫られているわね」


 グラディウス・シルフ。確かにこの剣の名前なのか、この剣を造った者の名前なのか判断がつかない。


「か、軽い! 木剣ぼっけんよりも軽いです!」


 フィリアはその剣を持って、軽く振り回してみるが、しっくりと手に馴染む。


「魔法剣らしいのだけれど、わたしも詳しくは解らなかったのよ。ああ、危険なものではないから安心してね」


 驚くフィリアに向けてシャロンは更に言葉を続ける。


「フィリアちゃんには、これからわたしと一緒に東の山に向かって貰うわね」


 宿屋から宝物庫に一瞬で移動し、この剣(グラディウス・シルフ)を手にしたまでも、驚きの連続なのに。


「ち、ちょっと頭の中を整理させて下さい……」


 シャロンの口から語られる多くの情報に、フィリアの頭は混乱気味だ。


「ええと、まず北の山は明後日には戦場になるのですね?」


 フィリアの問いにシャロンは黙って頷いた。


「何故、そう断言出来るのですか?」


 フィリアの碧眼の瞳がシャロンを真っ直ぐとらえている。


「わたしが空間移動の術を使って、こっそりあちこち調べた結果なのよ」


 やはり、宿屋からこの場所へと一瞬で移動したのは空間移動の術なのだとフィリアは思った。


「北の山に敵国ハンサウスの兵士が多数目撃されているのは知ってるわよね? それはね……」


 シャロンは一呼吸おく。


「ハンサウスが、北の山と東の山からケアフィールドに同時攻撃をしかける作戦を立てているからなのよ」


 東の山と北の山から同時攻撃とはあまりに大規模な作戦だ。


 万が一、ケアフィールドが落とされたら、次は北の同盟国リングノーズの番だろう。


 フィリアは我知らず片腕で自分の体を抱き締めていた。


「で、では、何故わたしがシャロンと共に東の山へ向かわなければならないのですか?」


 自分如きが首を突っ込む必要などないだろうにとフィリアは思う。


「東の山にベルモント精肉店の牧場があるのは知ってるかしら? あそこが敵の手に落ちて従業員が人質に取られてるのよ」

       

 シャロンは淡々と言ったがフィリアは思い切り動揺どうようする。


「そ、それはわたしよりベルモントに知らせたほうが良いのではありませんか!?」


 ライバルであり、友人でもあるルーク・ベルモントはベルモント精肉店の三男だ。


「いいえ。彼よりあなたが適任よ。フィリアちゃん」


 シャロンの言葉にフィリアも、ハッと気づく。


「そう、ですね。身内が人質に取られているなんて知ったら、ベルモントは冷静ではいられないと思います」


 フィリアの返事を聞いたシャロンは頷いて、話を続ける。


「そうよ。だからヒューイに許可を取って、わたしがフィリアちゃんをここまで連れてきたの」


 しかし、何故自分なのだろう。とフィリアは疑問に思うが早いか。


「『剣聖』イアン様の天賦てんぶの才が受け継がれ、やいばがつく武器なら少し練習すれば、すぐに扱えて、複数の敵と対峙する能力を持っているのはフィリアちゃんだから」


 シャロンはその答えを口した。


 確かに、一対複数の戦闘はフィリアが持つ才能の一つだ。

 どんな武器でも刃物ならば、大抵扱えてしまうのも祖父譲りだと言えよう。


「でも、だからと言ってまだ正騎士でもないわたしが――」


 謙遜けんそんと言うより、まだ自分が祖父から受け継いだ才能をよく理解してないがゆえに、フィリアは不安になっている。


「わたしがフィリアちゃんをサポートするから、ベルモント精肉店の牧場に少数精鋭で人質を奪い返しに行こうとしてる国王に助力してあげて欲しいのよ」


 ……フィリアは暫し黙ってシャロンの言った内容を頭の中で咀嚼そしゃくする。どうにも信じられない内容だったからだ。


「――こ、国王様(みずか)ら!?」

 

 が、ようやくしっかりと意味が分かると驚きの声を上げる。


「国王様自らが少数精鋭でベルモント精肉店の牧場を取り戻すのですか!? 何故!?」


 確かにベルモント精肉店は王家御用達ではあるが、それであっても合点がてんが行かない気がしたのだ。

 

「ベルモント精肉店の牧場はね。東の山の警備担当者達に食料を提供してるのよ。おまけに『国王自らおもむかないと、牧場にいる全ての人間を殺す』って脅迫が来たの……」


 しかし、シャロンはその理由をあっさりと答える。


「そう、だったのですね……」


 ベルモント精肉店の牧場には何人の人間がいるのかは分からないが、片手では足りないはずだ。


「我が国の国王は賢君けんくんだけど、二十人もの人質を取られて黙っているような性格じゃないのよ……」


 シャロンは困ったような表情になってから。


「まあ、人質を取られただけが理由でもないんだけどね」


 と言い、「ふうぅ」と深い溜め息をついて続ける。


「だとしても、せめて影武者を使えば良いものを……あろうことか側近を振り切って自ら乗り込みに行ってしまったのよ……」

   

 シャロンの話を聞いて、「二十人もの人質」と言う言葉と、「国王自ら」という言葉がフィリアの頭の中を飛び交っていた。


(……これは、思った以上におおごとなのでは?)


 そう思うフィリアではあったが、まずはどうにか気を鎮め落ち着こうと、自分の胸に片手を当てながらゆっくりと深呼吸を始めるのだった。


 カクヨムで完結済みの作品ですが、バックアップの意味も込めてなろうさんにも投稿しています。

 バックアップの意味を込めていますので、誤字脱字、ルビのミス以外はカクヨムにあるものと何も変えていません。


 そして、お読み頂いた全ての皆様に感謝致しますm(_ _)m

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