二十話 従騎士の時~再び山への前に……~
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フィリアとベルモントは独立騎士団支部へと入った。
数分の休憩を挟んだ二人は、町中の巡回を始めようとしたが、何故かフィリアはゼックに呼ばれ、町の出入口へと向かうことになった。
「ゼック先輩。何かあったんですか?」
フィリアはゼックのあとに着いて町の出入口へと歩いて行く。
「先ほど山の中で足跡を見つけただろう。何故あれが魔術師の物だと分かったのか、もう一組の偵察に出ていた正騎士が知りたがっているんだ」
フィリアの前を歩いているゼックは淡々と言った。
「ああ、それでしたら。シャロンが同じような靴跡の靴を履いていたなと思い出したんです」
すると、ゼックは一瞬足を止めかけたが、そのまま歩き続けることにしたようだ。
「……シャロン殿の靴跡は気にしていなかったな。マースティンはシャロン殿のことをよく見ているのだな」
ゼックは感心したように言う。
町の出入口まではもうすぐだ。
「ええ。シャロンはわたしよりずっと年上ですけど、お互いを親友だと思っているんです」
フィリアはシャロンの実年齢を知らないが、そんなことは関係ないと思っている。
「そうなのか。わたしもシャロン殿が見た目より年齢が上だとは思っていたが……どうやら予想よりずっと年上のようだな」
ゼックは歩きながら呟く。
「考えてみれば、団長と昔から知り合いなのだから団長と同じくらいか、その前後の年齢と考えたほうが自然か」
などとゼックの呟きを聞きながら歩いていると――
「何を勘違いしてるんだ!」
アトウットの怒鳴り声が聞こえて、フィリアは走り出した。
ゼックも我に返りフィリアと並んで走り出す。
「本当に何があったんですか?」
フィリアは走りながらゼックに問う。
「マースティンとシャロン殿が、友人なのは独立騎士団でも有名だろう?」
二人がそれほど息も切らさず話せているのは、日頃の訓練や修行の成果だ。
「はい。そうですね。特に隠す必要はな」
――いですから。
フィリアはそう言いかけたが、その言葉はアトウッドの声に遮られる。
「マースティンはシャロン殿と連絡を取る方法を持っていない! 二人共明日の偵察にも参加させる!」
自分のことだけかと思っていたら「二人共」と言う声が聞こえ、フィリアは思わず足を止め、首を傾げてしまう。
「異論があるなら団長に連絡を取って確認してくれ!」
そう言い放ってこちらに向かって来るアトウッドは珍しく不機嫌な表情をしていた。
何やら誤解があったらしいことだけは理解しつつも、フィリアとゼックはアトウッドの元に駆け寄る。
三人は町の出入口から五メートル近くの場所で立ち止まった。
「あの、わたしとシャロンのことで、何か誤解がありましたか?」
フィリアが問うと、アトウッドは、なんとも悩ましげな様子になる。
「未だに誤解があるとはわたしも思わなかった……マースティンが国家魔術師殿と連絡が取れているのは、団長を介してだと言うのに……」
それを知らない者がいるとは……と言葉を続けながら、アトウッドは困った表情になった。
シャロンに連絡を取るときは、団長の書斎で取ることになって――と考えたところで、フィリアは思い出す。
時々、シャロンの希望で団長の部屋ではなく、二人で話したいと言われることがある。
その時だけは団長から通話の魔法具を借りてフィリアの自室で話すのだ。
おそらく、フィリアが通話の魔法具を借りて、自室へ戻るところを見た誰かが誤解したのだろう。
「あの……それと、わたしが偵察に出ることを反対している方がいるのですか?」
するとアトウッドは困った表情にから、悩むような表情になる。
「ああ、それだけならまだしも……わたしとゼックがマースティンのみならず、ベルモントを贔屓しているなどと思われていた」
これにはフィリアもビックリする。
隣にいたゼックも驚いている様子だ。
「――だ! 誰だ!? そんな妙なことを言ったのは!!」
ちゃんと考えればそんなはずはないと分かるのに、とフィリアは思う。
ゼックは真面目でまず贔屓などしない。
アトウッドとて自身の従騎士とは言え、フィリアが仮入隊するときの一悶着で、ベルモントに手を焼いていたことは誰もが知っている事実だ。
「何故、そんなふうに思われてしまったのでしょう?」
フィリアは誤解の原因になりそうな事柄を考えみる。
……だが考えれば考えるほど、たった一つの結論にしか辿りつかなくなってしまった。
(……原因は、わたし、ですよね……?)
男ばかりの騎士団に女の従騎士が一人。
しかも正式入団し、従騎士として男の騎士と同じ働きをしている。
フィリアはゼックの従騎士なのだから、ゼックが自分の従騎士を贔屓していると見られるなら話は分かる。
だが、自分の従騎士を贔屓目に見てしまい勝ちな正騎士は他にもいるので、そう見られても問題ないだろうことはフィリアにも想像できた。
問題は、ゼックと行動することが多いアトウッドもフィリアを贔屓しているように見えたことだろう。
更に最大の問題はアトウッドとゼックがベルモントを贔屓していると思われていることだ。
これは完全にフィリアの推測になってしまうが、ベルモントはフィリアとセットで行動することが多い。
フィリア自身が自負している訳ではないのだが。
「あの女従騎士は男以上に実力も才能もあるのに、共に行動する男の従騎士が平然としてられるのは、きっと二人の正騎士に贔屓されてるからに違いない」
そう、考える者がいたとすれば?
独立騎士団支部へ戻ってから、フィリアはこれらの考えを、アトウッド、ゼック、ベルモントに話してみた。
「それは……確かにマースティンの想像通りかも知れないな」
アトウッドは合点が行ったと言う表情でフィリアの顔を見ながら言った。
「ああ……そりゃそうかも知れないなあ。俺はマースティンの強さも才能も、三年間殆ど一緒に行動して認めてるけど……」
ベルモントもアトウッドと似たような表情をしている。
「……だとすれば、支部から騎士団本部の団長へと連絡を取りましょう」
ゼックは冷静な声音で言った。
「誤解と不満を持たれた状態で、二人を明日の探索に出して良いものか。団長の判断を仰ぎましょう」
それは、真面目なゼックらしい考えだとフィリアは思った。
と、同時に自分の迂闊さを内心恥じてもいた。
(各地にある支部から支部、支部から本部へと早急に連絡を取る方法がないはずがないではありませんか!)
シャロンに連絡を取る方法はちゃんとあるのだ。
フィリアが気づいてなかっただけで。
そうして――早速ゼックとアトウッドは騎士団本部から動けない団長へと指示を仰く為、連絡を取りに向かって行った。
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