十八話 従騎士の時~北の山の麓にある町と村~
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セーフフィールド独立騎士団本部から北の山沿いの町や村に派遣された正騎士達は、約二十人。
そのうち従騎士を連れているのは十五人。
町や村に、元から常駐している独立騎士団所属の正騎士は十人なので、合計四十五人となる。
騎士団本部にいる全ての正騎士に辞令書が渡されてから、二日かけてフィリア達はこの町に到着した。
それから一晩の休息後。
翌日午後から、フィリアとベルモントを含む従騎士達は、早々にこの町の中を警備することになったのだ。
アトウッドとゼックを含む正騎士達は町の出入口や外側の警備を担当している。
元から常駐していた正騎士の数人は、いつも通り独立騎士団支所の中にいて、住民の話を聞いていた。
他の数人は外に出て小さな諍いごとの仲裁をしている。
支所の中から不安そうな女性の声が聞こえて来た。
「もう、怖くて怖くて……山の中へと山菜を取りにいけません。王都へ出稼ぎに行ってる息子を頼って暫くこの村を出ようかと……」
フィリアは支部近辺にいたので、女性の声が耳に入ってしまう。
この町でも隣の村でも、山の中でハンサウスの兵士を見かけた者は多い。
少年兵と言える若者から中年のベテランと思わしき兵士まで、何人ものハンサウスの兵士が目撃されている。
ハンサウス住民は褐色の肌を持つ者が殆どだ。
だから、山で褐色の肌を持つ者を何人も見かけたならば、それはハンサウスの人間なのだ。と言っても過言ではない。
「……昔のようにハンサウスが攻めて来るんでしょうか?」
女性の声からは不安が滲み出ている。
「ここは北の山沿いの町なのに……何故なんでしょうか?」
フィリアは立ち止まって聞いていたが、『何故、北の山にハンサウスの者が入り込めたのか』は、フィリア自身も知りたいと思った。
北の友好国リングノーズが裏切っているとは思えない。
リングノーズとハンサウスは敵対しているのだから。
ケアフィールドとリングノーズは国交が盛んで古くから助けあっている。
リングノーズもハンサウスから侵略されかけたことがあり、昔から敵対しているのだ。
……ふと、フィリアは考え始める。
祖父のイアンはどうしているのだろう? 友人で国家魔術師のシャロンは?
父のアダムは? 母のセーラは? 兄のハリソンは王立騎士団へ無事入団したのだろうか? 弟のリアムは剣術が上達したのだろうか?
祖父から家族の様子は教えて貰っているけれど。
自分が危険な場所に配属されたとたんに家族や友人のことを思い出してしまうのは、きっとどうしようもないことなのだろう。
取り敢えず、母と弟は王都の端にあるマースティン家の屋敷にいるはずだから、無事なんだろうとは想像できた。
しかし、祖父と友人であるシャロンは危険な目に逢ってたるのかも知れない。
確執があろうと、王立騎士団長の父のことも心配だ。
王立騎士団へ入団しているであろう兄のことも心にかかった。
フィリアの心はにわかに不安に覆われる。
今までは団長を介してではあるが、シャロンといつでも連絡が取れた。
祖父とも定期的会えたが、ここに着任するといつまで会えない日々が続くのか。
せめてシャロンとは……とは思うのだが、団長は王都にある独立騎士団本部から動けないと言っている。
「おい。マースティン。どうしたんだ」
背後から、所用で騎士団支部の中へ行っていたベルモントに声をかけられ、フィリアは我に返った。
「少し顔色が悪くないか? 何か無理してるんじゃないのか?」
ベルモントは心配そうな表情をしている。
「いえ、大丈夫ですよ。ちょっと愛馬のことを考えていたのです。ここへ来るまでに、無理をさせてしまったのではないかと心配していました」
これは嘘ではない。
二日間、フィリア達も睡眠時間を割き、強行軍で北の山裾までやって来たのだから、愛馬にはかなり無理をさせてしまったのだ。
「そうなのか……俺が乗って来た馬もかなりバテてたからなあ。そりゃ心配になるよなあ」
ベルモントはフィリアの言葉に納得してくれた。
顔色が悪かった本当の理由は言えないが、別に嘘をついた訳でもない。
フィリアは気持ちを落ち着ける為、ゆっくりと深呼吸してから、祖父から教わった心身を整える呼吸法を始めた。
ゆっくりと鼻から息を吸い、ゆっくりと口から吐く。
幼い頃から気付いたときに、意識して行っている呼吸法だった。
今では自然に出来るものの、騎士団に正式に入団して以降は、これほど心乱れることはなかったので、改めて意識してやってみたのだ。
他にも祖父から教わった呼吸法は幾つかあるが、この呼吸法が基本だと言われたので、一番頻繁に、そして自然にやれているものである。
(ああ……徐々《じょじょ》に心が落ち着いてきました)
フィリアがどうにか気持ちを落ち着けていると。
「マースティン。良かったらちょっと馬の様子を見に行かないか?」
ベルモントが声をかけて来た。
「さっきから様子を見てたけど、深呼吸して黙ったっ切りだったからな……俺も馬が心配だし、一緒に見に行こう」
呼吸法をやっているときは無言だったから、心配させてしまったのだとフィリアは気づく。
が、ベルモントの気遣いが嬉しかったし、本当に愛馬が心配だったので。
「ええ。行きましょう」
と答え、ベルモントと二人で馬小屋へと歩き始めた。
町の警備は基本どこにいても良いことになっている。
町の中に配置された従騎士が、大体二人一組で町中をゆっくり巡回しているからだ。
騎士団の支部近くにいたのは、ベルモントが支部のトイレを借りていたから待っていたのである。
「それにしても、どうやって北の山へ入り込んだんだろうな」
ベルモントが言っているのはハンサウスの兵士達のことだ。
「分かりませんね。リングノーズがハンサウスと手を結ぶはずはありませんし……」
フィリアは考えつつ言葉を続ける。
「ハンサウスの方角から来た者は、褐色の肌をしていれば、ハンサウスと関係があろうとなかろうとあの山には入れないですから」
フィリアの言葉を聞いたベルモントは「う~ん?」と首を捻りながら歩く。
「わたし達が考えたところで分かるはずもありません。まずは目の前のやるべきことに集中しましょう」
馬小屋が見えて来たので、フィリアは少しだけ早足になる。
「まあ、そうだな。マースティンもいつもの様子に戻ったみたいだし。目の前のことから片づけて行こうか」
――うっ。とフィリアは心の中で唸った。
さすがは三年間、大半の時間を共に過ごして来ただけはある。
ベルモントは、フィリアの些細な不調まで見抜けるようになっていたようだ。
まあ、フィリアとて、ベルモントの些細な変化が分かるので、それはお互い様なのだが。
そこに――
「マースティン! ベルモント! 町の人から協力が得られた! 今から山に入って偵察を始めるぞ!」
町の外からゼックが駆けて来て二人に告げた。
「すぐに革鎧を身に着けて用意するんだ!」
ゼックの凛とした声音にを聞いて、二人の気持ちが引き締まる。
「了解しました!」
「了解!」
敬礼と共に返事をして、フィリアとベルモントは騎士団支部の中へと走り出す。
時刻は午後の一時半頃。天気は晴れており、山に分け入るには丁度良い天候でもある。
今が暑い時期ではなくて良かったかな。
とフィリアは考えつつ、革鎧を身に着け、騎士団から与えられている剣を軽く拭いてから、ゼックの元へ向かって行った。
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