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十四話 仮入団の時~三ヶ月後の宣言~

 宜しくお願い致しますm(_ _)m

 今日は年明けの日だ。フィリアは年明けと共に十三歳になった。フィリアだけでなく、誰もが一つ歳を取った。

 

 それぞれの誕生日もあるが、この国では年が開けるごとに、みんな一つ歳を取るのだ。

 生まれた日は記念としての誕生日であり、歳を重ねるのは一年の年明けと共にである。

  

 この日は、いよいよフィリアの仮入団が終わる日でもあった。

 

 仮入団の期間は三ヶ月から半年。

 フィリアの仮入隊は三ヶ月で終わると一週間前にゼックから告げられている。


 ベルモントはフィリアより三ヶ月早く仮入団していたが、仮入団期間は半年で、ベルモントも今日で仮入団が終わる日だ。


 練習試合から約三ヶ月。ベルモントとフィリアは互いに切磋琢磨せっさたくまする、ライバルであり友人となっていた。


「緊張するよなぁ……」


 食堂で朝食をりながら、フィリアの向かいの椅子で、ベルモントが呟く。


「ベルモントなら大丈夫です。そりゃあ、()()早朝練習試合のあと、アトウッド先輩共々、団長にこっぴどく怒られてはいましたけれど、そこから先の生真面目っぷりは称賛しょうさんあたいしますもの」


 フィリアはベルモントを励ましたが、ベルモントは思い切り顔をしかめた。


「……励まされてるのは、分かるけどな……マースティンが仮入団したときのことは言ってくれるなよ……」


 フィリアは不思議そうな表情になった。


「何故ですか? わたしが練習試合をした相手はベルモントだけではありませんのに」


 あのあと、同じく仮入団している従騎士達から練習試合を申し込まれたこと多数。


 ゼック先輩から許可が出て、実際に練習試合をしたのは五人。

 フィリアはその五人にも文句無しの勝ち方をしていた。


 ベルモントを含め、六人から勝利を勝ち取った頃には、誰もがフィリアの強さと騎士たる資質を、認めざるを得なくなっていた。


 ゼックに叩き込まれるまでもなく、立ち居振舞いはほぼ基礎が出来ていたし、心構えは誰よりもしっかりしていた。


「まあなぁ。確かに、俺以外にもマースティンにいどんだ馬鹿はいたけどさ……そいつらは全員、潔く敗けを認めただろう?」


 ああ、そこか。とフィリアも思い出す。


「それは……いきなりやって来た男爵令嬢に負けるなんて、信じられないことでしょうから、仕方がないかと思います」


 内心……諦めが悪いな……などと思っていたことは口には出さずに、フィリアはベルモントをフォローした。


「とにかく! 朝食が終わった者から順番に訓練場へ行って、正式な入団の合否ごうひを確かめなくてはなりません!」


 フィリアは、勢いよく椅子から立ち上がり、からになった朝食の器を調理場へと返しに行こうとする。


「お、お前相変わらず食うの早いな。少しだけ待ってくれ。俺と一緒に行こう」


 ベルモントは急いで朝食を口に掻き込む。

 食事のマナーとしては違反しているが、フィリアは黙って待つことにした。


◇◆◇◆◇


 フィリアとベルモントが訓練場へ着いたときには、正式入団の合否を確認する仮入団者が数人、訓練場の正面玄関口で順番を待っていた。


 話を聞くと、どうやら一人ずつ中に入るよう言われているらしい。


 「次の者。入れ!」と中から団長の声がすると、一人ずつ訓練場の中へと入って行く。


 その声以外は、耳を澄ませても中から何も聞こえて来ない。


 大体感覚で三から五分ごとくらいだろうか、フィリアとベルモントの前に並んでいた仮入団者が、少しずつ減って行く。


「次の者。入れ!」


 と声が聞こえた瞬間ベルモントが怖じ気づいた。


「マースティン、先に行っていいぞ」


 そんなことを言うものだから、フィリアは怒ってベルモントを訓練場の中へ半ば突き飛ばすように、押し入れようとする。


「うわ! わ、分かったから! ……じ、じゃあ、先に行ってるぞ。マースティンは大丈夫だと思うが、俺はなぁ……」


 と、ぶつぶつ後ろ向きなことを言いながらも、ベルモントは訓練場の中へと入って行く。


「何を弱気な!」


 とフィリアはげきを飛ばす。

 そんなフィリアに軽く手を振って、ベルモントは訓練場の中へと消えて行った。


 それから約五分後、「次の者。入れ!」と言う団長の声がしたので、フィリアはドキドキハラハラしながらも、訓練場の中へ入って行く。


 訓練場の中へ入ると、団長と仮入団者達を指導していた正騎士達が、かつてフィリアがベルモントと対戦した場所で整列していた。


「フィリア・R・マースティン」


 正騎士達の真ん中に立っている団長が、おごそかな声でフィリアの名を呼んだ。


「はい!」


 フィリアはすかさず敬礼をして答える。


 そう言えば、ベルモントや他に入団した者達はどこにいるのだろう?


 と考えるも、今は目の前の出来事に集中しなければ、とフィリアは団長の顔を、じっと見つめた。


「マースティン……お前の強さは本物だ。しかし、最後に問うぞ。()()()()()()()()()()()()()()


 フィリアはすぐにさとった。自分が良ければ正式に入団が出来るのだと。


「わたしからお父上には連絡しておいた。イアン様にもだ」


 だが、団長は言外に問いかけて来る。

 

 祖父イアンに連絡したと言うことは、おそらく父は祖父に罵倒ばとうされる勢いで怒られているだろう。


 だから、一度屋敷に帰ってアダムと話し合いをして来ないか?


 団長はそれを提案しているのだ。

 

 それでも――


「騎士団のご迷惑になるならば、わたしも考えます。ですが、そうでないのならば――正式に入団させて下さい」


 フィリアは三ヶ月の仮入団生活で、この騎士団に愛着を持っていた。

 

 仮入団者の中には、女だからと馬鹿にする者もいた。正式な団員達の内心は分からないけれど、言動には出さすにいてくれたのだ。


 だからフィリアはこの騎士団を、父が団長を務める王立騎士団より格が劣るどころか、同等もしくはそれ以上だと感じている。


 内心では男ばかりの中に女一人交じるのは、迷惑にもなるだろうし、不便な部分もあるだろうとは思う。


「アーサー・ヒューイ団長! 正騎士の皆様方! どうか、わたしをこの騎士団へ正式に迎え入れて下さいませんか!?」


 敬礼したまま、フィリアは彼らの意思を確認するように鋭い声で問いかけた。


「…………」


 暫しのき、正騎士達全員の視線が、団長へとそそがれる。


「覚悟は……決まっているのだな?」


 今度はフィリアに団長から鋭い視線が向けられた。


「当然です! わたしはこの騎士団で正騎士になりたいのです!」


 しかし、フィリアの決意が揺らぐことはない。


「…………」



 再び、無言の時が過ぎ――


「分かった。入団を認めよう」


 団長は落ち着いた声音でフィリアに告げたのだった。


 すると――


「やっぱりマースティンは残ったか」


 と、かつてフィリアに練習試合を申し込んだ仮入団者の声が、訓練場の裏口から聞こえた。


「そりゃそうだろ。なんと言っても、マースティンだからな」


 と続いてベルモントの声も聞こえて来た。


「あ、ベルモントですか!?」


 フィリアが敬礼を崩さず、裏口付近にいるだろうベルモントに呼びかける。


「やべ。聞こえてたか」


「一言も発するなと言われてただろうが。アホ」


「誰がアホだ!」


「しーっ、二人とも黙ろう」


 どうやら正式に入団決定した者達が裏口付近にいるようだ。

 

 フィリアの耳に聞こえて来たのは、ベルモントを含む三人ほどだが、気配を感じ取ろうとすると、正確な人数までは分からないが、他にも数人いることが分かった。


(ほら、わたしが思っていた通り、ベルモントも残ったではないですか)


 フィリアは意識を団長と正騎士達に向けて。


「入団の許可を頂き、ありがとうございます。不肖、フィリア・R・マースティンこれからも気を抜かず精進して行きます!」


 決意を込めて宣言したのだった。

 お読み頂きありがとうございますm(_ _)m

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