十一話 仮入団の時~フィリア、従騎士になる~
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フィリアの自己紹介は概ね成功だったと言えよう。
ただ、意図せぬ形で注目されて、今現在団員達から質問責めにあってはいるのだが。
「本当にイアン様の身内なのか?」
「男爵家のお嬢様なら王立騎士団のほうが良いんじゃないのか?」
「女が訓練について来れるのか?」
「俺の従騎士にならないか?」
好意的な質問……かどうかは分からないが、それらに交じって否定的な言葉も聞こえてはいたが。
だが、最後には――
「お前達! わたしの言葉を聞いてなかったのか!? 静まれと言ってるだろうが!!」
団長の怒鳴り声でようやく広間は静かになった。
「異例のことで皆が驚くのは分かる。しかし、いずれは女騎士もこの国に必要な存在となるだろう」
団長は厳かに言う。
「マースティンは間違いなく剣聖イアン様の孫娘だ。男爵家の令嬢でもあるが、我が騎士団に是非にと望んで仮入団してくれた稀有な存在だ」
フィリアが望んで仮入団したかと言えば、半分は本当で半分は違った。
仮入団したいのは本当だが、この騎士団に是非にと望んだかと言うと、ここしか選択肢がなかった。と言うのが正しい。
だが、それが団長の方便であることも理解しているので、黙って聞いている。
「この国にも女騎士が必要になるときが来る。と『剣聖』イアン様も仰っていた。我がセーフフィールド独立騎士団は、国民の剣であり盾でもあるのだから」
水を打ったかのように静かな広間で、団長は言葉を続ける。
「国民は男だけではない。女も子供もいる。力持たぬ、か弱き小さな存在に寄り添い励ましの言葉をかけるのは、細やかな気遣いが出来る女性が適任と言えよう」
フィリアだけではない。団員達も団長の言葉に聞き入っている。
「もちろん騎士としての力も素質も兼ね備えていなければならないが、マースティンには力も素質もあるとわたしは思っている。異論がある者は、今ここで申し出てみるが良い」
王立騎士団は国と王家と貴族を真っ先に守る。
独立騎士団は国民を守る。その役割をここにいる誰もが理解しているのだろう。
だからこそ、誰からも異論の言葉は上がらなかった。
内心、異論がある者もいるだろう。とフィリアは思ったが、まずは穏便に済んだようだ。
「異論はないな。――ならば解散だ! 非番でない者は持ち場に戻れ! マースティンはわたしに着いて来い」
団長の声で、団員達は早足で持ち場に戻って行った。
非番の者は部屋に戻るのだろうか?
そんなことを考えながらも、フィリアは団長のあとに着いて行く。
「マースティンには、アトウッドと組むことが多いゼックの元に付いて貰う」
団長は歩きながら説明する。
「ええと、ゼックと言うと、もしかして昨日本部の扉前に居た方ですか?」
兜に覆われて顔は見えなかったが、アトウッドと共に槍を持っていた騎士だ。
「そうだ。よく名前を知っているな」
少し驚いたような表情でフィリアを見ながら団長は答える。
「昨日、わたしがここに着いたばかりのときに、団長がお名前を呼んでいましたもの」
二人は短い廊下を歩きながら話していた。
「確かに呼んだかも知れないが、よく覚えていたな」
団長はとある部屋の前に立ち止まって言う。
フィリアは、(あれ? この部屋の反対側は自分の部屋のはず)と思ったが。
「記憶力にはちょっと自信があるのです」
団長の隣に立って微笑みながら答えた。
「そうか。それは頼もしい」
と言ってから、団長は部屋の中にいるであろう誰かに向かってドア越しに呼びかける。
「ゼック。ロジャー・ゼック。今日は非番だったはずだ。部屋に戻っているか?」
ロジャー・ゼック。とフィリアは声には出さずに呟いた。
仮入団とは言え、一人前の騎士の元で従騎士としての心構えや作法を学ぶのだが、ロジャー・ゼックは一体どんな人物なのだろうか?
昨日は過度に緊張している騎士との印象しかなかったが……。
「お呼びですか、団長――っと! お嬢様!?」
黒髪黒目のなんとも凛々しい顔立ちの青年が、ドアを開けて出て来た。
非番なので、長袖の白いシャツに藍色のズボンを履いている。
しかし、着崩した様子はなく、だらしない印象は受けなかった。多少緊張しているようだが。
「お前も広間にいただろう? マースティンは正式に仮入団したんだ。お嬢様とは呼ぶな」
団長はゼックに注意の言葉をかけた。
「い、いや、しかし、男爵家のお嬢様ですよね? わたしは昨日の騒ぎを知っていますが――いや、そうではなく……まさかわたしの!?」
ようやく状況を理解したようで、フィリアと団長の顔を交互に見ながら、疑問を交ぜて言葉を返す。
「そうだ。マースティンは仮入団の間、お前の従騎士となる」
団長が答えたあとに、フィリアは敬礼をしながら。
「フィリア・R・マースティンです! ゼック先輩! 宜しくご指導お願い致します!」
フィリアはゼックが動揺するのも無理はないと思いながらも、元気良く自己紹介と挨拶をした。
――そして、場所を移して、ここはフィリアだけの部屋。
あのあと団長は、ゼックにフィリアを従騎士として扱うよう言いつけ去って行った。
何故場所を移したのかと言うと、ゼックは部屋割りの都合で他の騎士二人と相部屋だからだそうな。
フィリアを従騎士にしたいと願う者は他にいるのだ。
部屋の前で話しているのを見られたくない。とゼックが言うのも理解出来る。
なので、この部屋に移動したのだが、ゼックが昨日と同じく緊張したままなので、フィリアはどうしたものかと考えていた。
「あの……ゼック先輩。そんなに緊張なさらないで下さい。わたしも困ってしまいます」
こちらにも緊張が移ってしまいそうなので、フィリアは普通にして欲しいとの意味を込めて話しかけてみる。
「そんなことを言われましても、男爵家のお嬢様ですし、何か無礼があったらと思うと……」
小さなテーブルを挟んで二人は向かい合って座っている。
昨日まで物置だったとは思えないほど、フィリアの部屋は綺麗に掃除が行き届いていた。
「お嬢様とは呼ばず、マースティンと呼んで下さい。無礼などとは思いませんから」
とフィリアが言うも、「それはそうですが、『剣聖』イアン様の御孫様に対して呼び捨てなど……」と言ってゼックは考え込んでしまった。
どうやら真面目な性格らしいが、真面目過ぎるようだ。
「そもそも、わたしは半年前に正騎士になったばかりですし、女性の従騎士となると自信が……」
と、まだ困惑し続けている。フィリアはこのままでは埒が明かないと思い。
「ゼック先輩! お願いですからわたしを従騎士にして下さい! わたしは意地でも騎士になりたいんです! ここでゼック先輩に断られると困るんです!」
とうとうテーブルに額を打ちつけんばかりに思い切り頭を下げた。
「あああ! わ、わたしが優柔不断なばかりにお嬢様にご迷惑を! わわ、わかりました! お嬢さ、いえ! マースティン。わたしの従騎士で良いのですか?」
と敬語が抜けないようだが承諾してくれた。
「もちろんです! ゼック先輩! 宜しくお願い致します!」
やった! とフィリアは思い。頭を上げて立ち上がり敬礼をしつつ返事をしたのだった。
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