十話 仮入団の時~一悶着?~
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翌日の昼に、フィリアは騎士団本部の一室へ移った。
仮入団者は、基本的に皆んな相部屋だ。
フィリアは僅か十二歳の少女だから、特別に個室が与えられたのだ。
それはシャロンからの要望でもあった。
そんな出来事がありつつも、荷物が運び終わった午後の三時頃。
中途半端な時間ではあったが休憩時間でもあるので、フィリアは見習い用の、自身の髪色に似た制服を渡された。
それに着替えると騎士団本部の広間に呼ばれて団長の隣に立つ。
フィリアは昨夜、シャロンから聞いた話を思い出していた。
――フィリアの仮入団が決まった直後、団長が昔からの知り合いである国家魔術師シャロンに、連絡――と言うか、相談に来たそうだ。
普段は西にある山で隠者のような生活をしているシャロンだが、月に一度、王城へ赴く為に山を下りて、行きつけの宿屋に泊まっていた。
そこへ団長が現れて、フィリアが父のアダムに渡された手紙を見せ、仮入団までの経緯を話し、『彼女の力になって欲しい』と頼み込んで来たそうだ。
あまりにも突拍子もない話だったので、シャロンは最初信じなかった。
『私を騙しているんでしょう?』
と不信感を隠さないシャロンに向かって団長は言ったそうだ。
『今語ったことも、この手紙も全て真実だ。わたしの首をかけても良い』
そこまで言われてしまっても、シャロンはまだ半信半疑だった。
元来、人を信じにくい性格も手伝って、フィリアが渡された手紙を読んでも、【アダム・I・マースティン】の署名を見ても、偽の手紙ではないか。と疑っていたのだ。
それでも昔からの知り合いであり、独立騎士団長アーサー・ヒューイの『首をかけても良い』の言葉を無下には出来なかった。
だから半信半疑のままでも助言をし、アトウッドに案内されフィリアの元までやって来て、ようやく全てが真実だと理解したのだ。
フィリアはシャロンから教えられた父の手紙の内容を知り、ある意味予想通りで、ある意味ここまで酷いのか。これはシャロンが怒り嫌悪するのは仕方がない。と痛感した。
手紙の内容を要約するとこうなる。
『娘が女のクセに剣術で息子に勝ったが、マースティンの名に於いて認める訳にはいかない。
故に独立騎士団で少々痛い目を見せて現実を知らしめてやってくれ。
多少の怪我をさせても傷物になっても構わない。
全てはマースティンの名を守る為なのだ』
何が「マースティンの名を守る為」だ。
父のプライドを守る為ではないか。とフィリアは嘆息したのだった――
フィリアは改めて広間を見渡す。
そこには遠征や地方に常駐している者を除いた、騎士団本部にいるほぼ全ての団員が集まっている。
団長からフィリアの仮入団が発表されると、誰も彼もがざわめき始めた。
「女?」
「まだ子供じゃないか」
「ベルモントがアッサリ負けた相手か?」
「意外と可愛いんだな」
「あの娘にベルモントが?」
「あんな子供で、しかも女が『仮入団』するのか?」
「団長は何を考えてるんだ?」
「だから物置部屋になってた場所を掃除させられたのか」
等々、様々な声が飛び交っている。
そこへ――
「黙れ黙れ黙れ! あんなの偶然だ! 俺は認めないぞ!」
昨日フィリアにアッサリ負けたルーク・ベルモントが耐えきれずに、叫び始めた。
が、すぐにアトウッドに羽交い締めにされ、今度は悲鳴を上げ始める。
「ギャーッ!」
どうやらアトウッドは羽交い締めからの関節技をかけているようだ。
二人の姿は他の団員達に遮られてよくは見えないが。
「痛い! 痛いです! 関節技は勘弁して下さ――」
そこに、ベルモントの悲鳴と懇願をかき消すように大声が響き渡る。
「静まれ!!」
独立騎士団団長アーサー・ヒューイの一喝だった。
団長はやや声のトーンを落としてから。
「ベルモントとマースティンの対決は、このわたしがしかと見届けた。彼女の実力は本物だ」
と言い切ったので、全員が即座に口を閉じたが――
「マースティン?」
「団長は今、マースティンって言ったよな?」
「マースティンってあの『剣聖』イアン様の……?」
と、一部の者がざわつき始めた。
そして、未だ納得のいかないベルモント。
「団長! もう一度チャンスを下さい! あのときは運が悪かっただけなんです!」
アトウッドに羽交い締めからの関節技を決められて、半泣きになりながらも訴えている。
「お前なぁ~! 仮とは言え、わたしの従騎士だろうがぁ~! 恥をかかすなぁ~!」
どうやらベルモントは、アトウッドの元で従騎士をやっているらしい。
フィリアは、怒りの青筋を額に浮かべているアトウッドの様子を見て「先輩は大変そうだなぁ」と、少々気の毒に思った。
従騎士とは、一人前の騎士の元で騎士としての作法や心構えや剣術を学ぶ、見習い騎士兼従者を指す言葉である。
この手の専門用語や知識は、『剣聖』と呼ばれる祖父のイアンや、兄のハリソンと弟のリアムから教えて貰ったのだ。
それにしてもだ。ベルモントのあの態度は頂けないとフィリアは思う。
騎士としてあまりにもみっともない。本物の剣を使った対戦及び戦場では、「運が悪かった」など言い訳にもならないからだ。
「見苦しいぞ! ベルモント!」
予想通り、団長に一蹴されて終わりだった。
「アトウッド。ベルモントを連れて行け」
刺すような視線でベルモントを見ながら団長は淡々と言った。
「はい!」
アトウッドは尚も騒ぐベルモントを引きずって、広間から去って行く。
「やかましいんだよお前は!」
「嫌だ! 放して下さい!」
「負けを認めろ!」
「嫌だー!」
「黙れ……こいぞ!」
「……て下さいぃぃ!」
などと言い合う二人の声が暫く聞こえていたが、やがて静かになった……。
「……ごほん! 一応、静かにはなったな。では、マースティン。自己紹介を」
仕切り直すように咳払いをして、団長はフィリアに自己紹介を促した。
「は、はい!」
フィリアは敬礼をし、やや緊張しつつも自己紹介を始める。
「セーフフィールド独立騎士団に『仮入団』致しました! フィリア・R・マースティンと申します! 若輩者ではありますが! 皆様、どうぞ宜しくお願い致します!」
と、フィリアが自己紹介を終えるが早いか。
「フィリア・『R』・マースティン!?」
「セカンドネームがあるってことはお貴族様!?」
「それよりやっぱり『マースティン』ってあの……!?」
「『剣聖』イアン様のお身内か!?」
「あんな小さな女の子がうちに『仮入団』なんだ、やはり――!?」
団長の一喝も忘れたのか、一斉に団員達が騒ぎ出す。
「あ、あの、わたし、自己紹介の言葉選び、間違えました……か?」
この国で、セカンドネームを名乗れるのは貴族階級のみなのだ。
「そうだな……い、いや、間違っていないが、ある意味間違えたような気もするな」
真面目な表情で答える団長だが、その声が微妙に震えているのをフィリアは気づいてしまった。
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