サマータイム
この学校にもサマータイムが導入された。通学のバスや電車で乗り遅れたり間違えたりして遅刻する生徒が増え、部活の時間も増えた。我が野球部にとっては強豪校みたいなナイター設備がないぶんより長く練習できるのでありがたいといえばありがたい。
元々サマータイムというのは明るい時間を有効に使うためにできた制度だったが、今ではただ拘束時間が伸びるだけの厄介な制度になってしまったように感じる。授業の時間は変わらないけど始業の時間が早いので、そのぶん朝練も早くなって寝る時間が少なくなる。疲れが残ったまま暑い夏の日に長時間練習すると、毎日必ず何人かはフラフラになって倒れる。しかし顧問の熱血教師はこれで強豪校とも互角に戦えるようになると張り切っている。
その熱血教師もこの高校の卒業生で、この土手のグラウンドを初めて使ったときに入学した、直属の先輩である。上下関係の厳しい野球の世界にあって、OBは神様であり、神様の言うことは絶対なのである。今年から母校に赴任し、噂によると来て早々野球部の顧問になりたいと直談判したらしい。そんな熱血教師が張り切るとどうなるのか。こうなるのである。
「集合!」
やけに通る声でへとへとになっている生徒を集めて、急なミーティングを開いた。
「この前な、ネットで安かったから簡易照明設備をいくつか買ったんだ。それが今日! なんと! 届きましたぁ! これでもっともっと練習できるぞぉ!」
うん、もうサマータイムもクソもないやん。
ガッハッハと笑う顧問の周りで、生徒たちは苦笑いをするしかなかった。




