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モンスターがあふれる世界になったので、好きに生きたいと思います 作者:よっしゃあっ!
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67.次のステージへ


 モンスターが世界に溢れて四日目。
 都心部では、いまだ混乱が続いていた。
 突如出現したモンスター、遮断された情報網、崩壊した建物。
 災害警報や避難誘導も発令されない中、人々は自分達で判断し行動するしかなかった。
 籠城か、行動か。

「―――避難所へ向かおう」

 そう思い避難することを選んだ人々。
 彼らは外にはびこるモンスターの脅威にさらされながらも、なんとか緊急避難所に指定されている場所へと向かった。
 四日目となった今では、役場や学校などの公共施設は、避難してきた人々が溢れかえっている。

 だが、そこから何かが進展している訳じゃない。
 大半の人々は今か今かと避難指示を待っているが、一向に政府、役人からの連絡はない。
 避難所へ行けば安全だ。政府や自衛隊が何とかしてくれるだろう。
 そう思い行動していた彼らの希望はいとも容易く打ち砕かれたのだ。

「どうして避難指示が出ないの?」
「政府は何をやっている?」
「お腹空いたよ」
「ここは本当に安全なのよね?」

 避難所に集まった人々は怯え、不安は広がっていた。

 なぜ政府は動かないのか?

 その理由は単純明快。
 前例がないからだ。
 B級映画でもあるまいし、モンスターがあふれ人を襲うなど、一体誰が本気で想定する?
 余りにも非現実的な現実。
 余りにもありえない事態。
 それでも、政府も最初はこの事態を打開すべく動き出そうとした。
 だが、事はそう上手く運ばない。
 対策本部を立てて事態の収拾を図ろうにも、法や責任の所在が邪魔をした。
 憲法第九条は?モンスターは自然災害になるのか?マニュアルの明文化は?
 超法規的措置?じゃあその責任は誰がとる?
 話し合いは遅々として進まず、そうしている間にも、市民はモンスターに襲われる。
 モンスターの被害を減らすために話し合っている筈なのに、モンスターの被害は増えるという矛盾。

 また通信機器が使えない事も拍車をかけた。
 メールもスマホも電話も使えない。
 連絡一つ伝えるのにも、全てが口頭伝達。
 上からの指示が、中間、末端、果ては離れた他の施設まで届くのに一体何時間かかると言うのか。 その間にも被害は増え続ける。
 いや、そもそも伝えに行く途中でモンスターに襲われ、情報そのものが遮断されてしまう事も度々あった。
 そしてまた時間が掛かる。被害が広がる。
 まさに負のスパイラルだ。

「もう嫌だ。僕は逃げるぞ」
「わ、私も」
「俺もだ。家族が居るんだ」
「そうよ、どうして私達がやらなきゃいけないの?」
「ま、待てよ!俺たちが居なくなったら誰が避難指示を―――」
「やりたい奴がやればいいだろ」
「ふざけるな!俺たちは公務員だぞ!国民の血税で―――」
「だったら、お前は残れ。俺は逃げる」

 初めのうちは義務的に職務を全うしようとしていた彼らも、時間が経つにつれ徐々にメッキが剥がれていった。
 恐怖に怯え職務放棄する者、家族と共に逃げようとする者、必死にそれを食い止める者、自身の判断で勝手に避難指示を行う者。
 こうなってしまっては上も下も関係ない。
 誰もが、自分だけでも生き延びようと思うのはごく自然な成り行きだろう。
 混乱は混乱を呼び、それは更なる混乱を招いていった。
 法は法として意味をなさず、それまでの道徳も価値観も全てが覆される世界。
 そんな中で―――。


≪経験値を獲得しました≫

 頭の中に響くアナウンス。
 それを聞きながら不良っぽい高校生柴田は後ろを向く。

「よし、こっちは倒した!おい、オッサン!そっちは?」

「だ、大丈夫だ!何とか倒したよ」

「よしっ」

 柴田はホームセンターを逃げのびた後、学校を目指して移動を続けていた。
 メンバーは全部で五人。
 クラスメイトが二人と、避難してきた中年男性一人と大学生一人だ。

「柴田君。今のゴブリンで、レベルが上がったんだが、ポイントはどう割り振ればいいのかな?」

「えーっと、オッサン、確か『冒険者』を選んでたよな。だったら、『肉体強化』をLV2に上げとけよ。一つレベルを上げるだけでも相当違うからよ」

「わ、分かった……」

 柴田の指示を聞き、スキルポイントを割り振る中年男性。
 その姿を見ながら、柴田は感心していた。
 人とは変われば変わるものだ、と。
 あれ程怯え、助けを乞うしか能が無かった中年男性が、今やいっぱしの戦力として彼らと共に行動している。
 中年男性の中でどんな変化があったのかは知らない。
 だが、少なくともこの状況下では、何よりもありがたい変化だった。

「……西野君たちは、今どのあたりだろうね?」

「さあな。だが、少なくとも死んじゃいねぇと思うぜ」

 西野は六花と一緒に逃げた筈だ。
 六花は、彼らのグループの中でも最も強かった。
 余程の事が無い限り生きている筈だ。

「とりあえず学校を目指そう。西野さん達も、そこを目指している筈だ」

 確証はないが、その可能性は高いと柴田は踏んでいた。
 オークの襲撃に遭う前、西野は新しい活動拠点を模索していた。
 それも人が集まりそうな場所を。
 なのでとりあえず彼らは、ここから一番近い学校を目指すことにした。

(無事でいて下さい、西野さん……)

 心の中で柴田は誓う。
 自分はもう二度と、仲間を見捨てない。
 絶対に彼らとともに生き延びて見せる。
 決意を胸に、彼は仲間と共に学校を目指した。



≪経験値を獲得しました≫

「あ、やっぱりー。ねー、おねーちゃん、こいつらぶっころせば、つよくなれるみたいだよー」

「おー、よしよし、よくやったのだ、弟よ。んじゃ、あとは姉ちゃんにまかせとけ!ぜーんぶ、ふっとばしてやるのだ!」

 そう言って少女は手をかざし、目の前のゴブリン達を焼き払った。
 その光景に、少年は大はしゃぎだ。

「おー!すげーぜ!さすが、ねえちゃん!」

「はっはっは、そうだろう、そうだろう!もっと褒めるのだ!」

 少年と少女は上機嫌でモンスターたちを倒してゆく。
 無邪気な子供の進撃は、彼らが疲れて昼寝をするまで続いた。


≪経験値を獲得しました≫

「隊長、周辺のモンスターの掃討完了しました」

「御苦労」

 仮設テントの中で、若い自衛隊員は、初老の男性に報告を行う。

「避難民は指示通りの場所へ誘導中です。……しかし本当に良かったのですか?」

「何がだ?」

「いえ、その……上の指示を待たずに、勝手に動いて……」

「お前の言いたいことは分かる。だが、その上はこの四日間、何をしていた?」

 隊長と呼ばれた初老の男性は、手に持ったコーヒーカップをテーブルに置く。

「彼らの指示を待っていては全てが手遅れになる。現場を受け持つのは自衛隊(我々)だ。動かぬ正義など何の意味も無い。我々は一人でも多くの国民を救わなければいかんのだ」

「ですが……」

「いいか、これは『命令』だ。君は現場の最高責任者である私の『命令』に背くのか?」

 この初老の男性は、現在この避難所での最高位に位置する人間だ。
 そして『命令』されたのであれば、彼らは従わざるを得ない。

「っ……申し訳ありません、隊長……」

 その意図に、若い自衛隊員は気付かぬはずがなかった。

「分かればいい。偵察に出していたヘリはどうなった?」

「三機の内二機は帰還しています。ですが……県境に向かわせた一機が、未だ帰還していません」

 その報告に初老の隊長は渋い顔をする。
 県境に向かわせたのはメンバーは、全員がモンスター討伐経験のあるスキル持ちだ。
 それが戻らない。それが何を意味するのか。
 分からない彼ではない。
 彼はすぐさま、隊員たちを招集するよう命じた。


≪経験値を獲得しました≫

 頭の中に声が響く。
 だが気にする事なく、『彼』は物言わぬ亡骸となった少女を見つめる。
 たった今、彼が首の骨を折り殺めた少女だ。
 彼は満面の笑みを彼女へこう言った。

「ありがとう、感謝するよ」


 モンスターがあふれる世界となって四日目。
 主だった者たちは、既に頭角を現し始めていた。

 そして―――。

「―――よし、それじゃあ、行くか」

「ですね」
「わん」
「……(ふるふる)」

 準備を整え、彼らも動く。
 舞台は、人とモンスターが入り乱れる都心部へと移る。
 
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