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モンスターがあふれる世界になったので、好きに生きたいと思います 作者:よっしゃあっ!
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68.都心部へ


 さて、それじゃあ都心部に向かうか。
 と言っても、徒歩じゃない。
 それじゃ時間かかりすぎる。

「これに乗って移動しましょう」

 俺はアイテムボックスから『ソレ』を取り出す。

「これって……バイクですか?」

「ええ、これなら小回りも利くし、移動も早く済みます」

 回収した自動車やバイクは他にもあるが、キー付きでしかもパンクや損傷が少ないモノを選んだ。
 これも多少は傷ついているが乗る分には問題ないだろう。
 え、盗品?今更でしょ。

「でも、その……大丈夫でしょうか?」

「問題ありませんよ」

 イチノセさんの懸念は分かる。
 バイクの『音』につられて、モンスターが集まって来ないか心配しているのだろう。
 でも、大丈夫。その点は問題ない。
 俺はバイクのエンジンをかける。

「え?」

 予想通りイチノセさんは驚いてくれた。
 何せバイクの『音』が驚くほど小さかったからだ。

「俺も気付いたのはついさっきなんですけどね。スキル『無音動作』は、俺が触れてる物にも、その効果が波及するみたいなんです」

 それに気づいたのは、さっきアカが擬態した包丁で家具を斬った時だ。
 最初はアカの性能がいいのだと思ったが、試し切りを続けている内に違和感を感じ、別のスキルの効果だと気付く事が出来た。
 『忍者』になった時に、スキルの検証は一通り済ませていたが、これは完全に見落としていた。アイテムボックスや『忍術』、『投擲』が攻撃主体だから気付きにくかったって事もあるけど。
 ちなみに触れてる物に対しての効果は、俺自身より幾分落ちる。
 こんな感じに、音が凄く静かになる程度になってしまう。

 それでも、このメリットは大きい。
 スキルと併用すれば、モンスターにも気付かれにくいし、体力も温存できる。
 それに気づかれたとしても、足の遅いモンスターならそのまま逃げ切れることだって出来る。
 少なくともシャドウ・ウルフぐらいのスピードなら振り切れる。
 ガソリンも大量にあるし、燃料に関しても問題ない。

「いえ、そう言う事ではなく……」

「ああ、もしかして運転技術の方ですか?そっちも問題ないですよ」

 先程のレベルアップで獲得したSPで、新たにスキル『騎乗』を習得したからな。
 この『騎乗』は運転にも適用されるらしく、バイクであってもその性能をいかんなく発揮できる。合体はしないけどね。

 ちなみに、さっきのレベルアップで手に入れたポイントは既に割り振ってある。
 JPの方は、『忍者』と『影法師』をLV5に。
 SPの方は、新たに『騎乗』、『交渉術』を取得。『騎乗』はLV2に、そして『忍術』をLV6に、『無臭』と『無音動作』をLV5に上げた。
 これで足の遅い敵、鼻の利く敵どちらにも対応出来る……と思う。
 あと『交渉術』に関しては、ほら……可能性って大事じゃん?

 バイクにまたがり具合を確かめる。
 うん……問題ない。これならいけそうだ。

「アカ、分裂してヘルメットに『擬態』してくれ。モモは『影』に」

「わん」
「……(ふるふる)」

 これで顔も見られない。
 モモは陰に潜んでいるから、移動の心配もない。
 アカが擬態したもう一個のヘルメットを、イチノセさんに投げる。

「それじゃあ、イチノセさん。出発しましょう」

「…………」

 だがイチノセさんはヘルメットを持ったまま固まっていた。
 どうしたんだろうか?

「あ、もしかして、男性の後ろに乗るのは、やはり抵抗がありますか?」

 そこは我慢してもらうしかないんだけど……。
 なるべく感触は意識しないようにするので。

「いえ、そうではなく……」

 気まずそうにイチノセさんは目を逸らす。

「……私、乗り物に乗るとすぐ吐いてしまうんです」

「……」

 そっちかー……。
 それはどうしようもないよなぁー……。

「本当にすいません……」

 心底申し訳なさそうにイチノセさんは頭を下げる。

「いえ、まあそう言う事情であれば、仕方ありませんよ」

 無理やり乗って、吐きながら移動してもアレだし。
 匂いで追跡される危険もあるし。

「……(ふるふる)」

 するとイチノセさんが持っていたヘルメットに擬態したアカが震えた。
 自分を被れば問題ない、そう言ってる様だった。
 まさか、アカ……お前、イチノセさんが吐いたゲロを全て受け止める気か?

「……(ふるふる)」

 イエス、と言う事らしい。
 まあ、アカにしてみたらゲロなんてただの食事に過ぎないのだろう。

『わん』

 更に影に潜んだモモが、『影』でシートベルトの様な物を作り出す。
 これでイチノセさんを固定すれば問題ないよ、とでも言うように。
 この二匹、イチノセさんを引越しの荷物か何かと思っているのだろうか?
 いや、純粋に気遣っての行動だと思いたい。

「……イチノセさん。モモやアカがここまでしてくれると言っているんです。少しだけ、頑張ってみませんか?」

 俺がそう言うと、イチノセさんは迷いに迷った末、頷いてくれた。

「………………はぃ」

 それはとてもとても頼りない小さな声だった。
 だが言質取った。

 よし、出発するか。
 イチノセさんを後ろに固定し、俺たちは都心部を目指して出発した。

 その後、乗り物酔いが余程きつかったのか、途中でイチノセさんは『乗り物酔い耐性』を獲得したらしい。結果的には良かったと言えるだろう。
 ちなみにゲロは、アカが全部引き受けてくれた。
 実に頼りがいのあるスライムである。



 それから十数分後。
 俺たちは都心部へとやってきた。
 人の気配がなく、なるべく目立たない場所へバイクを止める。

「この辺りで一旦降りますかね」

「……はイ……」

 ヘルメット越しでもイチノセさんの顔色は真っ青だなとすぐ分かった。
 ふらつきながらもバイクを降りる。
 それでもしっかりと銃を担いでいるのは流石だと思った。
 イチノセさんが下りたのを確認して、バイクをアイテムボックスへしまう。

「……それで、先ずはどこへ向かうんですか?」

「そうですね……この周辺のスーパーやコンビニを回って、物資を回収しておきましょうか。それと、近くに高校が在った筈なので、そこで情報収集しましょう」

 こそっと隠れてね。
 俺やイチノセさんのジョブやスキルなら建物内でも問題なく行動することが出来る。
 むしろイチノセさんは、建物内の方が本領を発揮できるしな。

「高校……」

「ええ、俺の母校です。イチノセさんは―――あっ」

 言ってしまった後で、失言だと気付いた。
 彼女は引き籠りだ。それに高校を中退したと言っていた。
 あまり思い出したくはないだろう。

「あ、お気遣いなく。私もあそこの高校に通ってました。まあ、嫌な思い出しかありませんでしたけどね……」

 すぅっとイチノセさんの顔に影が差す。

「学校ですか……きっとモンスターの襲撃に遭ってボロボロになってるんじゃないでしょうかねぇ。それはそれで胸がすく気がします……。というか、むしろ壊れていてほしいですねぇ。壊れればいいんですよ、あんな場所。壊れろ、壊れろ、壊れてしまえ。学校なんて嫌い。大嫌い。私を助けてくれなかったクラスの奴らもみんな嫌い。みんな学校と一緒に壊れちゃえばいいんですよふふふふ、あはははははははは」

「お、落ち着いて下さい、イチノセさん!」

 肩を揺らすと、イチノセさんは正気に戻った。

「あれ……?すいません。私、また変なスイッチ入っちゃって……」

「あ、いえ、大丈夫ですよ……」

 いや、全然、大丈夫じゃないけど。
 やっぱこの子、ちょっと病んでるよ。
 闇が深い……。

「あの、お辛いようでしたら別の場所にしますか?」

 トラウマが刺激されるような場所にわざわざ行かなくても良いだろう。
 別に近いってだけで、他に理由はないしな。

「問題ないです」

 だがイチノセさんはきっぱりと俺の申し出を断った。

「いえ、でも―――」

「問題ないです」

「あ、はい」

 押し切られてしまった。

「それに……一人だけ」

「へ?」

「……一人だけ、仲のいい友達は居ました。死んでなきゃ、いいですけど……」

「そうですか」

 仲のいい友達、か。
 俺には居なかったな。
 それに関しては、ちょっとだけ羨ましい。

「生きていればいいですね、その子も」

「……はい」

 本心からそう言うと、イチノセさんは顔を逸らしながらも少しだけ微笑んだ。
 こうして、物資調達の後は学校へ向かう事になった。
 
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