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モンスターがあふれる世界になったので、好きに生きたいと思います 作者:よっしゃあっ!
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66.アカの進化


 進化が終わったアカをみんなで見つめる。

「変わってないな……」

「変わってませんね」

「わん」

「……(ふるふる)」

 その見た目は、以前とほとんど変わっていなかった。
 赤い半球体上のスライムだ。
 モモと同じように見た目が変わらない進化なのだろうか?
 ステータスでチェックしてみる。

アカ
フェイク・スライムLV1

 種族名が変わっていた。
 どうやら、アカはフェイク・スライムというモンスターに進化したらしい。
 フェイク―――偽物や模造品って意味だよな。
 ミミックの魔石を取り込み、『擬態』の能力を駆使してきたアカらしい進化と言えるかもしれない。
 『擬態』の能力が強化されたのならば、俺たちにとっても心強いな。
 両手でアカを挟んで持ち上げる。

「進化おめでとう、アカ。これからも期待してるよ」

「……(ふるふる)」

 ―――がんばる。
 そう言っている気がした。
 気合を入れてふるふるするアカの姿にちょっとだけほっこりした。


 さて、進化したアカの能力も気になるが、その前にどこか別の場所に移動しよう。
 ここじゃ目立つし、もう少し落ち着ける場所に移動したい。

 俺たちは休憩を取る為、近くの建物へ移動する。
 ショッピングセンターの中に入らなかったのは、イチノセさんへの配慮だ。
 イチノセさんは『ストレス耐性』を持ってない。
 あの死体の山を見るのは、止めた方がいいだろう。
 実際、ちらっと話をしただけでも、吐きそうになってた。
 イチノセさん、その辺は普通の精神力なんだよなぁ。
 なので、適当に近くの建物へ入る。

「多少屋根や壁が壊れてますが、休息を取る程度には問題ないですね」

「ええ」

 吹き抜けとなった天井から覗く青空を眺めながら昼食の準備を進める。
 何にしようか?
 うーん、カレーでいいか。レトルトのヤツ。
 お湯でレトルトカレーと、サ◯ウのご飯を温める。

「……いい匂い」

 カレーの香りにイチノセさんもウキウキ顔だ。
 やっぱカレーはみんな好きだよね。
 するとイチノセさんのお腹から、くぅ~と催促の声が聞こえた。

「……」

 イチノセさんは気恥ずかしそうに顔を逸らし……あ、元から逸らしてましたよね。
 ただちょっと顔と耳が赤い。ふっ。

「はい、どうぞ。あ、調味料はお好みで入れて下さい」

 アイテムボックスから適当に調味料も取り出す。
 レトルトでも、胡椒やガラムマサラを入れるだけで、だいぶ味が違うんだよな。
 ちなみに俺はガラムマサラとすりおろしたショウガを加えるのが好きだ。
 ショウガはチューブではなく、下ろしたてを使うのがこだわり。
 この風味が好きなんだよ。

「あ、じゃあすいません。遠慮なく……」

 ほう、イチノセさんはソースか。
 中々の強者。こやつ、出来る。

「わん!」

 モモもドッグフードを美味しそうに頬張る。
 アカは……近くの廃材を適当に食べていた。自由だな……。

「はふ……やっぱりカレーは美味しいですね」

 だよね。スプーンが進む、進む。
 あ、そう言えば、誰かと一緒に食事をするなんて久しぶりだな。
 家に帰れば一人だし、仕事中も誰かと飯を食うなんて無かった。
 モモが一緒だったし、別に寂しいとは思わなかったけど―――。

「……意外といいもんだな」

「え?」

「いえ、何でもないですよ」

 適当に誤魔化して、俺は食事に集中することにした。
 うん、カレー美味い。



 さて、食事を終えたのでアカの能力をチェックするか。
 間違いなく『擬態』の能力が強化されてると思うんだけど……。

 アカにどんなことが出来るようになったのか訊ねてみる。
 すると、アカは体を震わせ、変化した。
 これは―――。

「……『武器』か?」

 俺が使ってる『オークの包丁』。
 アカはそれに『擬態』した。
 実際手に持ってみるが、なんら違和感がない。
 まるで本物の様だ。 このまま使えるのか?

「……(ふるふる)」

 アカが自分を使ってみろと催促してくる。
 なので、その辺に適当にあった家具などを切り裂いてみた。
 スパッと切れた。

 おお、凄いな。
 本物となんら変わらぬ……いや、本物よりも切れ味良くないか、これ?
 というか―――。

「アカ、お前、いつの間に『オークの包丁』なんて食べたんだ?」

 アカは自分が取り込んだ物にしか『擬態』出来なかった筈だ。
 進化して変わったのだろうか?

「…………(ふるふる、ふるふる)。………(ふるるふるふる)」

 ふむふむ、なるほど。
 分からん。

 いや、まあホントは何となく言ってる事は、分かるんだけどね。

 アカが言うには、俺をモンスターの攻撃から防ぐ為、全身を包み込んだ時に、俺の持っていた武器の形状や切れ味を把握していたらしい。
 進化したことで、『擬態』の能力が強化されたから、直接取り込まなくても自分のイメージで、ある程度は『擬態』出来るようになったと、そう言う事らしい。
 更にイメージ力次第では、刃を鞭の様に変化させたり、柄を伸ばして槍の様に変化させることも可能だという。

 ……なに、この子優秀すぎない?
 ちょっとビックリだよ。

「……チートスライム」

 イチノセさんがボソッと呟く。
 うん、俺も同じこと思った。

「……!(ふるふる)」

 ていせいして!とアカは激しく抗議した。ぷんすか!
 その姿に、ちょっとほっこり。

 ちなみに擬態できる幅は広まったが、それでもまだ『生物』には擬態できない様だ。
 まあ、そこまで出来たらホントにチートだしな。
 でも武器になれるのは本当に素晴らしい。
 防御能力といい、今後アカはますます頼りになるだろう。



 さて、アカの能力も確認したし、次は今後の方針を決めようか。

「……モンスターを狩って、レベリングするんじゃないんですか?」

 相変わらずイチノセさんは、ガンガンいこうぜ作戦らしい。
 引き籠りで人見知りなのに、なんでそっち方面は積極的なんでしょうかね?

「それはそうなんですが、それと並行して物資と情報も集めた方がいいと思うのです」

 食べ物、飲み水、安全な寝床。
 モンスターのあふれるこの世界では、どれも喉から手が出る程に貴重で重要な物だ。

 遠距離火力のイチノセさんが加わり、パーティーのバランスも良くなった。
 先程の戦闘から考えても、上位種やネームドクラスが現れない限りは、そうそう遅れは取らないだろう。
 ならばそれ以外の部分に目を向けても良い筈だ。

 もう世界が変わって四日目。
 ある程度のグループないし集団が形成されていてもおかしくはない。
 西野君たちみたいに。

 集まってそうなのは、学校や役場、運動公園などの緊急避難所か。
 そう言ったとこの人たちから情報を集める。
 それに政府や自衛隊が、どういう動きをしているのかも気になる。
 結局、ハイ・オークに全滅させられた自衛隊たちが、何しにここまで来たのか分からないままなのだし。
 まあ、こんな世界でまともに動ける政治家が居るのかはかなり疑問だけどな。
 それでも調べておいて損はないだろう。

「……でも、クドウさん。物資調達ならまだしも、私達にまともな交渉って出来ますかね?」

「うぐ……」

 ホント、痛い所を突くよな、この子。
 いや、それは分かってるよ。
 嫌って程に分かってるよ。
 俺やイチノセさんには、絶対的にコミュニケーション能力が足りてないって事は。

 だからこっそり探すんだよ。
 それに俺には未収得だが、『交渉術』ってスキルもある。
 これを手に入れれば、対人関係も前進する……はず。

「イチノセさん、頑張ればなんとかなります。可能性って素敵な言葉だと思いませんか?」

「でもゼロにいくら可能性を掛けたところで、答えはゼロなんですよ?」

 止めてよ、そういう事言うの。傷つくじゃん。
 あ、言った彼女も沈んでる。
 これ自爆攻撃だ。
 モモやアカの視線が辛い。

「と、とりあえず都心部に向かいましょう。で、途中途中でモンスターを狩りながら、生存者たちの集まっていそうな場所を探すんです」

 そして影からこっそり盗み聞きで情報収集。
 イチノセさんは人見知りだし、俺も対人相手の腹芸は苦手だ。
 これが一番無難だろう。
 イチノセさんも同意してくれた。

 ……あれ?結局これって、今までとやってる事同じじゃないか?

 いや、気にしたら負けだ。
 それにしても、都心部か。
 会社の同僚たちは、今頃どうしているのだろうか?
 生きているのだろうか?それとも死んでいるのだろうか?

「……」

 まあ、割とどっちでもいいか。
 あんまし深い付き合いはしてなかったし。
 どうせ会う事も無いだろう。

 さて、それじゃあ出発するか。
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