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モンスターがあふれる世界になったので、好きに生きたいと思います 作者:よっしゃあっ!
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55/58

55.幕間の彼ら


「……ん?」

 薄暗い室内で、六花は目を覚ました。
 ズキズキと体が痛む。

「あれ……?どこ、ここ?」

 毛布が掛けられている。
 布団?どうして?
 頭を押さえながら、ゆっくりと体を起こす。

「えーっと……?」

 どうして自分はこんな状況に居るのだろうか?
 六花はそれまでの事を思い出す。
 そうだ、確かホームセンターがオークの集団に襲われたのだ。
 勝てる見込みは薄く、六花たちはホームセンターに火を放ち、避難民たちを囮にして散り散りに逃げた。
 割と下種な手段だとは思うが、生き延びるためだと彼女は割り切った。
 その後、西野と共に傷付いた体を引きずる様にして雨の中を走りながら、少し離れた公園にたどり着いて、それで―――。

「……どうなんたんだっけ?」

 その後が思い出せない。
 元々『スキル』の所為で戦闘中の記憶は曖昧なのだが、今回は輪をかけてひどい。
 所々の記憶が抜け落ち、身体もボロボロだ。
 自慢のサイドテールの髪も酷い事になっている。

「―――気が付いたか?」

 声がした。
 視線を向けると、椅子に座った西野が自分を見ていた。

「……ニッシー?」

「他の誰に見えるんだよ?」

「んー、お化けとか?」

「勝手に殺すなよ。まだ生きてるよ、ほら足があるだろ」

「なはは、そうだね」

 六花の独特の空気感に、ニッシーこと西野は苦笑してしまう。

「んで、ここってどこなん?私、ニッシーと一緒にどっかの公園まで逃げてたとこまでは覚えてるんだけど……」

「俺も似た様なもんだよ。気が付いたらここに居た。……誰かが俺たちをここまで運んでくれたらしい」

「誰かって?」

「さあな。分からないよ」

 西野も最後に記憶にあるのは、雨に打たれて公園まで辿り着いたところだ。
 その後、誰かに会った様な気もするが思い出せない。

(そもそも人じゃなかったような……?犬?いや、どうだったか……)

 ともかく、どこの誰かは知らないが助かった。
 それも包帯や傷薬、栄養ドリンクまで置いていってくれてるではないか。
 至れり尽くせり過ぎて、逆に何かあるんじゃないかと勘繰ってしまった程だ。
 栄養ドリンクを六花に差し出す。
 六花はそれを一気に飲み干した。

「とにかく、今は助かった事に感謝すべきだろう。幸い、モンスターの追っ手も居ない様だし」

「そだね。というか、この包帯もその人がやってくれたのかな?」

 制服やスカートをめくり、雑にまかれた包帯を見つめる六花。
 その行動に、西野は思わず目を逸らした。

「っ……少しは他人の目を気にしろ、ばか」

「ん?ニッシー、なんか言ったー?」

「……なにも」

 少し頬が朱くなった。
 それよりも、と西野は誤魔化す様に言う。

「これからどうするかを考えなきゃな……」

「どうするって……みんなを探すんじゃないの?」

「どうやって?スマホが使えないこの状況じゃ、みんなを探すなんて不可能に近いぞ?」

 連絡を取り合う手段が無いのだ。
 足で地道に探すしかない。それも危険極まりないモンスターの闊歩するこの世界でだ。
 連絡を取り合う『スキル』があれば、話は別だろうが、あいにくと西野も六花もそんな便利なスキルは持っていない。

「じゃあ、どうするの?」

「予定通りに行動しよう。学校を目指す。上手くいば、そこで他の皆とも落ち合えるはずだ」

「うぇ……」

 『学校』。
 その単語を聞いた途端、六花は露骨に顔をしかめる。

「ねえ、ニッシー。別に役場の方でもいいんじゃないの?」

「学校の方が近い。そっちの方が効率がいいだろ?」

「……」

「言いたいことは分かる。でも、今は……」

「分かってるよ」

 むぅーと、六花は頬を膨らませる。
 彼女は学校が嫌いだ。
 学校は六花から大事な友達を奪った。
 嫌な思い出しかない場所だ。
 でも、今は行くしかない。
 六花は無理やり納得する。

「柴っちや、大野んも無事だと良いなぁ……」

「きっと生きてるよ。大野も柴田も、他の皆も。だから俺たちも信じて進もう」

「……そうだね」

 親しい友の姿を思い浮かべて、六花は寂しげに笑う。

「それじゃあ、行こうか。もう少し休んでいたいけど、時間が惜しい」

「りょーかい」

 目指すは都心部にある彼らの母校。
 仲間の生存を信じて、二人は前へ進む事を決めた。




 そして―――。

≪経験値を獲得しました≫
≪オオノ ケイタのLVが4から5に上がりました≫

≪一定条件を満たしました≫
≪スキル『同族殺し』を獲得しました≫

 頭の中に声が響く。
 眼鏡をかけた学生、大野は震えていた。
 目の焦点は合っておらず、唇はカサカサに乾ききっていた。

「ハァハァハァハァハァ……ち、違っ……わ、わざとじゃないんだ。僕は……僕はそんなつもりで……」

 うわごとのように呟きながら、彼は目の前に転がる『それら』を見つめる。
 『それら』は彼と同じ学生服を着ていた。
 数は三。
 動かない。目に光は無い。
 赤い水たまりが出来ている。
 水たまりはどんどん広がってゆく。

「そ、そうだよ。コイツらが悪いんだ……。僕の忠告を聞かないで勝手に行動して……ぼ、ぼぼ僕は、あの時ちゃんと逃げようって言ったのにっ……!」

 ホームセンターから逃げのびた後、彼は当てもなく街をさまよっていた。
 雨に濡れながら、必死に西野や柴田を探している途中に、大野は生協で見捨てた学生たちに再会した。
 どうやら、彼らも無事に生き延びていたらしい。
 ―――良かった、無事だったんだ。
 大野は再会を喜んだのだが、彼らにとってはそうではなかったらしい。
 自分を見た瞬間、彼らは鬼のような形相で迫ってきた。

「さ、逆恨みも良い所だよ……。な、なにが『お前の所為で死にそうになった』だ……ふざけるなふざけるなふざけるな」

 彼の手にはサバイバルナイフが握られていた。
 血がべっとりと付着している。
 自己防衛のつもりだった。
 反撃しなきゃ、殺される。
 そう思った。
 だから、刺した。

 彼の方がレベルが高かった。
 攻撃の『スキル』も持っていた。
 だから、殺した。
 簡単に、殺せて、しまった。
 殺して―――殺すつもりなんて―――違う、違う、違う違う違う!

「うっぷ……おぇぇぇ」

 吐いた。
 気持ち悪い。
 震えが止まらない。
 腹の底から言い様の無い不快感と罪悪感が押し寄せてくる。

「僕は悪くない、僕は悪くない、僕は悪くない、僕は悪くない、僕は悪くない、僕は悪くない、わるくないわるくないわるくないわるくない……」

 ブツブツと自分の正当性を主張する。
 そうしないと精神が持たなかった。

「そうだ、探さなきゃ。西野君、柴田君、六花……。みんなを探さないと。全くどこに居るんだよ。早く、早く見つけないと……はは、ははは……」

 身体に付いた血を拭う事も無く、その事にも気付いていない。
 そう、そうだ。みんな、みんなに会うんだ。
 みんなと再会すれば、みんなと一緒なら自分はきっと大丈夫だ。
 その筈だ。そうに違いない。

「だから、だから大丈夫……大丈夫なんだ……」

 その声は、誰の耳にも届くことなく、彼はふらふらと歩き出した。




 スキル:『同族殺し』
 自らの同族を殺した者が稀に得るスキル。
 同族を殺した時のみ、経験値が増加する。
 また同族と戦う時のみ、ステータスに補正が掛かる。
 このスキルを得た者は『恐怖耐性』、『ストレス耐性』を獲得することが出来ない。
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