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モンスターがあふれる世界になったので、好きに生きたいと思います 作者:よっしゃあっ!
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53/58

53.叫びを超えて


「ふー……」

 呼吸を整え、現在のステータスを確認する。

クドウ カズト
レベル13
HP :82/100
MP :13/13
力  :83
耐久 :79
敏捷 :224
器用 :193
魔力 :0
対魔力:0
SP :3
JP :6

職業 
暗殺者LV9
狩人LV6

固有スキル 
早熟

スキル
無音移動LV5、暗視LV3、急所突きLV3、気配遮断LV6、鑑定妨害LV3
索敵LV7、望遠LV3、敏捷強化LV7、器用強化LV4
観察LV8、聞き耳LV4、
肉体強化LV9、剣術LV4、ストレス耐性LV6、恐怖耐性LV7、毒耐性LV1、麻痺耐性LV2、ウイルス耐性LV1、熱耐性LV1、あおり耐性LV1、HP自動回復LV1、敵意感知LV6、危機感知LV9、潜伏LV2、逃走LV4、防衛本能LV1、アイテムボックスLV10、メールLV2、集中LV3

パーティーメンバー
モモ
暗殺犬 Lv2

アカ
レッドスライムLV7


 HPが減っている。
 先程受けたハイ・オークの打撃。
 たったあれだけの攻撃で、HPの2割近くが持って行かれた。
 まともに攻撃を受ければ間違いなく死ぬな。

「でも……やるしかないよな……」

 今の俺たちのスキル、力。
 その全てを出しきらないと、コイツには勝てない。
 武器を構え、目の前のハイ・オークを睨み付ける。
 先ずは確かめる。

「行くぞおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 叫びと共に俺は走った。
 俺の覚悟を感じとったのか、ハイ・オークは笑った。
 凶悪に、狂喜を乗せて。

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 何の迷いもなく俺たちは前に。
 ハイ・オークの振りかざした肉切り包丁が眼前に迫る。
 『危機感知』、『敵意感知』が警鐘を鳴らす。
 怖い、怖い!
 でも眼を逸らすな!
 『観察』しろ!アイツの動きを!刃の軌道を!
 『剣術』を、『防衛本能』を駆使して、刃を“逸らせ”。

「うおおおおおおおおおおおおお!」

 甲高い音と共に、ハイ・オークの首切り包丁は空を切り、地面に突き刺さった。
 やった。何とか攻撃を逸らすことに成功した。

「!?」

 ハイ・オークは目を見開く。
 驚き、驚愕。
 そこに出来たほんの僅かな隙が、ヤツの動きを阻害する。

 ここからだ。
 俺はアイテムボックスから取り出した『物』をハイ・オークに投げつける。
 至近距離からの投擲。
 さあ、どうする?

「ゴァァアアアアッ!」

 ハイ・オークは叫び、そして『避けた』。
 強引に身体を捻り、地面に突き刺さった肉切り包丁を引き抜く。
 その隙に、俺は奴から距離をとる。

「やっぱり、そうか……」

 その行動に、俺は自分の予想が正しかったのだと確信する。
 『違和感』が形になる。
 リスクを冒してでも、確認を取った甲斐があった。
 俺は距離を保ったまま、ハイ・オークを見つめる。

「そもそも、おかしいと思ったんだ」

「ゴァ……」

 言葉が通じているかは分からない。
 だが、ハイ・オークは俺の声に耳を傾けた。

「どうしてあの時、お前は俺たちを見逃したんだろうって……」

 俺は呟く。
 モモやアカに説明するように。
 自分自身に確認を取る様に。

「お前は積極的に人間を狩ってた。ここに立て籠もってた人達も自衛隊も皆殺しにした。なら、おかしいじゃないか。どうして、彼らは殺されたのに俺たちは見逃された?生き残る事が出来た?」

 自分で口にしてみると、その不自然さがよく分かる。
 命が助かった事で深く考えなかったが、よくよく考えればこれはおかしかった。

「俺たちだけじゃない。西野君たちもだ」

 彼らもまたハイ・オークの襲撃に遭いながら生き延びた。
 最初はコイツの気紛れだと思った。
 俺達が弱かったから、相手にする程の相手ではなかったから見逃したのだと、そう思った。

「でも、違った。お前の気紛れなんかじゃなかったんだ」

 理由があったんだ。
 コイツが俺たちを見逃した―――いや、見逃さざるを得なかった理由が。

 俺は、ハイ・オークの頭上にそれを放つ。一つだけでなく、何個も、何十個も。
 出来るだけ高く、出来るだけ広く、アイテムボックスの効果範囲ギリギリまで放つ。
 そうでなければ避けられてしまう。

「これが―――」

 俺は空に向けて人差し指を突き出す。
 釣られてハイ・オークが上を見上げた。
 その瞬間―――ヤツの表情が変わった。
 奴はすぐに逃げようとしたが、間に合わない。

「その答えだ」

 コンマ数秒、『ソレ』は俺やハイ・オークに降り注いだ。
 冷たい水滴が体を濡らした。
 俺が頭上に放った物。
 それは『水』だ。
 溜めこんでいた何十本ものペットボトル。
 ふたを開けた状態で頭上に放てば、それは即席の『雨』に変わる。

「グォ……ォォォォオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

 効果はてきめんだった。
 水を浴びたハイ・オークは全身から煙を上げ苦しみ始めたのだ。
 水と共に大量のペットボトルも地面に落ちる。

 これが、コイツが俺たちや西野君を見逃した理由。

 スライムが物理攻撃に強い反面、火に弱いように。
 シャドウ・ウルフが嗅覚やスピードに優れる反面、物理防御が低いように。
 オークにも、ちゃんと『弱点』があったんだ。

「まさか、それが『水』だなんて、思いもしなかったけどな」

 きっかけは、さっきの攻防だ。
 俺が破れかぶれに放ったアイテムボックスの質量攻撃。
 コイツは、岩や廃車は易々と弾いたり蹴り飛ばしたりしていたのに、何故かタバスコ球やペットボトルは『避けて』いた。
 嗅覚が優れてるから、『タバスコ球』を避ける理由はまだ分かるが、ペットボトルを避ける意味は分からなかった。
 わざわざ避ける必要すらない物を、なぜ避けたのか?

 それが、俺の感じた『違和感』。
 その違和感を感じた瞬間、俺の中にあった疑問が繋がった。

 どうして俺たちは見逃されたのか?
 どうして西野君たちは逃げきれたのか?
 それは俺たちが弱かったからでも、雨で匂いが辿れなかったからでもない。

 ただ単純に、雨に濡れるのが嫌だったんじゃないかって。

 それを確かめる為に、俺はさっきアイツの刃を避けた瞬間、『ペットボトル』を投げつけた。
 武器としてはほとんど機能しないそれを、アイツはバランスを崩してまで避けようとした。

 それで確信した。
 コイツの弱点は『水』なんだと。

 その結果が、これだ。
 でも……まさか、ここまで効果が出るなんて思わなかった。
 即席の『雨』によって、ハイ・オークの肌は爛れ、まるで硫酸を掛けられたかのように痛々しい姿になっていた。
 強力な膂力と叫び声、硬い筋肉の鎧を持つ反面、水に触れただけでダメージを受ける極端な種族。
 それがオークというモンスターだったんだ。

「モモ、今だ!」

「わん!」

 好機。この機を逃すな!
 モモは『影』を、俺はアイテムボックスの質量攻撃を、次々とハイ・オークへ繰り出す。

「グオオオオオオッ!?」

 モモの『影の槍』が突き刺さり悲鳴を上げる。
 どうやら水にぬれた事で防御力も落ちているみたいだ。

 俺は再びアイテムボックスからペットボトルを取り出し、『雨』を降らせる。
 ハイ・オークが悲鳴を上げる。
 全身から湯気の様なものが立ち昇り、至る所から出血している。
 だが、それでも―――

「ッ……!マジかよ、コイツ……!」

 ハイ・オークは嗤っていた。
 心底楽しそうに。
 この状況こそ、己の望んだ状況だとでも言うように。

「―――ァァァアアアアアアアオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!」

 ハイ・オークは叫ぶ。
 次の瞬間、ハイ・オークの肉体が変化する。
 赤銅色だった肌は赤黒く変色し、瞳の黒い部分は赤へ、白めの部分は黒へ。

「これは……まさかっ!?」

 これと似たような状態を俺は見たことがある。
 西野君と一緒に居た女子高生―――彼女の戦っていた時の姿にそっくりなのだ。

「『狂化』持ちかよ……!」

 詳細は分からないが、多分肉体を強化するスキル。
 本当にとんでもないモンスターだ。
 ただでさえ強いのに、その上まだ手を残していたなんて。
 『狂化』されたハイ・オークは一直線に俺に突進してきた。

 早ッ―――!?

「ガッ……!」

 全然、見えなかった。
 気づけば、俺は吹き飛ばされていた。
 アカが衝撃を吸収してくれなかったら、今の一撃で死んでたかもしれない。

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」

 おい、ちょっと待て。
 何で吹き飛ばされた俺に追いついてるんだよ!?
 辛うじて、ハイ・オークが拳を突き出したのは見えた。

「~~~~ッ!!(ふるふる)」

 再びアカが膨張し、奴の拳を包み込む。
 でも全ての衝撃を吸収しきれなかったようだ。
 パァンと、『擬態』の解けたアカの肉体が宙を舞う。
 アカが受けきれなかった分の衝撃が俺を襲う。

「ぐあああああああああああああッ!」

 内臓がかき回されるような激しい痛み。
 ヤバい、意識を持っていかれそうだ。
 踏ん張れ、踏ん張れ!
 辛うじて、意識を繋ぎ、俺はアイテムボックスで即席の壁を作り出す。
 衝撃で体を痺れさせながら、すぐに後退する。

「グォォオッ!」

 だが壁は破壊され、あっという間に距離を詰められる。
 涙で滲み視界に映るハイ・オークの凶悪な表情。

 逃げるな、戦え、もっともっと楽しませろ。

 そう言っているようだった。
 化け物め!
 内心毒づきながら、俺は手に持った『オークの包丁』を振りかざす。
 甲高い音響が木霊する。
 あっさりと弾かれて、宙を舞う『オークの包丁』。

「ッ―――……」

 ヤバい、ヤバい……ヤバい!
 体勢が崩れてる、避けられない。
 アイテムボックスも―――駄目だ。この距離じゃ、壁ごと叩き斬られる!

 モモはの『影』も間に合わない。
 距離が離れすぎている。

 アカも肉体を元に戻すのに手いっぱいの様だ。
 自分のHPが見える。

 12/100

 先程の一撃で、もう俺のHPは尽きかけていた。
 自動回復は間に合わない。
 今、攻撃を喰らったら―――。

 にやりと、ハイ・オークの口が歪む。
 勝利を確信した表情。
 ああ、くそ。良い所まで行ったと思ったのに……。
 死が迫る。
 その瞬間、パァンと小さな音が聴こえた。

「ゴアアッ!?」

「えっ?」

 なんだ?
 何が起きた?
 ハイ・オークは右目を押さえ悶えている。
 今のは―――銃声?

 ハッとなって振り向くと、少し離れた建物の屋上に人影があった。
 小柄な黒髪の少女だった。
 手には不釣り合いな馬鹿でかい銃を持っている。

「まさか……イチノセさん?」

 ぽつりと呟いた声に反応する様に、彼女は親指を立てて俺を見た。
 生きてたのか……良かった。
 かなりボロボロで傷ついていたが、彼女も無事だったようだ。

 どうしてここに来たのかとか、疑問はあるがとにかく助かった。
 後でメール送らないとな。

 でも、その前にだ。
 彼女が作ってくれた隙を逃すな。

「くらえッ!」

 『雨』を降らせる。
 もうペットボトルは無い。
 これが最後の雨だ。
 降り注ぐ雨はハイ・オークの体を容赦なく傷つける。

 ―――倒れろ。

「ォォオオオオオオオオオッ!!」

 ハイ・オークは叫ぶ。
 凄まじい形相でこちらへ向かって駆け出してきた。
 この状況であっても、奴に後退という文字は無いらしい。

「わおおおおおおおおん!」

 モモが吠える。
 『影の槍』が容赦なくハイ・オークへ突き刺さる。
 それでも、ハイ・オークの勢いは止まらない。

「このッ!」

 俺はアイテムボックスに残った質量兵器をとにかく放った。
 廃車、岩、木材。
 先程と違い、それらは明確にハイ・オークへダメージを与えている。
 倒れろ。

「ォォォオオオオオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」

 叫びが木霊する。
 迫りくるハイ・オークの威圧感は凄まじいの一言だった。
 まさしく手負いの獣の決死の迫力。
 それでも奴はこの状況を心底楽しんでいるのだろう。
 笑みが消えていない。

 ―――戦イコソ全テ。

 最後のブロック片がヤツの体に当たる。
 既に体は歪に歪み、全身の皮膚はボロボロに崩れていた。
 俺とハイ・オークが肉薄する。
 最後に俺の手元に残ったのは小さな包丁だった。
 最初に外に出た時に手に持った最初の武器。
 何度も使った事で錆びつき切れ味の鈍くなったそれを、俺は握りしめる。

「うあああああああああああああああああああああああああッ!」

 叫びと共に、絞り出すように最後の力を振り絞る。
 強化した敏捷。そして『急所突き』。
 僅かに、ハイ・オークが刃を振りかざすよりも先に、俺の包丁はヤツの胸に突き刺さった。
 ハイ・オークの手に持った首切り包丁が地面に落ちる。

 倒れろ!

 刃を捻る。
 あっさりと包丁は折れた。

 ハイ・オークが吠える。
 それはまさしく断末魔の叫びだった。

 そして、ハイ・オークは仰向けに大の字になって倒れた。
 倒れる瞬間、奴と目が合った。

 ―――見事ダ。

 そう言っているようだった。
 ハイ・オークの体が霧散し、そこにはこぶし大の魔石が転がった。

 一瞬、時が止まったように感じた。
 静寂。
 心臓の高鳴り、荒い呼吸音。

「勝った……のか?」

 俺の問いに答える様に、頭の中に声が響く。

≪経験値を獲得しました≫
≪経験値が一定に達しました≫
≪クドウ カズトのLVが13から14に上がりました≫

≪経験値が一定に達しました≫
≪クドウ カズトのLVが14から15に上がりました≫

≪経験値が一定に達しました≫
≪クドウ カズトのLVが15から16に上がりました≫

≪ネームドモンスター『ルーフェン』の討伐を確認≫
≪討伐ボーナスが与えられます≫
≪―――

「はは……やったなモ…モ……―――」

 頭の中に響く声を最後まで聞く事は出来ず、俺は地面に倒れた。
 生き延びた。
 生き延びる事が出来たんだ。
 疲労と緊張感からか、あっさりと俺の意識は闇の底に沈んでいった。
ツギクルバナー
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