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モンスターがあふれる世界になったので、好きに生きたいと思います 作者:よっしゃあっ!
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51.鬼ごっこ


 その『叫び』を聞くのは、これで三度目だった。

 ヤバい。
 ヤバい、ヤバい。
 ヤバい、ヤバい、ヤバい、ヤバい。

「モモッ!」

「わん!」

 俺が叫ぶと、モモはすぐに『影』に避難した。
 その瞬間、俺は全力で駆け出した。

 逃げろ。
 逃げろ。
 逃げろっ!

 少しでも遠くへ。
 一歩でも長く距離を稼ぐんだ。

「ハッハッハッハッハァッハァッ……!」

 俺は全力で走っていた。
 おそらく今までの人生でも一番必死に走ったと思う。

≪熟練度が一定に達しました≫
≪逃走がLV1から2に上がりました≫

≪熟練度が一定に達しました≫
≪逃走がLV2から3に上がりました≫

≪熟練度が一定に達しました≫
≪逃走がLV3から4に上がりました≫

≪熟練度が一定に達しました≫
≪恐怖耐性がLV5から6に上がりました≫

 頭の中に響く天の声。
 本来なら、スキルのLVが上がって嬉しい筈なのに、今は全然嬉しくない。

 でも、『逃亡』のLVが上がったおかげか、先程よりもスピードが増した気がする。
 やはり、このスキルは、逃げてる時に速度に補正が掛かるスキルの様だ。

 ぐんぐんスピードが出る。
 どんどん距離が離れてゆく。

 でも、消えない。

 『嫌な感じ』が消えてくれない。
 『危機感知』がずっと警鐘を鳴らしている。
 『敵意感知』が常に反応している。

「ハァハァハァ……」

 逃げながら、横目であいつの姿を見る。
 ハイ・オークはまだマンションの屋上から動いていない。
 そのまま、そこでじっとしていてくれないだろうか?
 そう願ってしまう。

 だが、そんな淡い期待は裏切られる。
 不意にハイ・オークが膝を曲げた。
 なんだ、あの態勢?
 まるで、ジャンプする前に力をためる様な―――。

 ぞわり、と。
 猛烈に寒気がした。

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!』

 叫び。轟音。衝撃。
 高層マンションの屋上を崩壊させ、ハイ・オークは跳んだ。
 弾丸の様に放たれた巨体。
 凄まじいスピードだった。
 瓦礫が落ちるよりも早く、ハイ・オークは地上に降り立った。

 ズドンッッ!!!!と。

 隕石が落ちたかのような衝撃が走る。
 見れば、先ほどまで俺が居た場所。
 そのすぐ近くには小さなクレーターが出来ていた。

 ……嘘だろ?
 あの距離を一跳びで?
 一体どういう筋肉してんだよ!?
 ふざけんじゃねぇ!

「出鱈目にも程があるだろうがっ……!」

 敵わない。すぐにそう悟る。
 それでも走る。
 少しでも、距離をとろうとする。

「ゴァ……」

 ゴキッと、ハイ・オークは首を鳴らし、こちらを見る。
 やめろよ、見るなよ。
 こっちに来るな。
 前回は見逃してくれただろうが。
 今回も見逃してくれよ。
 頼むよ。

 だが、そんな祈りは届かない。
 ハイ・オークは手に持った首切り包丁を構え、こちらへ向かってきた。
 追いつかれれば死ぬ。
 地獄の鬼ごっこが始まった。



 逃げに徹するならば、地の利はモンスターよりも俺にある。
 いつだか、俺はそう考えていた。
 モンスターがこの世界に溢れてまだ三日だ。
 急にこの世界に現れたモンスターよりも、長年この地に慣れ親しんだ俺の方が地理に詳しいし、土地勘もある。

 だから、ただ逃げに徹するならば、何とかなるだろうと。

 でも、甘かった。
 そんな理屈が通じないからこそ、モンスターはモンスターなのだ。

「うおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

 狭い道路を駆けながら、俺は背後に迫る脅威に怯えていた。
 とにかく出鱈目に走り回り、入り乱れる小道を何度も交錯して、アイツを巻こうとしても全然距離が離れない。
 なぜか?
 簡単だ。
 アイツは俺の匂いを頼りに、ただひたすらに真っ直ぐ突き進んでくるのだ。
 壁をぶち壊し、家を飛び越え、車を踏み潰し、なんの障害もお構いなしに突っ込んでくる。
 障害物が障害物として機能していないのだ。
 ふざけるなと言いたい。

 もう、間合いは十メートルも無い。
 どうあがいても振り切る事が出来ない。
 くそ、くそ、くそっ!

「追い……つかれるッ……!」

 入り組んだ裏道を抜け、開けた場所に出る。

「ッ、モモ!」

 俺の叫びに応じて、モモは影に潜んだ状態のまま、ハイ・オークへ向けて『影』
を伸ばす。

「ゴァ……?」

 ハイ・オークは自分を縛りつける『影』を興味深そうに見つめる。
 『影』が全身に絡みつき、ハイ・オークを拘束しようとして―――ぶちんっ!と引き千切られた。
 あっさりと、いとも容易く。

 ……一瞬でも、動きを止められないのか。

 でも、もう賭けに出るしかない!

「あああああああああああああああああああ!!」

 叫びと共に、俺はハイ・オークの頭上めがけて重機を放った。
 突如、自分の頭上に現れた質量にハイ・オークは驚く。
 そのまま重機はハイ・オークの体を押しつぶ―――さなかった。

「嘘……だろ……?」

 思わず、俺はそう呟いてしまった。
 ハイ・オークは重機に押しつぶされる事無く、『片手』で支えていた。
 落下の衝撃で、奴の足元が少しだけ地面にめり込んでいる。
 でも、奴は潰れていない。
 片腕の腕力だけで、奴は『重機』を支えていた。
 にたりと、奴は嗤った。

「―――ッ‼」

 『危機感知』、『敵意感知』が最大限に警鐘を鳴らす。

「―――ォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!!」

 叫びと共に、オークは手に持った『重機』を俺に向けて『投げた』。
 ボールを投げる様にあっさりと。
 凄まじいスピードで。

 圧倒的な質量が迫る。
 俺の視界が埋め尽くされる。
 ―――避けられない。

「~~~~ッ!!(ふるふるふる)」

 次の瞬間、ボコボコボコボコ!と。
 『擬態』したアカの身体が最大限に膨張した。
 俺の体を包み込んで、ボールの様に変化する。
 ぼよんと、重機が俺を包み込んだアカの体に衝突した瞬間、アカの体は重機の衝撃を相殺した。
そのままボールの様にバウンドしながら、俺たちは後ろに飛ぶ。
 壁や地面に衝突しながら、立体的な動きで飛び跳ねるアカ。
 脳がぐるんぐるんと揺られる。

 どれだけ弾んだだろうか?
 ようやく勢いが消えて止まった。
 アカが元の服に『擬態』しなおす。

「……うっぷ……」

 口元を押さえ、必死に吐き気と眩暈に耐える。

「さ、サンキュー、アカ……」

 でも、ナイスだ。
『回避』も『アイテムボックス』も間に合わなかった。
 アカが体を変化させなければ、今頃俺は重機に押しつぶされてただろう。

「ハァ……ハァ……」

 揺れる視界で正面を見る。
 ハイ・オークが居た。
 ゆっくりとこちらに近づいている。

 場所を確認する。
 駐車場だ。
 一体どこの?

 少し、視線を変えると、ハイ・オークの少し後ろに壊れたヘリコプターが見えた。
 そうか……ここはショッピングモールか。
 一体何の因果なのだろう。
 必死に逃げて、たどり着いた場所は、あいつと初めて出会った場所。

「ハァ……ハァ……」

 他のオークは居なかった。
 駐車場は所々に亀裂が走り、建物は所々が崩れている。

 悠然と首切り包丁を構え、仁王立ちするハイ・オーク。

 もう逃がさないと、言っているようだった。
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