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モンスターがあふれる世界になったので、好きに生きたいと思います 作者:よっしゃあっ!
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50/57

50.急転


 まさか……気付かれた?
 でも、どうして?
 西野君も『感知』系のスキルを持っているのか?
 昨日は気付かれてなかったと思ったけど、もしかしてレベルアップして取ったのか?
 それとも何か別のスキル?

「だれか……そこに……」

 虚ろなまなざしのまま、西野君はこちらへ手を伸ばす。
 どうする……?
 出て行くべきか?
 周辺にはモンスターの気配は無い。
 人の気配もないし、誰かが見ている感じも無い。
 でも……でも―――。

「わん」

 あ、モモ!?
 俺が悩んでいると、モモが彼らの前に姿を晒した。
 それを見た西野君の表情が曇る。

「……犬?あれ、君は……?ぐっ、頼む……。誰か、誰でもいい……人…を―――」

 最後まで言葉は続かなかった。
 気を失ったようだ。
 モモはゆっくりと近づいてゆく。
 そして、彼らに鼻を近づけ匂いを嗅ぐと、俺の方を見た。

「わん」

 出てきても大丈夫、と言っているのだろうか?
 仕方ない……。

「アカ……フードを追加してくれ」

「……(ふるふる)」

 今来ているカッパはアカが『擬態』した服だ。
 その為、色々とコーディネイトを変える事が出来る。
 アカが追加で擬態してくれたフードを目深に被る。
 一応、念のためだ。
 顔は見られないようにしておこう。
 それとアイテムボックスから『リュック』を取り出し、背負う。
 一応、中に適当に荷物を詰めてそれっぽくして、と。
 これでよし。
 見た目は完全に避難民だ。
 俺は意を決して、西野君たちの方へ向かう。

「……完全に気を失ってるな」

 西野君も、もう一人の少女もゆすってもまるで反応しない。
 服は所々が黒く焦げ、血がにじんでいる個所もある。
 西野君はすり傷や切り傷が多い。
 女の子の方はもっとひどい。服の一部が真っ赤に染まっている。
 やっぱりオークとの戦闘があったみたいだ。
 しかし、あのハイ・オークに遭遇して、よく逃げ延びる事が出来たな。

「わん」

 モモが俺の裾を引っ張ってくる。
 はやくたすけてあげよう、と言っているようだった。
 助ける、か……。

「……でも、俺に出来る事何てほとんど無いぞ?」

 応急処置だってやった事が無い。
 出来る事なんて、本当にたかが知れてる。
 せいぜい雨に当たらない様、近くの空き家に運んでやるくらいだ。
 悩む俺をモモはじっと見つめてくる。

「……なあ、もしここで俺が彼らを見捨てたら、モモは俺のことを嫌いになるか?」

 ふと、そんな事を口にしてしまう。
 結局俺はまだ心のどこかで他人を信じ切れていないのだろう。
 アイテムボックスの存在や、食料の事がばれるのが怖いのかもしれない。
 イチノセさんの事だってそうだ。
 仲間が欲しいと思いつつも、まだどこか踏みきれていないのだ。

「……わふ」

 モモはちょっと悩む素振りを見せてから、体を擦り寄せてきた。
 だいじょうぶ、ずっとみかただよ、そう言ってくれてる様だった。
 そっか……良かった。
 安心した。
 だから、

「……よいしょっと」

 俺はリュックを前にして、西野君を背負った。
 ……うお、人って意外と重いんだな。
 ステータスが上がって無ければ絶対無理だった。

「一度に二人は無理だな。分けて運ぼう」

「くぅーん……?」

 キョトンとするモモへ、視線を移す。

「とりあえず、そこの家の中に放り込んでおく。それでいいだろ、モモ?」

「っ!……わんっ!」

 モモは振り切れんばかりに尻尾を振った。
 そのままクルクルと俺の周りを回る。
 凄く嬉しそうだ。
 まあ、仕方ないか……。モモに嫌われないためだ。
 俺は近くの空き家に、西野君と少女を運んだ。


 空き家の中に二人を寝かせる。
 とりあえず濡れた服を脱がせて―――脱げない!?
 雨でぴっちりくっ付いた服は予想以上に脱がせにくかった。
 ……タオルで水気を取るか。

「あ、そうだ、止血……」

 西野君の方は良いが、女の子の方はかなり出血していた筈だ。
 包帯で巻いて……いや、消毒が先か。
 とりあえず、服をめくり、傷口を見てみる。

「……あれ?」

 傷口を見ると、既に血は止まっていた。
 服に沁み込んだ血の量からして、かなり深いと思ってたけど……。

「……どういう事だ?」

 いくらなんでも傷の治りが早すぎないか?
 もしかしてこの子、そういう『スキル』でも持ってるのか?
 『HP回復』?いや、『自己治癒』とか、『自己再生』か?
 とにかく、顔色は悪いがすぐ死ぬって事はなさそうだ。
 良かった。

 あ、でも一応、消毒して包帯を巻いておくか。
 あとは寒くない様に毛布を掛けて、テーブルの上に予備の包帯や塗り薬、栄養ドリンクなどを詰めた袋を置いておく。

 これで充分だろ。
 というか、これ以上は知識がないから無理だ。

「これでいいだろ、モモ?」

「わん!」

 モモも満足したようだ。
 さて、二人が目を覚ます前に移動するか。

 外へ出ると、既に雨は上がっていた。
 雲が晴れ、所々日差しが差し込んでいる。
 通り雨だったのか?
 西野君たちを運んでる最中にはもう弱くなってたし。

「……さっさと移動しないとな」

 予想外に時間が掛かった。
 でも、西野君たちがホームセンターから逃げてきたってことは、今オークたちが居るのはその周辺。
 なら、逆にショッピングモールの方は、手薄になってる筈。
 そこを突破して、そのまま都心部の方へ向かうのがいいだろう。

 というか、現状シャドウ・ウルフとオークの群れを回避するには、そのルートしかない。

 イチノセさんのマンションの近くを通る事になるけど、まあそこは問題ないだろう。
 流石に撃たれるなんてことはないだろうし。
 というか、彼女も逃げた方がいいんじゃないだろうか?
 確かにあの高層マンションは、街中を俯瞰して狙撃するには最高の場所だが、いかんせんすぐ傍までモンスターの脅威が迫っている。

「一応、逃げた方がいいよってメールしておくか……」

 色々とヤバい感じがする彼女だが、死なれるのも寝覚めが悪い。

「おや……?」

 メール画面を開くと、『未読』は無かった。
 あれ?てっきり、また何かしらメール送って来てるのかと思ったけど……。
 休んでるのかな?
 ちょっと違和感を感じつつ、メールを送信する。 

「……ん?」

 ふと、マンションの方を見ると違和感を感じた。
 なんだろう?
 おかしい。
 あのマンションの方から『嫌な感じ』がしたのだ。
 それもシャドウ・ウルフの群れや、ホームセンターの方から感じるのよりも、もっと大きな『嫌な感じ』だ。

「どういう事だ?」

 目を凝らすと、屋上に何かが見えた気がした。
 イチノセさんだろうか?
 いや、違う。
 気になって、『望遠』を使おうとした―――その瞬間だった。

 凄まじい音を立てて、マンションの屋上の一部が崩壊した。

「なッ!?」

 なんだ?何が起きた?
 屋上の一部が大きくえぐれ、破片が重力に従って落ちてゆく。
 土煙が上がり、その中から悠然と姿を現したのは一体のモンスターだった。

「―――あ」

 俺の視界に映り込んだ存在。
 離れていても、『遠視』のスキルは、はっきりと『ソイツ』の姿を捕えていた。

「ハイ・オーク……」

 高層マンションの屋上に仁王立ちするのは、一体の赤銅色のオーク。
 なんで……?
 なんで、お前がそこに居る?
 お前は、ホームセンターに居たんじゃなかったのか?

 ホームセンターの方を見る。
 『嫌な感じ』はした。 でも、先程よりも『強くない』……弱まってる。
 シャドウ・ウルフの群れに感じたのと同じくらいだ。

「あ……」

 まさか―――まさか……。

 不意に、最悪の考えが頭をよぎる。

 周囲を隈なく俯瞰出来る建物。
 獲物を狩るには絶好のポジション。

 その利点を、どうして『人間だけ』が活用するものだと思っていたのだろう?

 ヤツもその利点に気付き、一匹だけホームセンターを離れ、より効率よく『次の獲物』を探そうと考えたのだとしたら―――。
 その為に、あの高層マンションに目を付けたのだとしたら―――。

 イチノセさんは無事なのか?
 それとも……。

 ハイ・オークは屋上からゆっくりと周囲を見回し―――そして、

「―――ぁ」

 俺と目が合った。
 全身が粟立つというのはこういう感覚なのだろう。

 これ程距離が離れているのに。

 向こうからは死角になっている場所の筈なのに。

 ハイ・オークの視線は、明らかに俺の方を向いていた。

 俺の方を見て、奴は嗤った。
 心底楽しそうに。
 ようやく出会えた、とでも言うように。

『――――ォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!』


 ―――『叫び』が、木霊した。

 ―――ミ ツ ケ タ 
ツギクルバナー
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