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モンスターがあふれる世界になったので、好きに生きたいと思います 作者:よっしゃあっ!
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39.束の間の安息

 マンションに入る。
 少数だが、住民の気配がした。
 籠城してる奴が居たらしい。
 と言っても、上の階だ。
 特に気にしなくても良いだろう。

 適当に空いてる部屋にお邪魔する。
 鍵はかかっておらず、中は荒らされていた。
 床や家具に斬り付けた様な跡があり、窓ガラスは割られていた。
 多分、ゴブリンの仕業かな。

 とりあえず床に散乱した家具やガラスをアイテムボックスに収納。
 スペースを確保する。

「よし、昼食にするか」

「わん!」

 ご飯の時のモモの返事はいつもよりも元気がいい。
 好きなペットフードを出せば、尻尾もすんごい事になる。

「よし、じゃあ、今日はこれにするか」

 取り出したのはいつもよりも安めのドッグフード。

「わ…………くぅーん……」

 途端にしょんぼりとするモモ。
 尻尾もふにゃってなる。
 全く、贅沢なやつめ。すっかり舌が肥えてしまってからに。
 そんな食い意地の張ったやつには……。

「―――と、見せかけて、こっち」

 いつもよりもお高めのヤツを取り出す。

「!―――わん!わんわん!」

 それを見た瞬間、モモに笑顔が戻る。
 激しく尻尾を振り、ちょうだい、それはやくちょうだい!と俺の脚に引っ付いてくる。
 こら、そんなにくっ付いたら動けないでしょ。
 全くしょうがない奴だな、モモは。
 これ、在庫が少ないんだから今回だけですよ。全く、ホントに。

「さて、俺は何にするかな……」

 アイテムボックスからなんか適当にカップラーメンでも……。
 あー、でも出来合いのご飯も飽きてきたな。
 なんか作るか。

 台所へ移動する。
 コンロは……まだ使えるか。
 水道も大丈夫みたいだ。
 麺が食いたいな。焼きそばにするか。

 スーパーで手に入れた野菜や豚肉を適当に切って炒める。
 そこに麺を投入。あと天かす。
 ソースの粉と、中華だしの素を入れて炒める。
 仕上げに白ごまと鰹節を少々かけて完成だ。
 お手軽だけど、美味いんだよな。
 よし、出来た。

「んじゃ、頂きます」

「わん!」

 麺をすすって頬張る。
 うん、美味い。
 この安っぽい味がいいんだよ。

 もやしとキャベツのシャキシャキ感、それに天かすの風味がソースに合う。
 ちょっと胡椒をかけても美味いんだよな。
 飲み物はウーロン茶だ。
 味が濃い食事に合うよね。

 モモもお腹が減ってたのか、がつがつ食べる。
 こらこら、そんな急ぐとのどに詰まるよ。
 そう思いつつ、俺も食事を続けた。


 はぁー……美味かった。
 食事を終え、床に寝そべる。
 割れた窓から差し込む陽気が心地いい。
 眠くなってくる。

「わふー……」

 こら、モモ。
 人のお腹の上に乗っかるんじゃありません。
 まあ、いっか。
 そのまま、モフモフを堪能する。

「……」

 ……何だろうな、この安心感。
 モンスターが溢れた非日常の中で感じる日常の味。
 普段の生活がどれだけありがたかったのかを思い知らされる。
 まあ、社畜は勘弁だけど。

「普通だったら、こういう食事も満足に出来なくなるんだろうなぁ……」

 食料供給が停止している現状、俺の様に保存機能の付いたアイテムボックスが無ければ、日持ちしない食材から消費していくしかない。
 今は五月の半ば。
 この周辺はあらかた回収したが、他の地域のスーパーの生鮮食品は、そろそろ傷んできているだろう。
 こんな状況だ。たとえ食料を節約し続けたとしても、最終的には味気ない乾パンや水だけなんて状況もあり得るわけだ。

 と言っても、それは俺には当てはまらない。
 既に十分すぎる量が確保できてる上、今のアイテムボックスには『保存機能』が追加されている。
 俺の手持ちの食料が腐ったり、傷んだりすることはないのだ。

 どうやらこの『保存機能』というのは、最初にアイテムボックスに入れた状態のまま保存する機能の様だ。
 例えば、お湯を入れたカップラーメンを収納し、しばらく経ってからもう一度取り出す。
 すると、冷める事も麺が伸びる事も無く、最初に収納した状態のまま出て来る。
 『保存機能』というよりかは、『時間停止』機能に近いかもしれない。
 なんというチート。神かよ。

 一体どういう原理になっているのかは知らないが、ともかくこれで俺の食糧事情は解消されたわけだ。
 万が一、それでも足りなくなった場合は、魚釣ったり、野菜の種を使って一から育てるしかないけど。それもまだまだ先の事だろう。

 それに、昨日ほどのペースではないが、食料の回収は続けるつもりだ。
 食料の在庫が有って損する事はないし、モンスターの餌にされるのも癪だしな。
 西野君が言ってたように、食料の存在は今後の取引材料にもなる。
 ……まあ、俺にまともな交渉が出来るとは思ってないけどね。

 本当にアイテムボックス様様だ。
 あとは、これで『動いた状態の物』でも、収納出来れば最高なんだけどな……。

 これだけ便利なアイテムボックス様でも、万能ではない。
 収納できない物も存在する。

 例えば『生き物』。
 これは収納することは無理だった。
 モモで試したんじゃないよ?
 適当にその辺の電線に止まってるカラスとかで実験してみたが、収納する事は出来なかった。
 植物の種や、木の枝、土は大丈夫だったんだけどな。
 この辺はやっぱり、俺の認識か天の声さんの判定だろう。

 次に『動いてる物体』。
 これも収納する事が出来なかった。
 どうやら、静止した状態じゃないと収納する事は出来ない様だ。

 もし出来てたらそれこそ最強だよな。
 落下物をそのまま収納し、向きを調整して解放すれば、それは恐ろしい質量の弾丸になるだろう。
 リアルゲートオブ◯ビロンだ。
 某金ぴかの英霊を思い浮かべてしまう。

 やってみたいなぁ……。
 アイテムボックスの追加機能には、収納出来る種類を増やす機能はなかった。
 無い物ねだりをしてもしょうがないど、あの技には男のロマンが詰まってる。
 いつかできる様になりたい。

「あ、そうだ、モモ。魔石も食べるか?」

「わん!」

 先程倒したミミックの魔石や、ここへ来る途中で拾った魔石。
 それらをモモに与える。
 途中までモモは嬉しそうに食べていた。
 だが……

「……くぅ」

「ん?どうしたモモ?」

 モモは最後に残った一つ―――『ミミックの魔石(極小)』をじっと眺めている。食べないのだろうか?と思って見ていると、おもむろに口に咥えた。

「……」

 そのままモモは窓の外に視線をやる。
 そして―――割れた窓の隙間から、魔石を外に放り投げたのだ。

「あ!なにするんだよ、モモ」

 食べないからって、捨てることはないだろうに。

「わん」

 だがモモは、これでいいの、と言っているようだった。
 一体なにが良いんだよ……。さっぱり分からない。
 まあ、いいか。
 外に出た時に回収しておけば。

 もう少しゆっくりしていたいが、そろそろ出よう。
 準備を整え、室内にある物を回収する。

「んじゃ、行くか、モモ」

「わん」


 さて、出発するか。
 玄関の戸を開ける。

「ん……?」

 その瞬間、俺の視界に『ソイツ』が映り込んだ。
 廊下の隅。そこに、ぷるぷると震えながら佇むのは―――。

「……お前、まさか追いかけてきたのか……?」

 俺がそう訊ねると、レッド・スライムはどこか嬉しそうに体を震わせた。
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