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モンスターがあふれる世界になったので、好きに生きたいと思います 作者:よっしゃあっ!
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38/58

38.たとえ見つめられても、きちんとノーと言える人になろう


 ホームセンターを離れて街中を歩く。

「うーん……」

 歩きながら、先程の学生たちの会話を思い出していた。
 『早熟』によるSPやJPの増加。
 他人との比較してみて分かったが、このスキルは俺が思っていた以上に、チート能力だったようだ。

「獲得できたのはただ運が良かっただけだけど、こうなるとスキルの説明が欲しくなるよなぁ……」

 スキルやジョブは獲得しても、ステータスプレートには説明文が出ない。
 なので実際に獲得して試すか、名前から何となく推測するしかない。

「やっぱり、スキルの説明には『鑑定』が必要なのかな」

 『鑑定』。
 スキルを解析するスキル。
 それの必要性を改めて思い知る。

「獲得条件が分からないけど……『観察』の上級スキルっぽいよな」

 『密偵』のジョブに着いた際、獲得したスキル『観察』。
 現在のレベルは4。
 これをLV10まで上げれば、『鑑定』が手に入る可能性も高いんじゃないだろうか?
 あくまで推測でしかないが、試してみる価値はある。

「感知系スキル、それに加えて『観察』のレベルも上げなきゃな……」

 今までは何となくで済ませてきたけど、そもそも『早熟』は『固有スキル』だ。
 そこからして、他のスキルとは違う。
 もっとこのスキルの事をよく知る必要がある。
 やるべき事が増えたみたいだ。

「くぅーん?」

 モモが、だいじょうぶ?と問いかけてくる。
 おっと、すっかり考え事に夢中になっていた。

「大丈夫だよ、モモ。心配しないって」

 しゃがんで、モモの頭を撫でる。

「……わふ」

 ならいいんだけど、みたいな感じの返事。
 俺は思わず苦笑する。
 モモは心配性だなぁ。可愛い。

「ん、あれは……?」

 ふと、視線を向けるとそこにはスライムが居た。
 壁際に設置されたゴミ捨て場。
 その中のゴミに紛れる様に、数匹のスライムが居た。

 コイツ、こんな所にも居たのか。
 『危機感知』や『敵意感知』が発動しないので、思わず見過ごしてしまうところだった。
 特に何をするわけでもなく、その場でぷるぷる動くだけだ。
 あ、いや、よく見たら少しずつゴミを溶かしてる。
 コイツら何でも喰うんだな。
 ファンタジー小説じゃ、スライムは雑食って言うのは定番だが、現実のコイツらもその例に漏れないらしい。

 うーん、どうするか。
 コイツら、狩るにしても手間がかかるんだよなぁ……。
 その割に旨味が少ないし。

「ん?」

 よく見れば、スライムの中に一匹だけ色違いのスライムが居た。
 他のスライムは青色だが、そいつは赤色をしていた。
 もしかして、スライムの上位種か?
 そのまま眺めていたが、赤色のスライムも、何をするわけでもなくただその場をのそのそ動いているだけみたいだ。

「不思議な生き物だなぁ……」

 ある意味一番謎のモンスターだ。
 まあ、とりあえずこれは放置でいいか。
 経験値も少ないし、放っておいても害はなさそうだし。

「あ、そうだ」

 ちょっと好奇心が湧き、俺はアイテムボックスから『ゴミ』を取り出す。
 食べた後の弁当のプラスチック容器とかだ。
 それをスライムに向けて放った。

『……』

 スライムは特に反応しな―――いや、反応が有った。
 ゴミを包み込んで溶かしてる。
 ……すごいゆっくりだけど。

「へぇー……」

 しげしげとその様子を眺めてしまう。
 おおよそ十分ほどをかけて、スライムはゴミを食べ終えた。
 ぷるぷると震え、そのまま今度はゴミ捨て場のゴミの捕食を再開する。

「よく喰うなコイツら」

 デカい微生物を見ている気分だ。
 ん?なんだ?
 色違いの赤いスライムが、ゆっくりとこちらへ向かって来る。
 『敵意感知』や『危機感知』は反応していない。
 でも、一応用心して距離をとる。
 モモもいつでも戦える姿勢を整える。

≪レッド・スライムが仲間になりたそうにアナタを見ています。仲間にしてあげますか?≫

 頭の中に響く天の声。

「え?」

 一瞬聞き間違えかと思った。

≪レッド・スライムが仲間になりたそうにアナタを見ています。仲間にしてあげますか?≫

 再び頭の中に響く天の声。
 聞き間違えじゃなかった。

 マジか、モンスターでもこういう事があるのか。
 というか、やっぱスライムも『意思』があったのか。
 スライムはぷるぷると震えてこちらを見ている……ように見える。
 もしかして、餌をくれたと思われたのだろうか?

「うーん……」

 でもなぁ……。
 正直微妙だよな。
 ネット小説じゃ、スライムを仲間にするのって定番だけど、リアルでこれはちょっと……。
 ゴミ捨て場に佇む赤いスライムを見ながら、俺は考える。
 害はなさそうだけど、特にメリットもないんだよな……。
 というか、俺のスキルの特性考えたら、居たら却って邪魔にならないか?
 『潜伏』や『気配遮断』は俺にしか効果が無いんだし。『影』に潜れるモモは例外的に適用されるけど。
 それに遅いし、背負って移動しなきゃいけないし、戦闘で役立ちそうにもない。
 居ても文字通りのお荷物だ。

 俺は頭の中でノーを選択する。

≪申請を却下しました≫

『……』

 心なしか、赤いスライムが少し悲しそうに震えた気がした。
 多分、気のせいだと思いたい。
 気のせいだ、絶対。

「……い、行くか、モモ。他のモンスターを探そう」

「……わん」

 うん、間違ってない。
 俺は間違ってない筈だ。
 再び歩き出すと、くぅと腹が鳴った。

「……そう言えば、そろそろお昼か」

 腕時計を見ると、既に十二時を過ぎていた。

「とりあえず、モモ。一旦休むか」

「わん」

 休憩に使えそうな建物を探す。
 ……あそこがいいかな。
 直ぐ近くにある高層マンション。
 背後で震えるスライムに背を向け、俺とモモはそちらへ向かった。




 一方その頃、とあるマンションの屋上にて―――

「……流石に、見える範囲でのモンスターは少なくなってきたわね」

 スコープ越しに街の風景を見ながら、『彼女』は呟く。
 モンスターが溢れて三日目。
 彼女は一歩もマンションから出ず、ひたすらここから狙撃を繰り返していた。
 その甲斐あって、レベルもかなり上がり、ポイントも十分に手に入った。

 だが、それにもそろそろ限界が見えてきた。
 射撃範囲に現れるモンスターの数が少なくなってきたのだ。

「そろそろ、出ようかな……」

 自分のジョブやスキルの事を考えれば、ここを出ない方がいい。
 だが、ここに居ても頭打ちになるのは目に見えている。

「ポイント使って、スキルとステータスを強化する。んで、目ぼしい建物を見つけて、またそこに引き籠ればいいか……」

 ジョブの条件の合うマンションや高層ビルを見つけ、そこを新たな拠点にすればいい。

「出来れば協力者が欲しいな。……そう言えば、あの男の人とワンちゃん、まだ生きてるかな」

 昨日、ここへ来たあの男性と柴犬の事を思い出す。
 面白いスキルを持っていた。
 結局、話しかける事が出来ず、そのまま立ち去ってしまったが。

「……まあクズっぽいし、多分生きてると思うけど」

 いや、クズと言うよりは、生き汚いというべきか。
 スーパーでの戦い方や、ここでの反応を見るに、そう感じた。
 なぜそう思うか。
 自分もそうだからだ。
 死にたくない。生きていたい。
 だから、モンスターを倒し、レベルを上げ、安全を手に入れようと画策する。
 それにしても、と彼女は思う。

「あのワンちゃん、可愛かったなぁ……」

 あの男にぴたりと寄り添って、尻尾を振るあの姿。
 なんて愛くるしい。
 撫でてモフモフして癒されたい。
 彼女は猫派ではなく犬派だ。
 特に柴犬は、彼女のどストライク。
 このマンションがペット禁止でなければ、自分もあんな可愛いワンちゃんを飼っていただろう。
 うっすらと彼女は頬を染める。
 それはまるで恋する乙女の様。

「……もう一度会いたいな、あのワンちゃんに」

 彼女の頭の中では、既に男の顔は曖昧で、モモの姿は二百倍くらいに美化されていた。
 人見知りは、基本人の顔を覚えない。

「―――『地図マップ』」

 そう呟くと、彼女のステータスプレートが変化する。
 街並みが立体的に再現された地図になった。

「……うん、ここがいい」

 ホームセンターから少し離れたところにある高層マンション。
 ここなら、自分のジョブの条件にも合う。
 家具や食料は、また揃える必要がありそうだが、まあそこは妥協しよう。

「さて、それじゃあ行こうかな」

 すっかり手に馴染んだ長大な銃を肩に担ぎ立ち上がる。
 こうして彼女、一之瀬奈津イチノセ ナツは新たな狩場を求めて町へと繰り出したのだった。
 その心の片隅に、再びあの柴犬と出会えることを祈って。

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