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モンスターがあふれる世界になったので、好きに生きたいと思います 作者:よっしゃあっ!
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26.ニアミス


 俺はその結末を呆然と眺めていた。

「嘘だろ……?」

 ぽつりと、そんな言葉が漏れる。
 通常のオークを相手に圧倒していた自衛隊が、あっさりとあのハイ・オーク相手に全滅した。
 その事実を、俺は呑み込めないでいた。

「強すぎる……」

 いくらなんでも、あれはおかしい。
 同じ上位種でも、先ほど戦ったホブ・ゴブリンとは天と地ほどに違う。
 ホブ・ゴブリンはまだ納得のできる範囲だった。
 ゴブリンの延長線上にいる強さ。そう思えた。

 でも、あいつは違う。

 アイツは、通常種のオークとは明らかな隔たりがある。
 『異常』とも思える強さ。
 ハイ・オークは自衛隊が全滅したのを確認すると、勝利の雄叫びを上げた。
 その声が合図だったのか、中に居るオークたちが外に出てくる。
 その数、八匹。
 昨日よりも増えていた。
 他にも仲間が居たって事か。

 ハイ・オークは手に持った肉切り包丁をある方向へ向ける。
 その先には、数人の人影があった。
 方角的にさっき見た人間達とは違うな。
 多分、他にもヘリを見て駆け付けた人たちが居たのだろう。
 彼らはオークと、自衛隊員の死体を目にした瞬間、我先にと逃げ出した。

 だが、ハイ・オークが再び吠える。
 それを合図に、オークたちは走り出した。
 俺の時とは違い、見逃すつもりはないらしい。
 つくづく俺は運が良かった様だ。
 オークたちはその巨体に似合わぬ素早い動きを見せる。
 多分、あの人達は捕まるだろう。その後どうなるかは、想像に難くない。
 俺はそこで見るのを止めた。

「はぁー……」

 ヤバいなぁー……どうしよう。
 新しいジョブと、スキルを手に入れて、ゴブリンの上位種を倒して勢いづいてた筈なのに一気に憂鬱な気分になった。

「……逃げようか、モモ」

「くぅーん?」

 モフモフと、モモを抱きながら俺はそんな提案をする。
 だが、モモはどこか気の無い返事だ。

「逃げるんだよ、あのハイ・オークの手の届かないところまで」

 生き延びるためにはそれが最も良い筈だ。
 でもモモは首を傾げる。
 一体どうして?

「あ……」

 すこし考えて、ようやく俺にも分かった。 
 一体、『何処』に逃げればいいんだ、と?

 町中にモンスターが溢れている。
 既にこの町には安全な場所などない。
 スキル持ちの自衛隊がやって来たという事は、他の町や県でもモンスターが居るのは確定。

 なにより最悪なのは、逃げた先に『もっと強力なモンスター』が居た場合。
 例えばドラゴンやフェニックスの様な。
 仮にもし、そう言うのが居れば、結局はまた逃げ続ける羽目になる。
 終わりの見えない逃走劇だ。きっといつかは詰むだろう。

「だからモモは反対なのか?」

「わふ……」

 モモは頷く。
 どうやらモモも同じ考えだったらしい。
 いや、俺よりもよほど現実を見ていたようだ。
 深くため息をつく。

「……やっぱ、強いモンスターに見つからずに、少しずつレベルを上げていくしかないって事だよな」

 結局はそれしかないのだ。
 生き延びるためには。
 モンスターを狩って、レベルを上げる。
 スキルを充実させる。
 それ以外に道はない。

 というか、先程までやっていた事じゃないか。
 何でウジウジと悩んでいたんだ俺は。
 ああそうか。
 きっと心のどこかで、『誰かが何とかしてくれる』とか思っていた所為だろうな。
 自衛隊のヘリを見つけて、その想いが一気に押し寄せてきたんだ。

「気合を入れ直さないとな」

 俺は自分のほっぺを思いっきり叩く。
 パァン!と小気味良い音が鳴る。

「~~~~ッ!」

 よし、ウジウジしててもしょうがない!
 何とかなる精神で頑張るしかない!
 アイテムボックスから水を取り出し、一気に飲み干す。

「よし!行くかモモ。もっともっと強くならなきゃな!」

「わん!」

 先程と違い、今度はモモも勢いよく頷いてくれた。
 そのいきよ!と言ってくれているようだった。

「とりあえずは、ホームセンターに向かうか」

 ホームセンターは、ハイオークが居るショッピングモールとは反対方向だ。
 あそこなら、より強い武器になりそうな物が揃ってる筈。
 包丁もそろそろ使えなくなってきた。
 砥石やストックも欲しい。

 それに、近くにはドラッグストアもある。
 病院なんてまともに機能してないだろうし、医療品の類はすこしでも揃えておきたい。

「行くか、モモ」

「わん!」

 よし、次の目的地はホームセンターだ。
 勢いよく、俺たちは立ち上がり、屋上を後にした。




 ―――そして、彼らが立ち去った後の屋上の物陰から一人の少女が現れた。
 身の丈ほどの長大なライフルを担いだ小柄な少女だ。

「……行ったみたいね」

 ぽつりと、そう呟きながら、女性は彼らが居た場所を名残惜しそうに見つめる。

「……結局、気付かれなかった」

 そう、彼女はずっと屋上に『居た』のだ。
 物陰で一人で、もぐもぐと昼食を食べている最中に、突然彼らが屋上にやってきた時は心臓が止まるかと思った。
 持っていた『スキル』のおかげか、最後まで気づかれることはなかったようだが……。

「もう少しいてくれても良かったのに……」

 そうすれば気付いてもらえたかもしれない。
 というか、自分の方から何度も声をかけようと思ったのだが、その度に思いとどまってしまった。
 だって声をかけようとするたびに、じっとりと汗をかき、動悸が激しくなるし、眩暈がするのだ。
 スコープ越しならいくらでも平静を保てるのに、いざ向かい合うとなるとどうしてこうなのだろう。
 彼女は大きくため息をつく。

「やっぱり、知らない人に話しかけるのってハードル高いわ……」

 その呟きは、誰の耳にも届かず、ただ静かに風の中に消えて行った。
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