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モンスターがあふれる世界になったので、好きに生きたいと思います 作者:よっしゃあっ!
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15.化け物と逃走



 ―――正直、面倒臭いな。

 そう考えた時、ああ俺って意外とロクデナシだったんだなーと自覚した、
 でもさ、それってそんなにおかし良い事か?
 誰だって自分の命が一番だろ?
 こんな世界だ。
 他人よりも自分を優先させる。
 自分が一番に生き延びる事を考える。

 それは『間違ってる事』か?

 何も間違ってない。
 間違ってる筈がない。

 だからこそ、俺たちはあの人達の思考が理解出来ない。
 バリケートを破られ、必死になって戦っている彼ら。
 なぜ彼らは逃げずにあんなにも必死に戦い続けているのか?

 簡単だ。
 おそらく彼らは時間を稼いでいるのだ。
 他の人達――おそらくは、同じようにショッピングモールの中に籠城していた人達の逃げる時間を。

「ぜってーここを通すんじゃねぇぞ!少しでもみんなが逃げる時間を稼ぐんだ!」
「「「おおおおおおおおおおおお‼」」」


 俺の考えに応える様に、戦っていた男達が叫び、己を鼓舞する。
 間違いない。
 彼らは文字通り命がけで時間を稼いでいるのだ。
 少しでも他の人達が逃げるための時間を。

「……マジかよ。良く出来るな、そんな事……」

 絶対真似したくないわ……。
 なんであの人達、そこまで命かけれるの?
 あれか?自分達の家族とか恋人が中に居るからか?
 うーん、それでも俺なら、他人より自分を優先させるけどな。

「やっぱ逃げるか……」

 無理だな。
 どうにも、ああいう人たちって苦手だ。
 天気も曇って来て、なんか雨も降りそうだし、早いうちに撤退しよう。

「くぅーん?」

 俺に抱かれているモモが声を上げる。
 いいの?と問いかけているようだ。

「……ああ、あの人達は見捨てる。モモは……反対か?」

「…………わん」

 少し間があってから、モモは返答する。
 まかせる、と言っているようだった。
 モモが同意してくれたのに、ちょっとだけ安心した。

「分かった。じゃあ、モモ。俺の合図に合わせて『影』を解いてくれ。それと同時に俺も『潜伏』を解く。その後は、一気に走るぞ」

「わん!」

 モモも同意し、俺は『潜伏』を解こうとする。
 その瞬間―――戦況に変化があった。

「ん?」

 背後に控えてたあのハイ・オークが動き出したのだ。
 男たちの顔に緊張が走る。

 何をする気だ?
 ハイ・オークは数歩だけ前に進み、ゆっくりと息を吸った。
 その瞬間、俺の全身に怖気が走る。

 ―――ッ!!マズイ!!何か来るッ!
 とんでもなく『ヤバい何か』が!

 その証拠に、他のオークたちは一旦戦闘を止め、男達から距離をとる。
 そして何かに備える様に腕をクロスさせる構えをとった。
 男達はオークたちの謎の行動を訝しげに見つめている。

「モモ!俺の全身に『影』を纏わせろ!今直ぐに!」

 モモも、本能が危険を察知したのか、俺が指示を出すのとほぼ同時に『影』を操作した。
 モモの『影』が俺の全身を覆う。
 その状態で、俺はモモに覆いかぶさる様にして、その場にうずくまった。

 次の瞬間、ハイ・オークが『吠えた』。

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!!』

「~~~~~ッッ!!」

 その叫びは物理的な破壊となって周囲に波及した。
 ビリビリと、大気が冗談抜きで震えた。
 石畳が剥がれ、砕け、剥き出しになった地面に亀裂が走る。
 ショッピングモールや周囲の建物のガラスは一枚残らず砕け散り、地面に降り注いだ。

 僅か数秒。
 永遠にも思えた一瞬の叫びは、周囲に大災害をもたらした。

「―――ッ!ハァ、ハァ、ハァ……モモ、大丈夫か?」

「……くぅーん……」

 弱々しいが、返事があった。
 何だよ、今の『叫び』は……?

 あんな物理法則を無視した叫びがあるのか?
 いや、アレもおそらくは『スキル』だ。
 名称は分からないが、広範囲に破壊をもたらす『叫び』のスキル。
 それをあのハイ・オークは使ったのだ。

 少しだけ身を乗り出して、前方を見る。

「なっ……!?」

 入口の前で戦っていた人達は、全員全身から血を吹き出して倒れていた。
 死んでる。
 あれは間違いなく死んでいる。

 ハイ・オークが手を上げる。
 それを合図に、他のオークがショッピングモールへと流れ込んだ。
 籠城している人間を狩るつもりなのだろう。

 他のオークたちがショッピングモールへ入るのを見て、ハイ・オークも歩を進める。
 だが、不意に、その足が止まる。
 どうしたんだろうと思ったら―――その視線が、『俺の方』を向いた。

「ッッッ!!!」

 視線が、合った。
 ここから奴まで優に数十メートル以上離れているのに。
 『潜伏』スキルを使っている筈なのに。

 明らかにヤツの視線は、俺の方を向いていた。

 そして奴は―――嗤った。
 俺を見て、心底楽しそうに嗤ったのだ。

 ヤバい、ヤバいヤバい、ヤバいヤバいヤバい!

「ハッハッハッハァハァハァ」

 ドクンドクンと張り裂けそうな程に心臓が高鳴る。
 呼吸がおかしい。

 死。
 その一文字が、頭の中に浮かぶ。

≪熟練度が一定に達しました≫
≪恐怖耐性がLV2から3へ上がりました≫

≪熟練度が一定に達しました≫
≪恐怖耐性がLV3から4へ上がりました≫

≪熟練度が一定に達しました≫
≪ストレス耐性がLV2から3へ上がりました≫

≪熟練度が一定に達しました≫
≪ストレス耐性がLV3から4へ上がりました≫

≪熟練度が一定に達しました≫
≪敵意感知がLV3から4へ上がりました≫

≪熟練度が一定に達しました≫
≪危機感知がLV4から5へ上がりました≫

≪熟練度が一定に達しました≫
≪恐怖耐性がLV4から5へ上がりました≫

≪一定条件を満たしました≫
≪スキル『逃走』が獲得可能となりました≫

≪一定条件を満たしました≫
≪スキル『防衛本能』が獲得可能となりました≫

 頭の中にたくさんアナウンスが響いた。
 だがそんなの聞いてる余裕なんて、今の俺には無かった。

 死にたくない。
 死にたくない。
 それだけが、頭の中を埋め尽くしていた。

 雨が降ってきた。
 しずくが俺の顔に当たる。

「ヒッ!」

 一瞬、あのハイ・オークの攻撃かと思って、情けない声が出た。
 ハイ・オークは、そんな俺の姿を鼻で笑い、視線を外した。
 そしてショッピングモールの中へと消えて行った。

 助かった。
 どうやら、俺は見逃されたようだ。

 即座に俺とモモは『潜伏』と『影』を解く。
 そして、一目散にその場から逃げ出した。

 ヤバい。
 アレはヤバい。

 逃げた。
 全力で逃げた。
 降りしきる雨の中、少しでも遠くへ。
 あのハイ・オークの眼の届かないところに。
 アイツは違う。 他のモンスターたちとは明らかに『違う』。

「ハァッ…ハァッ……!」

 駄目だ。
 今のままじゃ駄目だ。

 死ぬ。いつか必ず死ぬ。

 死にたくない。
 死にたくない。

「くそ……くそっ……!」

 強くならなくちゃいけない。
 モモと一緒に。
 今よりももっと強く。

 生き延びる為に。
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