最終章 君と描いた物語 (3)
「お、穂村!」
聞き覚えのある声に僕は振り返った。大隅だ。後ろに秋野と中津川もいる。彼らも墓参りに来たのだろう。皆それぞれ花や供え物などを持っている。
「やあ大隅」
「やっぱり来たか~、俺は信じてたぞ」
大隅は僕の肩をたたいた。つい一週間前に会ったばかりなのに、懐かしい。地元で会うのは久しぶりだ。
それから、皆で里奈の墓を綺麗にした。もう既に彼女の家族がしていたのだろう。そこまで汚れてはいなかったが、それでも気持ちの問題だった。磨かれた彼女のお墓は、青い空の下に立派に輝いていた。
そして花立てに花を飾り、お供え物を供え、線香を立てて合掌した。里奈の魂は救われた。それを考えると、気持ちは楽だった。
「やっと吹っ切れた?」
秋野が言う。
「まあね」
「無理はしてないみたいだね」
中津川が言って、笑った。今日は久しぶりに五人全員が集まった、そう思った。僕たちはそこでずっと語り合った。もちろん、里奈のこともだ。小学生のころからの思い出を、皆で話した。
「きっと、川合が一番喜んでるよ。お前が来たこと」
大隅が言った。
「そうそう、里奈と穗村は仲良かったもんね」
秋野が里奈の墓を見つめながら、懐かしそうに呟いた。
「そうだね」
笑顔を僕に向けて、秋野が言う。
「だから、私たちが来るよりも、穗村が来た方が里奈も喜ぶと思うよ」
「そんなことはないよ」
僕は笑って返した。里奈は僕だけでなく、皆を大事に思っていたはずだ。でも、確かに、僕と里奈は、この中で一番に古い付き合いだった。そして、二人でいることに幸せを感じていた。
このまま里奈が生きていたら、僕たちがどうなっていたのだろう。そんなことを考えそうになる。でももう、それは『もしも』の話だ。あの死神のような存在が新たな世界を作ってくれない限り、分からない。
「良かったよ、穗村君が変わってくれたみたいで」
中津川が言う。その時、里奈の言葉が思い出されたが、口には出さなかった。人は簡単に変わるものではない。でもあの日の出来事も、僕たち二人の秘密だ。
「さあ、みんな集まったし、飲みにでも行くか?」
「ごめん、僕明日も仕事だから」
「ノリが悪いな~穗村は」
「全員が全員あんたみたいに暇じゃないってことよ」
大隅が笑い、僕たちも笑った。
僕たちはそのあと少し談笑していたが、しばらくしてそれぞれ別れた。




