その8 ワンゲル
王城に戻ると連獅子さんが、各町村に送り出す物資の采配を終えていた。遅刻魔の王太子も仕事早い。連獅子さんと黒髪さんが何やら話し込んでるけど、ちらちらと私、見られてる? 何、何?
何かやりました? うん、やりましたよねぇ。
「聖女様、お疲れ様でした」
「ヒンス様もお疲れ様です」
「ラジャスタさん達から聞きました。凄い浄化だったそうですね」
「ハハハ……そうみたいですねぇ」
「魔王討伐も期待が持てます」
「それは、また別物かもしれませんし、頑張りますけど」
「おい、サーヤ!」
ひっ!? 連獅子さん、声大きい。
「はい、ここに居ます」
「こっちの最終確認しておいてくれ」
物資一覧表、渡されたのでチェック入れます。当たり前だけど、非常食とか携帯トイレとかは無いものね。
「ペットとかはどうするんですか?」
「ペット?」
「あ、愛玩動物とか、家畜とか」
「愛玩動物を飼っているのは貴族ぐらいだな。家畜は今回は置いていく。基本放牧だからな。」
「なるほど。家畜の中に山羊とかいます?」
王太子が山羊なんて気にしたことないよね。聞く人間違えたかな。
「いますよ。どの村でも馬はいなくても牛と山羊はいますね」
ナイスです、ヴォカロちゃん。
「出来れば避難民の移動に山羊を何頭か連れていけませんか? 赤ちゃんや幼児の栄養補給になると思うんです」
「赤ん坊と幼児?」
「お母さん達もストレス、えっと、緊張とかでお乳が出なくなるかもしれません。幼児期は栄養が特に必要ですし」
「乳の出ない母親はもらい乳するか山羊の乳で代替えしていますよ」
そうそう。私の言いたいことそう言うことです。
「サ、サーヤ、お前、詳しいな。まさか、子がいるのか?」
「いませんよ!」
「殿下、失礼ですよ。これは一般常識です」
「おお、そうか」
一町二村分の物資が準備され、其々出発した。私達も討伐隊本隊として第一の町に向けて出発するところなんだけど、さっきから連獅子さんのせいでちょっと揉めている。
「どうして駄目なんだ」
「王太子殿下にご負担を掛ける訳にいきません」
何を揉めてるかと言うと私を誰が一緒に乗せるかってことなのよね。黒髪さんでいいんだけどな。
「僕でもいいんですよ」
「よ、宜しければ私でも……」
何故か、ヴォカロちゃんとラジャスタさんまで手を挙げてくれました。
「じゃあ、交代でお願いします。もう、早く出発しましょう」
何で皆、ニッコリしたり、頷いたりしてるの? まあ、いいや。行きましょう。
連獅子さん、ヴォカロちゃん、ラジャスタさん、黒髪さんの順番で乗らせて頂くことになりました。めでたし、めでたし。
先に馬に乗ってる連獅子さんにひょいって摘み上げられたんですけど。猫じゃないんだよ。それと、向きが逆だろー!
「ジャッカス様、向きが、向きが逆です」
「へっ、わぁー、何でお前こっち向いてる!」
「貴方が乗せたんですよ」
連獅子さん、慌てて私を持ち上げて向きを変えましたけど、雑ですよ、雑! まあ、悪いと思ったんでしょうね。その後、ずっと無言でしたから。
隊は、順調に進みワンゲル町に到着。道中、一応浄化を少しだけしてみたんだけど、お花畑の中を進行してるみたいになっちゃった。ごめんなさい。
ヴォカロちゃんが、『移動中、暗い気持ちにならなくて済みますよ』って言ってくれたのが救いです。
町の人達もきっちり先触れが伝わってるようで、避難準備も進んでるようで良かった。当事者の人達に納得してもらうのが一番難しいのよね。町長さんも自ら動いて説得してくれたそうだし。
実際に困ったこととかあったら聞いた方がいいのよね。現場の意見大事。
町に着いた途端、私の周りに人だかりが出来て、『聖女様』って言って拝みだしたのだけは、お願いだから止めてください!




