神殿の顛末
次回が最終話となります。
翌日、以前討伐会議をした部屋で今回の事件の報告会議が開かれた。ジャッカス、宰相、パーセブ伯爵、黒髪さん、第二、第三騎士団の其々の団長、後はお名前までは覚えてないけど大臣の皆さんと何人か文官の方達が揃っていた。
王太子妃誘拐事件(私の事ね)については、黒髪さんから説明がされた。
先ず、治癒室にいた親子は、神殿長に唆されての行動だったそうだ。母親は、熱狂的な女神信者で王家に騙されている女神様を救うのだと本当に信じていた。まさか、私が監禁されるなんて思ってもいなかったそうだ。理由はどうあれ、誘拐に加担したことは重くみられ、サードアまでの道路建設の労働に就くことになった。子供と離れ離れにならなかっただけでも良かったと思う。
私の姿が見えなくなった時、神殿長が『聖女は召喚した世界に帰った』と言ったが、この召喚自体が魔王の仕業と共通認識していた騎士団の皆さんは誰も信じなかったそうだ。
ヴォカロちゃんが、薬の入っていた瓶の欠片を見つけ、ラジャスタさんが付着物は催眠作用のある薬だと特定した。騎士団の方達が徹底してあの部屋を調べた結果、薬棚の後ろに隠し通路を見つけ、通路内の捜索が始まった。
しかし、通路内は複雑で救出まで時間が掛かってしまったとの事だった。ジャッカスが私を見つけられたのは、扉の隙間からきらきらと光る不思議な光が漏れ出ていたからだそうだ。あの時、光って良かった。だって、自在に光れる訳ではないから奇跡、偶然?
実行犯は、神殿長とその側近達でほとんどの神官達は何も知らされていなかったそうだ。
黒髪さんからパーセブ伯爵に変わって、寄付金横領の捜査報告がされた。
地下通路の中には幾つもの部屋があり、その一つに神殿創設当時からの資料がきちんと残されていた。まだ精査中との事だったけど、わかっている範囲では、創設当初から代々神殿長になった者によって資金が隠匿されていたらしい。
元々は、国から聖女コインスデンスに宛がわれていた筈の資金を着服していた。それが慣習となっていて聖女がいない今日までは、寄付金と国からの援助を神殿長とその側近達が抜いていたそうだ。
只、その資金の使い途なのだが、私腹を肥やしていた訳ではなかった。前の代よりも神殿を豪華にする事が女神への奉仕だと信じていたのだという。確かに礼拝堂のレリーフに金が贅沢に使われていたのを思い出したわ。
国は女神信仰を禁止するようなことはしなかった。国民の大半が信じ拠り所としている信仰を守らないと国政自体が揺らぐと考えての事でしょうね。
但し、今後の資金の流れを明確にする為、暫くの間、王宮の経理担当から文官を派遣することになったそう。餅屋は餅屋ってことかな。専門家に任せるのが一番よね。
神殿長と側近の人達は、目的はどうであれ罪は罪。私も拉致られたしね。魔物に壊された北方の鉱山で労役に就くことになったと聞いた。皆、これは女神様からの試練だと感謝の言葉を述べて向かって行ったそうだ。
私としては、初代の神殿全体でコインスデンスを食い物にしていたという思いが益々強くなった。あの部屋で見た壁に書かれていた言葉が忘れられない。『聖女じゃない』子供だったコインスデンスの精一杯の抵抗。今更、彼等に報復出来ない事が一番の心残りとなったのは間違いない。




