その27 神殿からの要請
神殿を訪れる機会は、思いの外早く来た。神殿側から瘴気や魔物の被害が相次ぎ、縮小されていた豊穣祈願の式典をきちんと執り行いたいとの申し出があったのだ。
筋は通っているのよ。でも、生誕祝賀会が終わって直ぐのこの時期、奇しくも式典の時期はあってるんだけど。まあ、派手にジャッカスと一緒になります宣言をした後に開くって言われると、何か裏が有るんじゃないかと勘ぐるのは当然ですよね。
打ち合わせの為に訪れた神殿には、ジャッカスと宰相府からパーセブ伯爵、そして黒髪さんを始めとする第一騎士団の面々が護衛に付いてくださってる。なかなかの大所帯。騎士の方達は、私の後ろだけではなく、聖堂入口、壁際、通路の出入り口に素早く配置された。
「随分と大仰な事で」
「ああ、我が婚約者殿はどこぞの阿呆どもに狙われているのでな。気遣いは無用だ」
始めから挑発していいのかしら。考えあっての事よね。ちょっと不安なんですけど。神殿長の話は、要するに豊穣祈願の折、聖女に祝福をして欲しいって事らしい。その際、清めの為に三日前から神殿で過ごすようにとの事。
「却下」
「はい?」
「却下と言ったんだ。耄碌したのか。さっきも言っただろう。俺の婚約者は狙われていると」
「ですが、祝福には清めが必要で」
「ならば、我々全員で寝食を共にし清めを受けよう」
「み、皆様ですか?」
「もう少し連れて来ようか?」
「いえ、結構でございます」
ご、強引なんですけれど、取り敢えず、神殿での警護は万全と言うことでいいのかな。これで心置きなく女神像を調べることが出来るわ。豊穣祈願式は十日後に決まった。私達は、一週間後に神殿入りをするってことね。
王城に帰ってからは、かなり忙しかった。神殿の内部の造りは全て把握出来ているわけではない。常に警護の人は側に付くけど、何処に騎士さん達を配置するのが効率的か。以前数日でも神殿で過ごしたことのある私の記憶も交えて検討された。
私の目的は、女神像を調べることなんだけど、ジャッカス達は何か別の事を調べたいみたい。詳しい事はわからないけど、これはいい機会だったのかもしれないわ。
私のお世話係りとしドゥマさんとトワさんが同行してくれることになった。神殿側は、修道女を付けるので侍女の手配は不要と伝えて来たんだけど、これは私が慣れている人がいいと言ってお断りした。神殿側の人に付いて回られては、自由に行動出来ないし、何かされても困るから。
腕に自信のあるトワさんは、『私がサアヤ様を守りますから』とかなり張り切っている。暗器は一通り揃っているとか何とか物騒な事を言っていたら、アンさんに『お世話もしかっりするんですよ』と注意されていた。何時ものやり取りに安心する。
二人の後ろをふと見るとそこで何やらメモを取っていたドゥマさんと目が合った。
「今回の神殿への侵入はご安心を。秘密は私が暴きます」
「えっと……気をつけてね?」
クールピューティのドゥマさんがニヤリと笑った。ちょっと怖いかも。彼女なりに燃えてたみたいだけど、侵入ではないんじゃないかな何て思ってたら、アンさんが呆れたように大きな溜め息をついた。
こうして、神殿への二度目の侵入じゃなくて、滞在する日を其々の準備の元、向かえることになる。




