その25 生誕祝賀会
ジャッカスの生誕祝賀会、当日となりました。また、真っ赤な正装で現れるのかな。似合わなくはないんだけど、あれは止めた方がいい気がするんだけどな。頭の先から足先まで真っ赤だし。って思ってたら、黒でした。赤い髪に黒い礼服がとても映えてちょっと格好いいんですけど。マイアさんが『サアヤ様のお色ですよ』って囁いて、私の髪色にしてくれたのだと判明しました。
「……今日は、可愛いんじゃなくて」
「……?」
「とっても綺麗だ!!」
そんなに大きな声で言わないで! 皆さんがクスクス笑ってるじゃない。は、恥ずかしい。
さて、貴族達の参列する祝賀会の前に王城のテラスで国民に向けて挨拶があるんだけど、あの良く高いところから民衆に手を振るやつよね。ドキドキしながら、ジャッカスと並んでテラスに立った途端……。
「王宮から女神様を解放しろ!」
「女神様を神殿にお戻ししろ!」
「王家は女神様の力を一人占めする気だ!」
群衆の中からシュプレヒコールが響く。神殿の息の掛かった者の扇動で、民心が捕まれそうになっているように見える。女神様呼ばわりしてるし。
「静まれ! 神殿の一部の者達の扇動に乗るな。王家が女神の力を独占するつもりなど毛頭ない。第一、彼女は聖女であっても女神ではない。そして、一人の人間だ! いま、私の隣に立っているのは彼女の自由意思だ! 虚言に惑わされるな」
「女神様は我々の為に神殿で寄与されるべき方なのだ!」
「そうだ、我々が女神様をお救い致します!」
段々、腹が立ってきた。自分達の都合で母を酷使し、また私を使おうとしているとしか思えない。民衆の力を操って肯定しようとしたってそうはいかない。もう、実行あるのみ!!
「ジャッカス!」
「えっ?」
私は、思いっきり飛びついてジャッカスに口づけをした。
「……!?」
「私は、この世界もこの国の人達も好きだけど、一人の女性としてジャッカスの事が大好きなの! 二人で幸せに成れれば、きっとこの国にも幸せのお裾分けがあるわ! 皆でこの国を盛り立てましょう! さあ、皆、祝福して!」
「「「わっー!!」」」
呆然としていたジャッカスが、にっこり笑って私を抱き締めた。
神殿の回し者達の声なんて掻き消されたわ。私は、運命かも知れないけど、自分で道を作るのよ。駒になんてならないんだから。
「国を盛り立てるのか。大きく出たな。やっぱり、お前は最高だ!」
今度は、彼の方から口づけをされた。足が浮いているのはご愛嬌よね。
祝賀会は大盛況となった。何だかんだ言っても反王権派の人達も神殿派の人達も結局は恩恵に預かりたいのよね。まあ、私にそんな力があるかはわからないんだけどね。魔王復活なんて事があったら、ない方がいいけど、万が一あったら頑張るから。
お母さん、今、貴女は幸せですか? 貴女の捨てたこの世界で私は幸せを掴み取ろうと思います。誰かの駒なんかにはなりません。何かに迷い選択を間違ったとしても私には、指摘してくれる人達がいます。助けを求めれば、死に物狂いで助けてくれる人達がいます。
そして、私を愛しくれている人が、あれ? 愛してるとは言われてないな。でも、たぶん愛してくれてる人がいるから。確かに裏切られたのは可哀想だと思うけど、私は、自分の足で立って前に進みます。さようなら。そして、ありがとうコインスデンス。
なんて格好つけたんだけど、今、私の足は浮いてます。ホール中央でのお披露目のダンスは、ジャッカスの足の上どころではなく、宙に浮いたまま振り回されている状態です。やっぱり、この人馬鹿なの! 滅茶苦茶楽しそうに笑ってるから、私もつられて楽しくなって来ちゃうってどうなのかしら。
宰相さんも黒髪さんも、ヴォカロちゃんにマイアさんもなんか皆、笑ってるからいいよね。
キャー! そんなに高く振り上げないで!!
本当に馬鹿なんだから!




