その2 聖女
で、連れて行かれた歓迎会? 凄いんですけど。テレビで見たことあります。晩餐会。煌びやかなドレスを着たご婦人達に正装の殿方達が大勢着席していらっしゃる。間を行き来している配膳係の人達の黒い給仕服もかっこいい。
「聖女様のご入場です」
さっきの召喚の時にいたおじさん、宰相のスィタボルさんって言うんだったかしら。手招きしてる? 上座に座っているのってどう見ても王族の方達よね。頭に冠乗ってるもの。普通に挨拶すればいいのかな。本で良く見るカーテシーとかしなくちゃいけないの!?
「聖女様、こちらが我が国タンダルディアのボースト・ド・タンダルディア国王陛下にあらせられます。お隣はヴァニティ王妃殿下でございます」
「初めまして、私、千東紗綾と申します」
「随分と小さいな。……聖女殿、よくぞ来られた。その力、存分に発揮してくれ」
「本当に。幼き身で聖女とは。ジャッカスの足手まといにだけはならないよう心しておくように」
王様、一言目に小さいって言ったの聞こえたから。
ジャッカスって誰ぞや? まだお会いしていませんよね。いや、その前に幼きって何? 私、二十三才なんだけど。伝えた方がいい? まあ、確かに小さいけど。うっ、我ながら気にしてる。
「皆様方、聖女様に敬意を示しますぞ!」
ザッ!!
びっくりした! 皆急に立ち上がるんだもの。
「タンダルディアに栄光を!」
「「「タンダルディアに栄光を!」」」
「聖女様のご威光に礼賛を!」
「「「聖女様のご威光に礼賛を!」」」
バーン!
後ろの扉が勢い良く開いたけど。いいの? 誰? あんな開け方して怒られないの? わっ、真っ赤な髪って地毛? 染めてるの? あの毛量、歌舞伎の連獅子みたい!
「父上、母上。遅くなりました!」
「ご苦労だった。首尾は如何に?」
「勿論、殲滅して参りました。ハハハ」
「流石ですね」
国王様も王妃様も大満足って顔してる。連獅子さんが、パッとこっちを見た。
「お前が聖女か? 随分、小さいな」
わかってるって。
「千東紗綾と申します」
とりあえず、偉そうなので頭を下げておこうっと。
「セントーサアーヤ、言い辛い名前だな。ううん、サーヤでいいな。俺は王太子のジャッカスだ」
ジャッカスだったぁ。なんかしゃべる度に髪の毛がユッサユッサしてやっぱり連獅子だわ。
あれ、いつの間に連獅子さんの後ろに立ってる人がいる。黒髪に茶色の目。日本人ぽい人いた! もう既に懐かしい気がする。だって、ほとんどの人が青とか黄色とかカラフルな髪色なんだもん。連獅子さん、真っ赤だし。
じっと見てたら、黒髪さんと目が合っちゃった。慌てて目逸らしちゃった。黒髪さんたら超美形。この国ってやけに綺麗な人だらけなんだなって思ってたのにこの人、ダントツでした。
「シンセア卿もご無事で。ジャッカスを良く手伝ってくれました」
「恐れ入ります」
超絶美形の黒髪さんが、私の方に来た。
「聖女様にご挨拶申し上げます。第一騎士団団長を務めますライアス・フォン・シンセアと申します。お見知りおきを」
「はい。よ、宜しくお願いいたします」
その後は、皆様方と歓談となりました。お腹空いてる筈だったんだけど、だってお昼抜きだったし、なんか緊張して喉を通らない。
夜遅くになってから漸く、シンプル部屋に戻って部屋着に着替えさせてもらえた。ほっとしているところにノックの音。
「はい、どうぞ」
「失礼いたします」
さっき、広間まで案内してくれた人?
「宴席では、あまり召し上がられていなかったようなので」
「あっ」
サンドイッチと綺麗に盛られた果物。
「ありがとうございます」
「お飲み物は紅茶で宜しいでしょうか?」
「はい。お願いします」
なんて気の利くお姉様なんでしょう。
「今になってお腹が空いてきていたので助かりました」
「宜しゅうございました」
「パーセブ夫人で宜しいんですよね」
「まあ、もう名前を覚えて頂けたなんて光栄でございます」
「他の方がお呼びになってらしたので」
「遅くなりましたが、改めまして、宰相補佐を務めておりますパーセブ伯爵の妻、マイアと申します」
「伯爵夫人!」
「ふふふ。まあ、肩書きだけは大層でございますが、元は男爵家の出でございますからお気遣いのございませんよう」
「男爵様でも凄いです。国によりけりではありますけれど、私の住んでいた国ではもう爵位は無くなっていまして、皆立場的には平等となっていますので」
「左様ですの。少し、羨ましいですわ」
身分制度、凄く大変な気がします。良くわからないけど。
「あの、失礼かも知れませんが、私、何もわからなくて。これからどうなるのでしょうか?」
「宰相閣下からは?」
「詳しい事はまだ何も」
「お着きになられたばかりの聖女様を気遣われたのでしょう。私も聖女様のお世話をさせて頂くお役目の一人となりますので、お気になられたことがございましたらお気軽にお声掛けくださいませ」
とりあえず、カミングアウトしておいた方がいいよね。この人なら、皆にも上手く伝えてくださりそうだし。絶対好い人と断定します。
「では、先ず皆様方に訂正して頂きたいことがございまして」
「どのようなことでしょう?」
「私、背が低くて童顔なので、皆様子供かと思われているようなんですが、……二十三才の大人なんです」
「まあ! 失礼致しました。ふふっ。私と同い年でしたのね」
「へっ、同い年!?」
ショックです。かなりの衝撃です。素敵なお姉様なんて思っていたら同い年の方。これじゃ子供に間違われても仕方がない? いやいや、見た目じゃない。私は、ちゃんと社会人で大人の女性なんだから。
「あの、マイア様とお呼びしていいですか? 私のことは紗綾で」
「はい。では、私はサアヤ様とお呼びしますわ。仲良くしてくださいませね」
「はい! 勿論です」
お友達? 確保しました。




