その17 祝賀会
王城への馬車に乗り込もうとした時、黒髪さんから王城に着いたら殿下を交えてお話したい事がありますと言われた。話なら王城までの道すがらと言いたいところだけど、未婚の女性が一人乗る馬車に男性が乗るのは外聞が悪いので着いてからと言われたのだろう。今は誰か話し相手が欲しいのに。一人だと余計な事ばかり思い描いてしまって不安でしょうがない。この一時間ほどの時間が途方もなく長く感じ、苦痛で仕方なった。
王城に着いたからと言って直ぐに時間が取れる訳でもなかった。気を紛らわせないと皆の前でまた光っちゃったらどうしようとかつい考えてしまう。そうよ、これから授与式があるんだもの。それにサクレッドール公爵にも話を聞かなくちゃ行けないし。違うこと、違うことって考えようとすればするほど不安が押し寄せてくる。もう、嫌だ。
漸く式典の準備が整ったと迎えが来た。大広間の扉の前に連獅子さんが立っていた。やけに真剣な顔で私を見つめてから、にっこりと笑った。
「サーヤ、大丈夫だ。後で話をしよう」
もう、黒髪さんから話を聞いたのね。私は軽く頷いて目を逸らした。何か言ったら泣いてしまいそうだったから。
宰相のスィタボルさんの進行で式典は淡々と進んでいった。私の番になり、国王様から『伯爵位を授ける』と言う言葉が出た途端、会場に大きなどよめきが起きた。当たり前だわ。皆、びっくりするわよ。前もって知らされてる私だって驚いているんだから。今は注目されたくないのよ。受けなくちゃ王家に恥を掻かせることになるし、仕方ないのに。自ずと声が小さくなる。
「王家への忠誠を誓い、謹んでお受けいたします……」
式典が終わると祝賀会へと変わり、私の周りにたくさんの人が挨拶に来た。媚を売る人、感謝してくれる人、そして、回りくどく嫌みを言う人。多過ぎて名前も顔も覚えられない。揉みくちゃにされかけていたら、黒髪さんが声を掛けて来てくれた。
「聖女様、こちらはサクレッドール公爵閣下です」
「!!」
「聖女様、お初にお目にかかります。サクレッドール公爵家当主のフォークロア・ドゥ・サクレッドールと申します」
「ご挨拶が遅れました。千東紗綾と申します」
「なるほど、コインスデンス様にも似ておられるが、フェイト様には生き写しですな」
「コインスデンス様について伺いたいことが……」
「ここでは落ち着きません故、近々、我が家へご招待申し上げましょう」
「ありがとうございます」
公爵は早々に立ち去った。サクレッドール公爵、もしかすると私の遠い親戚かもしれない人。白髪交じりの黒髪に茶色の瞳。日本人ぽい色合いなのね。色のせいか、私は少し懐かしい気がしたんだけど、公爵はなんだか切なそう目で私を見てたような気がする。
「聖女様、後でヒンスがお迎いに参りますので」
「わかりました」
そう言って黒髪さんも人混みの中に紛れて行った。公爵がいらしてちょっと私を取り巻く輪が広がってくれたと思ったんだけど、いなくなった途端、縮まってきた。『こんな子供が……』聞こえよがしなのか知らないけど、ちゃんと聞こえていますよ。まだ、子供扱いする人がいるのね。マイアさんのお陰で私の年齢は浸透した筈なんだけどな。何方か知らないけど情報の更新出来てないわよ。本来、若い娘が年齢言い回るっていのも頂けないんだけどね。早くヴォカロちゃんが迎えに来てくれなくちゃ本当に潰されちゃうかもしれない。お願い、早く迎えに来てください。




