その16 聖女の祝福
黒髪さん達、騎士団の討伐隊が神殿を訪れた。
今日から明日の午前中までここで過ごす事になる。私、聖女の祝福を受けてから王城に戻り、叙爵や叙勲を賜る。勿論、私も一緒に行くのだけど、爵位なんてやっぱり要らないわ。
「皆様、お疲れ様でございます」
「聖女様もお勤めご苦労様です」
こうやって騎士の方達と一斉に顔わ合わせるのは久しぶり。まだ、そんなに日が経っているわけでもないのに懐かしく感じるわ。魔王討伐に一緒に行ったなんて嘘のよう。
「聖女様、なんか聖女様ぽくなりましたねぇ」
「えっ? そうですか」
「何を言っている聖女様は元から聖女様だろうが」
ヴォカロちゃんとラジャスタさんの掛け合いも懐かしく感じる。そうそう、こんな感じだった。
皆さん、明日までは比較的自由に過ごせるのに、体を動かしたくて仕方がないと言う方が何人もいた。神官さんに話を通したら有難いとばかりに力仕事を手伝ってもらうことになっちゃった。体力が有り余ってるってこともあるんでしょうけど、何時でも誰かの為に動こうとするのは流石騎士様方らしいと思う。
「聖女様、爵位の件、お力になれずに申し訳ございません」
「ライアス様、お気になさらずに。勿論、爵位なんて要らないんですけど。ジャッカス様の独断ですもの」
「……殿下も考えがあっての事だと思いますので、穏便に」
「話は変わりますけど、サクレッドール家の方ってご存命なのでしょうか? 聖女の歴史を学んでいてお名前を見たので」
「はい。コインスデンス様が亡くなった後、親族が養子となり現在に続いています」
「コインスデンス様は亡くなったのですか?」
「はい? その様に習いましたが」
習った。そうか、一番自然な形で伝えていったんだろうな。或る日、突然消えちゃったより神様に召されましたの方がいいよね。
「式典にサクレッドール公爵閣下もご参列なさいますので、ご紹介致しましょうか?」
「是非、お願いします」
何処まで知っているかわからないけど、末裔の方に直接話が聞けるのは大きいわ。真実に一歩でも近づければいいな。
騎士の方々、見るからにがっかりしてますね。皆さんにとっては少ないですよね。それでも何時もより多いんですよ。夕食の食卓に付いた皆さんは目の前に置かれた食事に言葉を失っているわけで。出来るものなら私の采配で量を増やしてあげたいけど、ごめんなさい。
皆さんと夜遅くまでおしゃべりして、『明日は式典があるのですから、いい加減寝なさい』って黒髪さんに叱られて解散になったけど、気の置けない人達との一時に思いの外リラックス出来たと思う。その晩はぐっすり眠ることが出来た。やっぱり、何処かで緊張してたのかな。
翌朝は『お勤め』を終えた後、聖女の正装に着替えた。この姿にもだいぶ見慣れてきたみたい。神官さんに伴われて聖堂に着くと既に騎士の皆さんが揃っていた。正装した騎士さん達が整列している姿は圧巻です。私は、女神像の前に立ち、祈りを捧げます。
「聖なる双子神コインスデンスとフェイトの御名に於いて知らし召す。汝清き心にあらば光の恵みが降り注ぎ、聖なる御手の加護が満ちる時汝の道も示される。共に祈り、願いたもう」
「「聖女様!!」」
「えっ?」
気付くときらきらした光が私を包んでいた。神殿長を始めとする神官さん達が平伏した。騎士さん達は、私を拝んだり、呆然と見つめたりしている。黒髪さんが私の前で跪いた。
「双子神のご加護の元、祈り、願い奉ります」
締め括ってくれたんだ。
「無事祝福を受けた。これにて我々は王城に戻る」
「「はっ!」」
黒髪さんが手を引いて聖堂から連れ出してくれようとすると、神殿長が行く手を阻んだ。
「聖女様、いえ、女神様であらせられる御方を神殿よりお出しする訳には参りません」
「聖女様は、これより王城にて式典に参加される事は、神殿長殿もご存知であろう。」
「しかし、今、女神様の再来と判明致しました故、聖女様は神殿にお残り頂かなければなりません」
「王家の催される式典を無視なさると言うのか」
「そうではなく……」
「ヒンス、ラジャスタ! 聖女様を王城にお連れしろ」
「「はい!」」
何が起きてるのかよくわからない。神殿長は私を外に出したくないの? 黒髪さんとの緊迫したやり取りからして何か大変なことが起きちゃったんだよね。
「私、王城に行きたいです」
「め、女神様!」
「聖女様の希望を違えるのか」
「……承知いたしました。後程、お迎えに伺います」
黒髪さんに手を繋がれたまま、前後にヴォカロちゃんとラジャスタさんが付いてくれた。残りの騎士さん達も私の周りを囲むようにしてくれて聖堂を出ることが出来た。
「ライアス様、私……」
「先ずは、王城に参りましょう」




