その15 偶然か、それとも運命か
2話投稿します。
二日酔いも少し落ち着いたところで、午後には神殿を訪れる予定なのを思い出しました。聖女には、 叙爵や叙勲される騎士を祝福する役目があるそう。授かる側も一日神殿で過ごし身を清めるとか。私は事前に神殿に入り、式次第とか習う予定なのよね。 聖女と呼ばれてるのに初めて神殿に行くっておかしくない?
お城からちゃんと外に出たのは初めて。 今までは只通り過ぎただけですものね。うろうろは出来ないけどちょっと楽しみ。
神殿は、お城から北東に向かって一時間ほどの高台にあった。 お城と神殿はほぼ一直線上に位置しているみたい。眼下の街は白を基調とし、メインストリートを中心にして南北に広がっていたのね。高台から見下ろすとよくわかる。調和の取れた美しい街だったのね。
聖力の使い方を教えてくださった? 神殿長が、出迎えてくれた。 神殿の外観はギリシャのパルテノン神殿みたいで巨大な円柱が何本も立っている。 中に一歩足を踏み入れたら、白壁一面に美しいレリーフが彫られ、きらきらしているのは所々金箔で彩られているのかしら。荘厳ていう言葉がぴったり。大理石の通路を奥へと進むと、正面には寄り添って立つ二体の女神像が祀られていた。
「こちらがコインスデンス様とフェイト様でございます。 お二方様は、双子神であらせられ、我が国タンダルディアの建国の時より、この国の守護神として見守ってくださっているのです」
「コインスデンスとフェイト……偶然か、それとも運命か」
「ああ、やはり。私、常々聖女様のお顔がフェイト様に似てらっしゃると思っておりましたが、実際にお近くでお二人を見比べますと瓜二つでございます」
「母に……母にそっくりなんです」
「はい?」
「コインスデンス様のお顔が……母にそっくりなんです」
甚く感動している神殿長とは裏腹に、私はゾッとしていた。 もし、母が偶然で私が運命だったとしたら、母はこの異世界転移に関わっていたの? 怖い。でも、知りたい。何故、私がここにいるのかを。
神殿での生活は、早朝からの『お勤め』と言うお祈り、参拝者に対する祝福、黒パンとスープの昼食、そして午後の『お勤め』、勉強会と続く。夕食に黒パンと昼より少し具の多いスープと果物が出され、漸く自由時間となる。この規則正しい生活は以外と私に合ってるみたい。
勉強会では、この国の歴史と神殿との関わりを一から学び、私は夜の自由時間になると聖女に関しての文献を読み漁った。
コインスデンスは、この地の有力豪族の一つであるサクレッドール家の、一人娘だった。元々のここは肥沃な土地だったが、徐々に瘴気が増し、魔物の被害が大きくなり始めた。被害が甚大になるにつれ、人々からの助けを求める声が広がり、五つの豪族の長が集い今後について話し合いが持たれた。
最終的に彼らが出した結論は、自分達が団結し、この異常事態の被害を最小限に抑えようという事で話が纏まり、国の創立に着手することになる。この時、中心となって纏め上げたのが現在の王家の祖先であるサマリゼ・タンダルディアであった。
当時十三才だったコインスデンスは、王都に隣接する自領にある泉で不思議な体験をする。彼女は馬に水をやる為に泉に立ち寄ったのだが、瘴気で濁ってしまった泉が彼女が触れただけで澄んだ清らかな水に変わった。同行していた従者によると、その時彼女自身が金色に輝いていたそうだ。そこで起きた奇跡は直ぐに人々に広まった。この瞬間から、コインスデンスはこの国の希望となった。
彼女の人生は一変した。先ず、瘴気を効率よく取り除く方法について幾つも試され、『消えろ』と願いながら唱える方法が採用される。次に、この力が魔物に対して有効なのか試された。結局、瘴気と同じように願いながら唱える事で魔物も消滅することが判明した。
そこからは、毎日息の付く暇もなく瘴気と魔物の駆除に駆り出され、東奔西走し、いつの間にか五年の月日を費やした。十三才の少女は、十八の乙女となっていた。
これが概要。私は、数ヵ月駆除に携わっただけだけど、肉体的にも精神的にもかなり消耗したと思う。例え、騎士と共にいたとしても五年間一人で戦って来たと言うことよね。怖かったでしょうし、寂しかったよね。
五年後の或る日、コインスデンスは突然消えた。どの文献を読んでもそこだけは曖昧なままだった。コインスデンスの名は、その時以来、歴史から消えてしまったのだ。何かが起こった。亡くなったのだろうか。逃げたのだろうか。それとも……。
そして、もっと不可解なのは、フェイトよ。どの文献にも登場したことのないこの人物が何故祀られているの。双子神と言われているけど、本当にそうなの。私にそっくりなフェイト。底知れぬ恐怖を覚えるのは私だけ?




