その12 魔王討伐
足場の悪い谷底を馬で一列になって進んでいる。私は隊の中程を相変わらず、黒髪さんの馬の前に乗せてもらってるんだけど、一騎前にいる連獅子さんが、何度もこちらを振り向いている。危ないですよって注意しなくていいのかな。
こんな谷底に魔王の棲み家なんてあるのかしらって思っていたら、怪しい扉見つけました。そう、岩肌に複雑な紋様が刻まれた巨大な扉。怪しくない筈がない。ここに入るのってノックすればいいのかな、なーんて。こんな大きな扉、人間には開けられないもの。ハハハ、十メートルくらい上にノッカーは付いてるね。ラジャスタさんでも届かないよね。皆さんもどうやって入るか悩んでいます。
「何処から入ればいいんだ」
「別の入り口は見当たりませんね」
「困りましたね。『開け!』なんて言って開いたらびっくりですよね」
ギーギィ
「「「……」」」
「開きました。……は、入りましょうか」
罠かもしれません。いえ、たぶん只のチートです。
扉を抜けるとホールてすね。近所のスーパーくらいの広さかな。蝋燭の火がゆらゆら揺れていて薄気味悪い事この上ない。
黒髪さんが突然剣を床に突き立てたけど何!?
「四足極小です」
黒髪さんの足元にネズミくらいの魔物が息絶えていますけど、極小もあったのねぇ。
皆さんがまた息苦しそうな状態になってきたので、後ろに離れてもらってから、軽く、あくまでも軽く浄化してみます。空気が澄んだのでこれで前に進めますね。
前方に三つ扉。どれにしようかな、神様の……
バーン!
扉でこの音、連獅子さんが中央の扉を選んだのね。はい、進みましょ。ちょろちょろと四足極小やら、四足小が出てくるけど、大物出てこないなぁ。出なくていいんだけど。
はい、また広間に出ましたぁ。大当たりみたい。さっきの三倍くらいの広さがあるかな。暗くて端まで見通せない。正面に玉座ぽいのがあって誰か座ってるみたい。それにしても、魔王の棲み家ってこんな単純な間取りなの? 玉座があるところまでストレートに来れちゃ駄目でしょ。もっとこう複雑にして侵入者を惑わすとか。侵入者、私達だけど。
四隅から特大の二足が、で、出てきました。他にもいるのかな。暗いの嫌だ。ここは、私の出番よね。許可もらってないけど、怖いんだもん。
「消えろ!」
「聖女様!」
また、間違えました。ここは『弱れ』でしたよね。もう、言っちゃったんだからごめんなさい。大広間が浄化されてますね。二足特大四体も消えましたねぇ。うん? 魔王は、あれ、消えてません。どうしよう。
魔王が玉座を降りてこちらに向かって来ている。いつまで経ってもたどり着きませんね。討伐隊の皆さんも臨戦態勢ではあるんですが、なんか変な空気になってるような。
漸く、五メートルほど先までやって来ました。ちっちゃ。幼稚園児くらいの大きさ。
「貴様か、聖女。今度は何をした?」
「……浄化です」
「瘴気と共に魔物どもを消して歩いておったが、とうとう残った者達まで消したのか。フフッ」
「瘴気と共に消えてたんですか、魔物」
「魔物どもは、瘴気の中で暮らしておったのだよ。瘴気が消えれば一緒に消えてなくなるのは常識であろうな」
常識ではないと思うんだけど。それにしても魔王の声って、高いですね。縮んだから?
「で、一応確認なんですが魔王さんですよね。ついでに何故小さくなったんですか?」
「俺様が二千年この地に住まう大魔王だ。小さくなった理由だと、ハハハ、貴様のせいだろうが。チビに小さい呼ばわりされたくはないわ」
「チビって、酷い」
「酷いのはどっちだ。最後をこんなに姿にしおって」
「ライアス様、この魔王さん消しちゃっていいですか」
そんなにドキッて顔して驚かないでくださいよ。
「止めは殿下にお譲り頂けませんか」
「全然、構いませんよ」
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
「貴様ら何を言っているんだ!」
「お前ら何を言っているんだ!」
おお、ほぼ同時、ハモりましたね。
そう言いながらも、連獅子さんと魔王さん、対峙してますね。ちょっと魔王さん、まだあんなに力残ってたんですね。そっか、浄化しちゃったのに残ってたってことは、かなり強かったってことか。
彼是、十分ほど経ちますか。討伐隊の皆さん、加勢していいのかどうか図り損ねてますね。
「ライアス様、ジャッカス様に加勢しなくてよろしいんでしょうか」
「大丈夫です。もう間もなく勝負はつきますよ。」
本当に連獅子さんの最後の一突きで、魔王さんがポンって音と共に消えちゃった。消える瞬間、私を見て笑ったような……気のせいよね。皆さん、一瞬、間が空いてからの歓声。終わったんだね。
「やりましたね、聖女様!」
「聖女様、ありがとうございました!」
皆さん、何で私の周りに集まって来るんですか!? わ、わ、わ、押さないでぇ! 潰れそうになったところで急に体が浮いたと思ったら、ラジャスタさんが肩に乗せてくれていました。ありがとうございます。命拾いした!
「おい、何で魔王を倒した俺のところに誰も来ないんだ」




