その11 いざ、デモンゴージへ
2話の投稿です。
デモンゴージ、深い峡谷。ここを渡って行くの無理じゃないですかね。先行隊が谷を降りていきましたけど、か、かなり急ですよ。
「大丈夫です。聖女様を絶対落としませんから」
「はい。宜しくお願いします」
今、私は黒髪さんの馬に乗せて頂いてます。出来れば『落としません』じゃなくて、『離しません』に変えてくれませんか。そうしたら、本望なんですけど。
お、落ちる! 直角に降りてる! 鞍に付いているストラップを握り締めてるけど怖い! 黒髪さんが左手で腰を抱え込んでくれてるってことは、右手だけで馬の舵を取ってるの?
「ひゃ~!!」
気を失う寸前で谷底に着きました。明日、筋肉痛確定。
上から瘴気は祓いましたけど、まだ、端っこに溜まってますね。先ずは、瘴気を……何!? 緑の大きい人? トロール?
「二足大だ! 構えろ!」
「よ……わ……れ」
私もって思ったら声が掠れて出ない。さっき、叫び過ぎたから?
あーん、やっぱりちゃんと声に出さないと効き目が弱い。討伐隊が苦戦してるし。
「ううん、うん、あ~」
「無理はするな!」
「でぇも……」
「魔王の討伐が一番だと言うことを忘れるな!」
そうなんですけど。わかってるんですけど。肝心な時にもぉー。
騎士さん達、漸くトロールじゃなくて二足大、倒しました。連獅子さんが止めを差したようです。皆さん、あんなに苦戦してるみたいだったのにかすり傷程度だそうで治癒は大丈夫って言われました。やっぱり精鋭部隊なんですよね。役に立てずにちょっと落ち込んでたら、黒髪さんが飴を持ってきてくれました。
「砂糖に薬草を入れて固めたものです」
「あり、ぐぁとうごじゃいましゅ」
「先程は強く言ってしまい、申し訳ありませんでした」
いやいや、私が悪かったんだから。一生懸命頭を横に降っていたら、嫌だ、な、涙が……うっ、黒髪さんが優しいです。
「何でサーヤが泣いている!」
「聖女様、如何されましたか」
「聖女様、何処か痛いところとかございますか」
「天使様、俺に出来ることがあれば何なりと」
誰か一人変なのが混じってた。グスッ。
甘いけど変に青臭い飴のお陰で喉、復活しました。美味しくないけど、効き目は最高です。今日は、この場所で夜営なんだけど皆も昼間の戦いで疲れてるわよね。ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ治癒魔法を小声でと。
「ヒー」
「こら、サーヤ。お前、声が治ったばかりだろう」
「げっ」
「何だそれ。カエルか」
「ここにもカエルいるんだ」
「はぁ。休める時に少しでも休んでおけよ」
「ジャッカス様も休んでくださいね」
「うーん。大一番の前だからか目が冴えてな」
そうだよね。一両日中には、魔王と対峙するんだもの。皆、緊張もしてるし、興奮もしてるよね。やっぱりヒールで……。
「お前は強いな」
「へ?」
「こんな見知らぬ国に召喚されて、そんな勝手をした人間を助けてる。それも最前線でだぞ。俺だったら拒否するか逃げてたかもな」
「ジャッカス様はきっと逃げてませんよ。それこそ、見知らぬ人間が皆を避難させろって言ったり、訳のわからない力持ってたりしても受け入れて、いつも最善策取ろうとしてるじゃないですか」
「……」
「だから、もし、私の立場になってもきっと逃げずに一番前に立ってますよ」
「そうかもな、ハハハ。でも、本来の俺は考えるより先に動いてしまうからな。やっぱり、お前は凄いよ」
「褒め言葉はそのまま頂いておきますね。フフッ」
なんて連獅子さんとおしゃべりしてたら、いつの間にか寝ちゃってました。目が覚めたら、隣で目がバキバキの連獅子さんがいて……わぁ、私、連獅子さんに抱き付いて寝ちゃってた!
「すみませんでした! 寝づらかったですよね」
「だ、大丈夫だ。お、俺は行く。ま、また後で」
王太子様に抱き付いちゃってたけど、不敬罪にはならないよね。大丈夫だって言ってくれてたもの。今日こそは、足手まといにならないようにしなくちゃ。魔王、待ってなさいよ。やっぱ、待ってなくてもいいけど。出来ることを頑張ろうっと。




