第6話 魔力は才能だけじゃねぇ!
「整列!」
朝食後、訓練場に集められた体術クラス全員へ、ガイゼン教官 の怒号が飛ぶ。
昨日まで走らされ、殴らされ、制御させられたが、今日は様子が違った。
訓練場中央には、水晶板のような装置が並んでいる。
「今日は座学兼測定だ」
周囲から安堵の声が漏れる。
「助かった……」
「やっと休める……」
教官は即座に怒鳴った。
「立って受ける座学だ」
空気が死んだ。
「まず、魔力について教えてやる。勘違いしてる馬鹿が多いからな」
教官は腕を組む。
「魔力は便利な謎の力じゃねえ。体と精神が生み出す生命エネルギーだ」
俺は少し眉を上げた。
「筋肉と同じだと思え」
教官は続ける。
「使えば減る。休めば戻る。鍛えれば増える。無理をすれば壊れる」
ざわめきが起きる。
「量だけじゃない。出力、制御、回復速度、適性……人によって全部違う」
「じゃあ、生まれつきで決まるんですか?」
誰かが聞く。
「半分はな」
教官が頷く。
「だが残り半分は鍛錬だ。才能だけで勝てるなら、世の中もっと単純だ」
その言葉に、少しだけ胸が熱くなる。
「属性もある」
教官は黒板に文字を書く。
火、水、風、土、雷、氷、光、闇。
「外部魔法に向いた属性だ。攻撃や補助に使う」
さらに、その横へ別の文字を書く。
無属性。
「そして体術屋に多いのがこれだ」
俺は少し身を乗り出した。
「無属性は派手な魔法に向かねえ。その代わり、身体強化、武器強化、耐久補助に優れる」
エリシアが静かに補足する。
「魔力を外へ放つより、自分の中で循環させる適性が高いの」
教官が頷いた。
「この国で体術が強い理由の一つだ。無属性適性持ちが多い」
なるほど。
派手な火球や雷じゃなく、殴り合い向きってことか。
「次。測定する」
水晶板を指さす。
「手を置け。量、出力、制御、回復推定値が出る」
周囲がざわつく。
「順位つけんのか?」
「やめてくれ……」
「黙れ。現実を見ろ」
一人ずつ測定が始まる。
火属性が高い奴。
回復速度が優秀な奴。
制御が低くて笑われる奴。
意外と面白い。
「次、エリシア」
エリシア・ノヴァ が前に出る。
手を置くと、水晶板が淡い青光を放った。
「総量A、出力B、制御S、回復A、風・水適性高」
ざわつきが広がる。
「Sって初めて見たぞ」
「特待生やべえ……」
本人は無表情だった。
「次、クロウ」
周囲の視線が集まる。
俺は前へ出て、水晶板へ手を置いた。
少し熱を帯びる。
表示された文字を見て、教室中が静まった。
「総量A、出力A、制御D、回復C、無属性適性高」
数秒後、爆笑が起きる。
「制御D!?」
「才能の無駄遣いじゃねえか!」
……うるせえ。
ガイゼン教官がにやりと笑う。
「分かりやすいな。大砲だが照準が終わってる」
「誰が大砲だ」
「否定できねえだろ」
図星すぎて腹が立つ。
エリシアが横から覗き込み、小さく言った。
「思ったより酷かったわ」
「喧嘩売ってんのか」
「いいえ、感想よ」
こいつ本当に容赦がねえ。
教官は全員を見回した。
「覚えとけ。数字は現状だ。未来じゃねえ」
ざわめきが止まる。
「低い奴は鍛えろ。高い奴は慢心するな。伸びる奴だけが残る」
その言葉が、妙に真っ直ぐ刺さった。
授業後、俺は一人で水晶板を見つめていた。
制御D。
悔しい。
量も出力もあるのに、扱えていない。
エリシアが隣に立つ。
「落ち込んでるの?」
「別に」
「顔に出てるわ」
少しだけ笑って、彼女は言った。
「いいじゃない。直す場所が分かったんだから」
「簡単に言うな」
「簡単よ。やることが明確なんだから」
……そうかもしれない。
俺は拳を握る。
才能だけじゃねえ。
鍛えれば変わる。
だったら、やることは一つだ。
「今日の夜、付き合え」
「は?」
「制御訓練だよ。お前、詳しいんだろ」
エリシアは少し目を丸くしたあと、肩をすくめた。
「命令口調なのが気に入らないけど……まあ、いいわ」
その目は、少しだけ楽しそうだった。
ご愛読ありがとうございました!
魔力設定から今後の展開までプロットは細かく作ってます!考察の余地も生まれてくるので楽しい作品になると思います!作品の世界観を掴むまでは時間はかかってしまいますが、必ず面白くします!




