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名門落ちの俺、二流実戦校で成り上がる  作者: ボンゴレ11代目


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第25話 祭りの終わり

本戦五日目。


朝の王都は、いつも通り騒がしかった。


屋台の煙。

観光客の笑い声。

新聞売りの叫び声。


『本日注目試合!』


『ブラッドフォード家、次戦登場!』


『無名の快進撃! トライ・ブレイクにも注目!』


「無名の快進撃って俺たちじゃね?」


ユウト・セルヴァ が新聞を掲げて騒いでいる。


「昨日まで二流校の追加枠だったのに!」


「情緒が忙しいな」


俺は肩を回しながら歩く。


横で カイト が眠そうに言った。


「僕は快進撃より朝食が気になる」


「お前は一生ぶれねえな」


---


昨日のことが、まだ頭に残っていた。


リング上で圧倒された エリシア・ノヴァ 。


そして控え室で見た、泣き崩れる姿。


あんな顔をするやつだとは思っていなかった。


「クロウ?」


ユウトが覗き込む。


「今日いつもより静かじゃね?」


「うるさい」


「戻った」


---


## 異変


中央大闘技場へ向かう通り。


いつもなら観客で溢れている時間なのに、妙にざわついていた。


兵士の数が多い。


大会運営の腕章をつけた職員が、慌ただしく走り回っている。


「……なんか変じゃね?」


ユウトも気づいたらしい。


入口前では、観客の列が止められていた。


「入場を少々お待ちください!」


「詳細確認中です!」


怒号と不満の声が飛ぶ。


「何かあったのか?」


近くの客が言う。


「商業連邦の宿舎で事件らしい」


「事件?」


「学生が倒れてたって」


空気が一気に冷える。


---


## 控室


選手用通路も騒然としていた。


各国代表たちが足を止め、情報を探っている。


レッドファング の ガレス まで珍しく真顔だった。


「おいクロウ、聞いたか」


「何を」


「商業連邦 の選手、何人か死んだらしい」


「……は?」


ユウトの顔色が変わる。


「冗談だろ?」


「俺もそう思いてえよ」


ガレスは眉をしかめた。


いつもの熱血馬鹿みたいな笑顔はなかった。


---


## 緊急放送


その時。


会場全体に鐘の音が三度鳴った。


今まで一度も聞いたことのない合図だった。


全員が足を止める。


魔導拡声器に、緊張した声が響く。


『出場選手、並びに観客の皆様へ緊急通達です』


ざわめきが広がる。


『本日未明、商業連邦 代表宿舎にて、複数名の死亡が確認されました』


息を呑む音が、あちこちで聞こえた。


ユウトが固まる。


俺も言葉が出ない。


『現在、王都治安部隊および五大国合同調査団による捜査を開始しております』


『安全確保のため、本大会は無期限中断とします』


数秒の静寂。


その直後、会場全体が爆発したように騒ぎ始めた。


「ふざけんな!」


「払い戻しは!?」


「選手はどうなる!」


「犯人はどこだ!」


怒号、悲鳴、混乱。


祭りの空気が、一瞬で壊れた。


---


## 温度差


選手通路の端。


ブラッドフォード家 がいた。


レオ・ブラッドフォード は、騒ぎにも興味を示さない。


ただ係員に一言だけ告げる。


「帰還手続きはどこだ」


それだけ言って歩き出した。


「……なんなんだ、あいつ」


ユウトが呆然と呟く。


カイトが珍しく真顔になる。


「強い人って、みんなああじゃないと思いたい」


---


## 祭りの終わり


観客たちは出口へ流れ出す。


屋台は店じまいを始めていた。


笑い声は消え、代わりに不安と怒りが広がっていく。


昨日まで夢の舞台だった場所が、今日はただの事件現場に変わっていた。


その時、兵士たちの小声が耳に入った。


「外傷なし……」


「全員、体内魔力が空だったらしい」


背筋が冷えた。


誰かが、学生たちから何かを奪った。


俺は拳を握る。


試合がなくなった悔しさなんて、もうどうでもよかった。


大会中止の放送から一時間後。


王都の空気は、完全に変わっていた。


朝まで賑わっていた屋台通りは半分以上が店を閉め、観光客たちは荷物を抱えて宿へ戻っていく。


兵士の巡回は増え、通りのあちこちで職務質問が行われていた。


笑い声は消えた。


代わりに、不安げな囁きだけが残っている。


「本当に学生が死んだのか?」


「商業連邦側が怒ってるらしいぞ」


「大会どころじゃない……」


「戦争にならなきゃいいが」


その言葉に、誰も笑わなかった。


---


## 控室の沈黙


選手用宿舎へ戻った俺たちも、妙に静かだった。


ユウト・セルヴァ はベッドに座ったまま新聞を握りしめている。


「昨日まで普通に戦ってた奴らが……死ぬとか、意味分かんねえ」


いつもの軽口はなかった。


カイト も窓の外を見たまま言う。


「事故じゃないなら、怖いね」


「事故じゃねえだろ」


俺は即答した。


全員の魔力が空になるなんて、自然に起きるわけがない。


誰かがやった。


その事実だけが、妙に現実味を持って胸に残る。


---


## すれ違い


廊下へ出ると、各国代表たちが慌ただしく荷造りを始めていた。


帰国命令。


待機命令。


宿舎移動。


怒鳴る監督。泣く一年生。情報を探る上級生。


祭りの残骸みたいな光景だった。


その中を、エリシア・ノヴァ が一人で歩いていく。


昨日の泣き顔が頭をよぎる。


だが今の彼女は、いつものように背筋を伸ばし、何もなかった顔をしていた。


俺と視線が合う。


ほんの一瞬。


だが、互いに何も言わずにすれ違った。


言葉にできることなんて、何もなかった。


---


## 消えた代表校


昼過ぎ。


追加情報が回ってきた。


死亡したのは、商業連邦 の出場チーム三校、計五名。


さらに数名が意識不明。


宿舎の部屋に荒らされた形跡はなく、金品も残っていた。


狙いは金じゃない。


「じゃあ何が目的なんだよ……」


ユウトが青ざめる。


カイトがぽつりと呟いた。


「魔力、じゃない?」


誰も否定できなかった。


---


## 無関心の怪物


宿舎玄関前。


高級馬車へ荷物が積み込まれている。


ブラッドフォード家 の帰還準備だった。


レオ・ブラッドフォード は従者に剣を渡し、何事もなかったように乗り込もうとしている。


ユウトが思わず声を漏らす。


「こんな時に帰るのかよ……」


レオは聞こえていないようだった。


いや、聞こえていても興味がないのかもしれない。


その横顔には、事件への驚きも怒りも、何一つ浮かんでいなかった。


「……別世界の人間だな」


俺は低く呟いた。


---


## 火種


夕方。


王都の上空には重い雲が広がっていた。


窓の外から、兵士たちの怒号が聞こえる。


商業連邦側は王国の警備責任を追及。


王国側は犯人捜索を優先。


他国代表も帰国準備を始めているらしい。


一つの事件で、国同士の空気まで変わり始めていた。


「なあクロウ」


ユウトが不安そうに言う。


「俺たち、もう帰るだけなのか?」


その問いに、すぐ答えられなかった。


大会は終わった。


だが、何かは始まっている。


そんな嫌な予感だけが、胸に残っていた。


その夜、王都で二人目の失踪者が出た。


第25話は、大会編から物語が大きく動き出す転換回となりました。


華やかな祭りの舞台が一転し、不審死事件によって王都全体が不穏な空気に包まれていきます。

これまでの勝敗とは違う、“世界そのものの危うさ”が少しずつ見え始める回でもありました。

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