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名門落ちの俺、二流実戦校で成り上がる  作者: ボンゴレ11代目


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第24話 無言

中央大闘技場。


本戦四日目、最大注目カード。


エリシア隊

vs

ブラッドフォード家


会場は満員だった。


観客席の熱気は、俺たちが戦ってきたサブ会場とは比べものにならない。


「すげえな……」


ユウト・セルヴァ が落ち着きなく辺りを見回す。


「俺たちの試合の十倍は人いるぞ」


「百倍だろ」


「言い過ぎだって」


横で カイト が腕を組んだまま言う。


「でも、うるさい」


「そこかよ」


---


俺は黙ってリングを見ていた。


エリシア・ノヴァ は強い。


初日から知っている。


技術も、判断も、精神も高い。


学園内でも、今大会でも結果を出してきた。


正直、今の俺より上だ。


だからこそ見たかった。


あいつが、どこまで通じるのか。


そして――俺との差も。


---


実況が響く。


『王国代表、留学生エース! エリシア隊!』


歓声。


『対するは王立武術大学附属学院代表! 無敗の怪物! ブラッドフォード家!』


さらに大歓声。


リング中央。


レオ・ブラッドフォード は、すでに立っていた。


無表情。


微動だにしない。


歓声にも、相手にも、何も興味がないみたいだった。


「なんか腹立つな、あいつ」


ユウトが呟く。


「わかる」


珍しくカイトが同意した。


---


## 開始


鐘が鳴る。


同時にエリシア隊の後衛二人が術式展開。


複数の光陣がリング上へ広がる。


速度上昇。

感覚共有。

軌道補助。


レナが一気に加速した。


槍を低く構え、一直線に突っ込む。


速い。


今まで見た中でも最速級だった。


「うおっ」


ユウトが声を上げる。


だがレオは半歩だけ横へずれた。


槍先が空を切る。


同時に手首を払われ、レナの体勢が崩れる。


そこへ追撃せず、ただ離れる。


「……今ので倒さないのか」


俺が呟く。


「倒す必要ないって感じだな」


カイトが言った。


---


## 波状攻撃


その隙にエリシアが踏み込む。


銀槍が三連で突き出される。


喉。胸。脚。


全部急所。


だがレオは最小限の動きで躱した。


一歩。半身。手首の返し。


それだけ。


槍先は服すら掠めない。


「嘘だろ……」


俺の口から漏れた。


速さも技術も高い。


それなのに、届かない。


エリシアは止まらない。


突きから薙ぎ払いへ繋ぎ、さらに回転して逆突き。


レナも横から再突撃。


二方向同時。


だがレオは後ろへ下がることすらしない。


前へ出た。


二本の槍線の間へ、自分から踏み込む。


レナの柄を肘で逸らし、エリシアの槍を指先で流す。


そのまま肩でレナを弾き飛ばした。


「ぐっ!」


レナが転がる。


会場がどよめいた。


---


## 見ていない


エリシアが距離を取り、息を整える。


その目は鋭い。


本気だ。


対してレオは変わらない。


表情も、呼吸も、視線も。


まるで練習相手をさばいているみたいだった。


「あいつ……」


拳を握る。


「ちゃんと見ろよ」


エリシアは強い。


その辺の相手じゃない。


俺が認めている相手だ。


なのに。


レオは、まだ本気ですらない。


---


## 二段構え


後衛が新たな術式を展開する。


リング左右から光柱。


中央へ圧縮。


逃げ場を潰す拘束陣。


同時にレナが正面、エリシアが背後へ回る。


完璧な挟撃。


観客席が沸く。


「決まるか!?」


実況が叫ぶ。


レオは初めて、少しだけ視線を動かした。


背後のエリシアへ。


ほんの一瞬。


レオ・ブラッドフォード の視線が、背後の エリシア・ノヴァ へ向いた。


それだけで、空気が変わった。


獲物を見る目でもない。


敵を見る目でもない。


ただ、そこに障害物があると認識しただけのような、冷たい視線だった。


「――今!」


レナ が叫ぶ。


正面から槍突撃。


後衛の拘束陣が光を増し、左右から圧縮する。


背後ではエリシアの銀槍が一直線に喉元を狙っていた。


完璧だった。


今までこの大会で幾度も勝利を奪ってきた、エリシア隊の必勝形。


観客席が総立ちになる。


「決まった!」


誰かが叫んだ。


---


## 一歩


レオは、一歩だけ踏み出した。


それだけだった。


正面のレナの槍線から半身で外れ、肩口へ掌底。


「がっ――!?」


レナの体が横へ弾け飛ぶ。


同時に後衛の拘束陣へ肘打ちのような一撃。


術式の中心点が揺らぎ、光陣そのものが砕け散った。


「は……?」


ユウトの声が隣で漏れる。


まだ終わっていない。


背後から迫るエリシアの突き。


レオは振り向きもしない。


剣の鞘をわずかに跳ね上げる。


甲高い音。


槍先が弾かれた。


その衝撃でエリシアの体勢が崩れる。


レオはそこで初めて振り返った。


そして、無言のまま拳を放つ。


腹部へ。


鈍い音と共に、エリシアの体が浮いた。


「エリシア!」


客席から悲鳴が上がる。


---


## 立つ者


エリシアは地面を転がり、膝をついた。


口元から血が落ちる。


それでも槍を離さない。


レナも壁際で立ち上がろうとしていた。


後衛二人も、割れた術式陣の再構築を急いでいる。


誰一人、諦めていない。


「……いい根性だな」


ユウトが小さく呟く。


俺は答えられなかった。


強い。


本当に強い。


けれど――届いていない。


全力でぶつかって、それでもまだ遠い。


---


## 初めての抜刀


エリシアが踏み込む。


最後の加速。


これまでで最速だった。


迷いも恐れもない、一直線の突き。


その背後から後衛の補助光。


レナも横から飛び込む。


残った全てを乗せた総攻撃。


そこでレオは、初めて剣を抜いた。


白い刃が光を反射する。


動きは見えなかった。


次の瞬間。


横薙ぎの一閃。


衝撃波のような斬撃がリングを走り、石床を裂いた。


エリシアの槍が弾き飛ばされる。


レナが吹き飛ぶ。


後衛二人も風圧だけで転倒した。


轟音。


砂煙。


観客席が静まり返る。


---


## 終了


煙が晴れる。


リング中央に立っていたのは、レオただ一人だった。


剣を納める。


汗一つかいていない。


審判が震える声で告げる。


『……勝者、ブラッドフォード家!』


数秒遅れて、会場が爆発したような歓声に包まれる。


だがレオは何も反応しない。


倒れたエリシアたちを見ることもなく、そのまま出口へ歩き出した。


「…つまらん」


去り際、ただそれだけ呟いた。


---


## 現実


俺は立てなかった。


拳を握ったまま、席に座り続けていた。


隣でユウトも黙っている。


カイトすら無言だった。


さっきまで強敵だったエリシア。


今の俺では届かない相手。


そのエリシアが、まるで相手になっていなかった。


そんなはずがない。


何かがおかしい。


そう思いたかった。


だが、目の前で起きたのは現実だ。


俺は唇を噛む。


悔しい。


その夜。


明日の試合へ向け、控え室で軽く体を動かしておこうと思った。


頭の中を整理したかったのかもしれない。


扉を開ける。


中には誰もいない――そう思った。


だが、奥の長椅子に一人、背を丸めた影があった。


エリシア・ノヴァ だった。


肩が震えている。


小さく、嗚咽が漏れていた。


俺は思わず足を止めた。


泣いていた。


見たこともないほど、ぐしゃぐしゃに。


誇り高くて、誰より強気で、絶対に弱さを見せなかったあいつが。


顔を伏せ、握り締めた拳を膝に押しつけながら、子供みたいに泣いていた。


「なんで……」


掠れた声。


「なんで、届かないのよ……」


その言葉が、胸に深く刺さった。


息が詰まる。


今日リングで倒れた姿より、今の方がずっと痛々しい。


強いやつが折れる瞬間を、初めて目の前で見た気がした。


見ているだけで苦しかった。


何か言うべきだと思った。


大丈夫だとか。

次があるとか。

そんなありきたりな言葉でも。


けれど、喉が動かなかった。


俺なんかが何を言っても、軽すぎる気がした。


今のあいつに届く言葉を、俺は一つも持っていなかった。


ただ、立ち尽くす。


しばらくして、エリシアは乱暴に涙を拭った。


顔を上げ、こちらに気づく。


一瞬だけ目が合った。


だが何も言わない。


俺も、何も言えなかった。


気まずさとも違う、重たい沈黙だけが落ちる。


やがてエリシアは視線を逸らし、前を向いた。


俺は静かに扉を閉める。


廊下へ出ても、胸の苦しさは消えなかった。


明日の試合よりずっと、あの泣き顔が頭から離れなかった。

強者が敗れる姿、誇り高いエリシアが涙を見せる姿は、クロウにとっても大きな衝撃だったと思います。


ここからただ勝つだけではなく、それぞれが何を背負って戦うのかも少しずつ描いていければと思っています。


ご視聴ありがとうございました!

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