第19話 祭りの前の魔法講習
本戦前の束の間の日常回です。
今回は大会に向けた授業と、この世界の勢力・武器事情なども少し触れています。
クロウたちの空気感も楽しんでもらえたら嬉しいです。
三位決定戦から二日後。
久しぶりに、まともな授業だった。
「……眠い」
教室に入るなり、カイト が机に突っ伏した。
「お前この前の試合で覚醒した空気どこ行った」
「もう使い切った」
「燃費悪すぎるだろ」
ユウト・セルヴァ が笑う。
周囲の生徒たちも、以前より明らかに俺たちを見る目が違っていた。
敗者側を勝ち抜き、本戦出場。
今までただの問題児チームだった俺たちは、少なくとも“結果を出した側”になったらしい。
落ち着かない。
「クロウ君、この前の試合すごかったです!」
女子生徒が声をかけてくる。
「……そうか」
「感想それだけ!?」
ユウトが騒ぐ。
「ありがとうとかあるだろ!」
「うるさい」
教室に笑いが起きた。
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その時、扉が勢いよく開いた。
ガイゼン教官 が入ってくる。
「席につけ。今日は本戦前特別講義だ」
空気が締まった。
黒板に大きく文字が書かれる。
## 国営武術大会・基礎講義
「お前らの中には、出場しただけで満足してる馬鹿もいるだろう」
ユウトが姿勢を正す。
「俺じゃないです」
「お前だ」
即答だった。
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## 武器ランク
黒板に並ぶ文字。
S / A / B / C / D
「一般兵や学生に流通しているのはC〜Dランクだ」
「やっぱ学生用ってその辺なんだ」
「Dランクは訓練用、予備兵装。Cランクは一般兵、上級学生、地方守備隊の標準装備」
教官は続ける。
「Bランク以上は数が減る。地方貴族、騎士団、軍関係者が保管することが多い」
「Aランクは?」
俺が聞く。
「国家級兵装だ。部隊長、有望株、中央貴族、英雄候補に渡る代物」
教室がざわつく。
「Sランクは各国の切り札」
空気が変わる。
「一国に一つあるかどうか。存在そのものが戦争抑止力になる」
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## 五大国
黒板に地図が描かれる。
「この大陸の主要国家は五つ」
- 王国
- 帝国
- 宗教国家
- 商業連邦
- 魔導共和国
「王国は騎士団と教育制度が強み」
「帝国は軍事国家。力で押す」
「宗教国家は特殊魔法に長けるが、過去の敗戦でSランク武器を帝国に奪われた」
「商業連邦は金と技術で戦う」
「魔導共和国は研究国家だ。魔法理論と新術式開発で知られる」
ユウトが目を輝かせる。
「なんか一番行ってみたい!」
「お前は実験材料にされそうだな」
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## バトルタイプ
黒板に分類が並ぶ。
- 前衛型
- 中衛型
- 後衛型
- 補助型
- 指揮型
- 特殊型
「クロウ、お前は前衛寄り特殊型」
「前衛でいいだろ」
「普通の前衛は拳に魔力を一点集中して加速なんぞしない」
教室が笑う。
「雑だが独自性はある」
「褒めてんのかそれ」
「半分な」
「ユウトは補助型。カイトは特殊型寄り万能」
「万能って響き好き」
カイトは寝たままだった。
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## 魔力量と魔法効率
教官が黒板に二つの言葉を書く。
魔力量
魔法効率
「人間は全員魔力を持つ。量には個人差がある」
「だが才能が低くても、努力すればそこそこ強くはなれる」
教室が少しざわつく。
「本当ですか!?」
ユウトが食いついた。
「ああ。最低限鍛えれば一般兵や学生上位程度には届く奴も多い」
「夢ある!」
「ただし頂点争いは別だ」
一気に現実へ戻された。
「そして量だけでは強さは決まらん」
教官は黒板を叩く。
「効率だ」
「同じ百の魔力を使っても、威力六十しか出せん奴もいれば九十出す奴もいる」
「発動速度、精度、持久、制御。全部ここに関わる」
俺は少し身を乗り出した。
「……量が少なくても勝てるのか」
「相手次第ではな」
教官が俺を見る。
「お前の右拳が不安定なのも、効率不足だ」
図星だった。
「力任せに流し込みすぎている。無駄にお漏らししてる状態だ」
教室が爆笑した。
「お漏らしって言うな!」
「事実だ」
「言い方ってもんがあるだろ!」
ユウトまで笑っていた。
「クロウ、お前お漏らし拳だったのか」
「黙れ」
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## 本戦出場校
「最後に、今回の本戦代表校だ」
教室が静まる。
「本校からは」
- トライ・ブレイク
- エリシア隊
- レッドファング
「他にも各国・各学院から代表有名校などが集まる」
- 王立武術大学附属学院
- 帝国軍士官学院
- 聖堂騎士学園
- 連邦戦術院
- 魔導共和国中央学院
教室がざわめく。
「王立附属学院代表は――」
空気が張り詰めた。
「ブラッドフォード家」
「家で出るの!?」
「それってレオだろ!」
教官は頷く。
「主将は レオ・ブラッドフォード 。剣聖家系の嫡流だ」
俺の手が止まる。
俺が落ちた学院。
その象徴みたいな存在。
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## 祭りの前
昼休み。
食堂は大会の話題で持ちきりだった。
ユウトは得意顔。
「俺たち結構有名人じゃね?」
「お前は便乗してるだけだ」
「チームの一員ですが!?」
カイトはパンをくわえたまま言う。
「レオって人、強いの?」
俺は窓の外を見る。
「……知らん」
本当は分かる。
知らなくても分かる。
俺が届かなかった場所の頂点だ。
その時、背後から声がした。
「気になるの?」
振り返る。
エリシア・ノヴァ だった。
「別に」
「嘘が下手ね」
彼女は小さく笑う。
「安心しなさい。本戦では嫌でも会えるわ」
そう言って去っていく。
……気に食わない。
だが、その通りだ。
祭りは、まだ始まっていない。
今回も読んでいただきありがとうございます!
第19話は、本戦前の準備回でした。
武器ランクや五大国、各代表校など、この先の大会編に向けて世界観を少し広げています。
そしてクロウにとって因縁の存在となる、王立附属学院代表レオ・ブラッドフォードの名前も登場しました。
ここから一気に舞台が広がっていきますので、引き続き楽しんでいただけたら嬉しいです!
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次回もよろしくお願いします!




