第20話 怪物たちの舞台
本戦開幕回です。
今回は戦闘前の導入として、王都の祭りの空気や大会の規模感、各国の強豪たちとの温度差を中心に描いています。
クロウたちがここからどこまで成り上がれるのか、楽しんでもらえたら嬉しいです。
五大国共同開催の若き精鋭たちの祭典――国際青年武術祭。
今年の開催地は、アルヴェイン王国 王都。
そして参加総数は、百二十八チーム。
各国の名門学院、軍学校、騎士育成機関、地方推薦校、実戦校。
この大陸で名を上げたい若者たちが、すべてここへ集まっていた。
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朝の王都は、完全に祭りだった。
通りには色とりどりの旗が並び、屋台からは香ばしい肉の匂いが流れてくる。
焼き串。揚げ菓子。香辛料を効かせた帝国風煮込み。
白い蒸しパン。果実水。
大道芸人が火を吹き、子供たちは木剣を振り回して遊んでいる。
通りの端では、勝敗予想表まで出ていた。
「うわぁ……」
ユウト・セルヴァ が目を輝かせる。
「すげえ! すげえ!」
「朝からうるさい」
横で カイト が欠伸した。
「僕は見物客側がよかった」
「戦う側だ」
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## 無名の一枠
俺たち トライ・ブレイク は、選手通路へ向かっていた。
百二十八チームの中の一つ。
王国内では二流校扱いの 第二実戦高等学院 代表チーム。
それが今の俺たちだ。
「ここ来ると、急に場違い感あるな……」
ユウトが周囲の豪華な制服を見回す。
「お前は元から場違いだ」
「仲間に厳しすぎる!」
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## 五大競技区画
国家闘技場は一つではなかった。
王都全体に広がる五つの競技区画。
- 中央大闘技場
- 東武闘区
- 西武闘区
- 南演習区
- 北戦術区
百以上の試合が同時進行で行われる。
その中でも、
- 強豪同士
- 注目選手
- 上位戦
- 各国有力校同士
だけが中央大闘技場で行われる。
ユウトが青ざめる。
「え、俺たち初戦その辺の外会場?」
「かなりある」
「夢がねえ……」
カイトがぼそっと言う。
「静かな場所なら寝やすい」
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## エリシアとの再会
選手通路の途中。
銀髪が目に入る。
エリシア・ノヴァ 。
後ろには エリシア隊 。
レナ が槍を肩に担いでいた。
「遅いわね」
「早く来すぎなんだよ」
「強者は準備が早いの」
腹立つ。
俺は聞く。
「お前の国からも来てんのか」
「ええ。ルミナ教皇国 の代表校も何校か来ているわ」
少しだけ視線が遠くなる。
「祖国は誇りよ。清く、正しく、弱きを守る教えを掲げる国」
一拍置いて、声が冷えた。
「……少なくとも、そうあるべき国だった」
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## 熱血野郎
通路の奥から笑い声。
レッドファング の三人だった。
先頭の ガレス が大声で手を振る。
「よう! 二流校の星!」
「その呼び方やめろ」
「今日は中央で暴れようぜ!」
「お前はもう決まってんのか」
「当然!」
腹立つが、実力的に納得もできる。
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## 完成品
空気が変わった。
ざわめきが深くなる。
白と黒の制服。
整いすぎた三人組。
ブラッドフォード家 。
中央に立つ男。
レオ・ブラッドフォード 。
感情のない目。
無駄のない姿勢。
腰にはAランク武器と噂される剣。
左右には分家の精鋭二人。
三人で一つの完成兵装みたいだった。
周囲の選手たちが自然に道を空ける。
ユウトの声が小さくなる。
「……なんかもう別格だな」
レオはこちらを見る。
一瞬。
それだけ。
そして何もなかったように通り過ぎる。
「今、完全に興味なかったな」
「見てすらいない」
拳を握る。
気に入らない。
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## 開会式
中央大闘技場。
何万人いるのか分からない観客席。
王族席、各国使節席、軍幹部席。
実況の魔導拡声器が響く。
『今年も開幕! 国際青年武術祭!』
『百二十八チームの頂点を決める戦いです!』
歓声が爆発する。
紙吹雪が舞い、魔導花火が空へ弾けた。
『まずは注目代表の入場です!』
『王立武術大学附属学院代表――ブラッドフォード家!』
大歓声。
『ヴォルグ帝国 筆頭代表、帝国軍士官学院!』
歓声。
『ルミナ教皇国 代表、聖堂騎士学園!』
歓声。
『そして留学生エースを擁する話題校! エリシア隊!』
ひときわ大きな歓声。
エリシアは静かに前を向いていた。
『その他出場チームは各競技区画にて初戦開始となります!』
ユウトが叫ぶ。
「俺たち紹介なし!?」
「現実見ろ」
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## 勝者に与えられるもの
王族席の奥。
黒布で覆われた巨大な台座。
兵士たちが厳重に守っている。
実況が声を張る。
『なお今大会上位入賞者には、五大国共同推薦資格が与えられます!』
会場がどよめく。
『騎士団、軍、名門学院、国家育成機関――各進路への最優先審査権!』
『さらに特別功績者には、高位武装適性審査への参加資格も授与!』
歓声が爆発した。
ユウトの目が輝く。
「やばっ……人生変わるやつじゃん」
カイトがぼそっと言う。
「推薦で寝られる場所ある?」
「ねえよ」
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レオは無反応。
エリシアは静かに前を見る。
ガレスは笑って拳を鳴らす。
俺は口元を歪めた。
今は百二十八分の一。
だが、上まで行けばいい。
祭りは始まった。
今回も読んでいただきありがとうございます!
第20話は、ついに国際青年武術祭の開幕回でした。
学園内の戦いとは比べ物にならない規模の舞台、百二十八チームが集う本戦、そしてレオ・ブラッドフォードをはじめとした怪物たちの存在――ここから物語のスケールも一段上がっていきます。
一方で、まだクロウたちは“無名の一枠”。
ここからどう這い上がっていくのか、次回以降しっかり描いていきます。
次回はいよいよ初戦開始予定です。
サブ会場スタートのトライ・ブレイクが、どこまで存在感を示せるのか。
引き続き楽しんでいただけたら嬉しいです!
ブックマークや評価、感想もいつも励みになっています。
次回もよろしくお願いします!




