表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
名門落ちの俺、二流実戦校で成り上がる  作者: ボンゴレ11代目


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/28

第18話 始まらない戦い

三位決定戦、当日。


第一訓練場は朝から異様な熱気に包まれていた。


観客席は満席。

立ち見まで出ている。


「トライ・ブレイク、本当にここまで来たな」

「相手はグランセイルだぞ」

「名門相手の最後の壁って感じだな」


ざわめきの中、俺たちは控え席にいた。


ユウト・セルヴァ がそわそわしている。


「緊張する……」


「珍しいな」


「いや最後の一戦だぞ!? ここ勝てば本戦だぞ!?」


横で カイト が机に突っ伏していた。


「眠い」


「お前は昨日寝ただろ」


「こういう日は余計眠い」


意味が分からない。


だが少し笑ってしまった。


昨日までなら、こんな空気はなかった。


俺たちはようやく、チームになった。


---


リングの反対側を見る。


すでに レッドファング の三人が観客席にいた。


昨日の勝者側通過組。


主将 ガレス が大声で手を振る。


「ようクロウ! 負けんなよ!」


「うるさい」


「今日は声小さめだぞ!」


十分でかい。


さらに上段席。


エリシア隊 もいた。


勝者側一位通過。


エリシア・ノヴァ は腕を組み、静かにこちらを見ている。


隣の レナ は槍の手入れをしていた。


余裕だな。


気に食わない。


---


開始時刻。


だが、相手が来ない。


ざわめきが広がる。


「遅れてる?」

「グランセイルが?」


十分。


二十分。


教官たちが慌ただしく動き回っていた。


ガイゼン教官 の顔まで険しい。


嫌な空気だった。


ユウトが小声で言う。


「……なんか変じゃない?」


「ああ」


カイトも机から顔を上げた。


「眠気が飛ぶくらいには」


---


やがて、中央リングに学院長が現れた。


会場が静まり返る。


「三位決定戦について通達する」


嫌な予感がした。


「グランセイル は本日付で棄権届を提出。学院を自主退学した」


会場が爆発した。


「はあ!?」

「なんで!?」

「退学!?」


ユウトが立ち上がる。


「え、えええ!?」


俺は舌打ちした。


「ふざけんな」


学院長は続ける。


「よって三位決定戦は不戦勝。トライ・ブレイク の本戦出場を認める」


歓声と困惑が入り混じる。


ユウトが俺の肩を掴んだ。


「やった! 本戦だぞ!」


「……こんなの勝ちじゃねえ」


カイトが珍しく真面目な顔をしていた。


「うん。変だね」


---


## 表向きの理由


その後、追加説明がなされた。


グランセイルは先日の エリシア隊 との敗北で、自分たちの限界を悟った。


兵の道を諦め、帰郷を選んだ――という。


観客席はざわついた。


「そんなことあるか?」

「名門が?」

「エリシア隊、そこまで……」


エリシア本人は無表情だった。


俺はその顔を見て確信した。


こいつも信じていない。


---


## 裏で起きていたこと


控え席へ戻る途中、廊下の奥から怒声が聞こえた。


軍服の男たち。


学院上層部。


聞こえないよう抑えているつもりらしいが、漏れていた。


「武器庫の確認は終わったのか!」


「……一つ消えています」


「ありえん! あれは二重封印だぞ!」


「グランセイルの寮室は空です」


足が止まる。


ユウトも顔をこわばらせた。


ガイゼン教官が現れ、俺たちを睨む。


「聞かなかったことにしろ」


「無理があるだろ」


「なら忘れろ」


「もっと無理だ」


教官は深くため息をついた。


---


## Aランク武器


「一つだけ教える」


低い声だった。


「今朝、国営武器庫からAランク武器が盗まれた」


ユウトが青ざめる。


「Aランクって……部隊長級しか持てないやつ!?」


「そうだ」


Aランク武器。


国宝には届かない。


だが戦場の流れを変えうる兵装。


適性が必要で、誰でも扱えるわけじゃない。


だからこそ数が少なく、一つ一つが国家級の価値を持つ。


本来なら今回の大会で、有望株に寄贈される予定だったらしい。


「盗まれたのは?」


俺が聞く。


ガイゼン教官の目が細くなる。


「籠手バルグナック」


拳に装着する黒鉄の籠手。


装備条件が極端に厳しく、使い手がほぼいない代物。


だが、適合者が使えば近接戦の常識を覆すと言われている。


ユウトが俺を見る。


俺も無言だった。


……体術用か。


---


## 違和感の正体


「グランセイルは兵の道を諦めたんじゃない」


俺が言う。


「最初から別目的だった」


ガイゼン教官は否定しなかった。


「表には出すな。国家間問題になる」


つまり、黒だ。


カイトがぼそっと言う。


「スパイってやつ?」


「そういうことだろうな」


ユウトが震えた。


「学園大会ってもっと青春イベントじゃないの!?」


「どこを見てそう思った」


---


## 本戦出場


外へ出ると、観客席ではもう次の話題で盛り上がっていた。


トライ・ブレイク、本戦出場。


不戦勝でも結果は結果。


祝福の声も飛ぶ。


だが俺の中に残ったのは、勝利感じゃない。


奪われた感覚だった。


戦うはずだった相手。


確かめるはずだった今の実力。


全部持っていかれた。


その時、後ろから声がした。


エリシアだった。


「不満そうね」


「当たり前だ」


「でも現実では、戦いは始まる前に終わることもある」


「気に食わねえ理屈だ」


「そうでしょうね」


少しだけ、口元が緩んだ気がした。


「だからあなたは面白いのよ」


言い残して去っていく。


……何なんだ、あいつ。


---


夕暮れの校舎前。


俺は拳を握る。


本戦出場。


それは嬉しい。


だが、それ以上に思うことがある。


盗まれた 籠手バルグナック 。


もし本当に体術向けなら――


いつか俺が、取り返す。


その時は、拳ごと奪い返してやる。

今回も読んでいただきありがとうございます!


第18話は、タイトル通り“始まらない戦い”でした。


三位決定戦という大きな舞台でまさかの棄権。

その裏で動いていたスパイ、そして盗まれたAランク武器――少しずつこの物語の舞台が学園の外へ広がり始めました。


クロウたちは本戦出場決定。

ですが、気持ちよく終われないのもクロウらしいかもしれません。


そして体術使い向けとされる籠手バルグナックも今後大きく関わってきます。


引き続き楽しんでいただけたら嬉しいです!


面白かった、続きが気になると思っていただけたら、ブックマークや評価で応援していただけると励みになります!


次回もよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ