第16話 踏み潰す
上位十チーム決戦・敗者側一回戦。
もう俺らには後がない、
第一訓練場の熱は、まだ冷めていなかった。
「クロウたち、昨日レッドファングにかなり食らいついてたよな」
「負けたけど株上がった感じある」
「次の相手、ちょっと可哀想だな」
観客席の声が聞こえる。
……余計なお世話だ。
リング中央。
俺たち トライ・ブレイク の前に立つのは、アイアン・クロウ 。
リーグ戦でも上位にいた堅実なチームだ。
重装前衛二人、後衛支援一人。
真っ向勝負型。
「クロウ」
ユウトが横から声をかける。
「今日、顔怖い」
「元からこういう顔だ」
「昨日負けて機嫌悪いだろ」
「……少しな」
カイトが眠そうに呟く。
「相手かわいそう」
「同感」
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「始め!」
合図と同時に相手前衛二人が突っ込んでくる。
以前の俺なら、正面から殴り合っていた。
だが今日は違う。
「ユウト」
「了解!」
補助魔法が脚へ入る。
視界が澄む。
反応速度が上がる。
「右前衛、踏み込み深い!」
「見えてる!」
俺は半歩引いた。
相手の拳が空を切る。
その懐へ入り込む。
拳を腹へ叩き込む。
鈍い音。
鎧越しでも関係ない。
相手の身体が浮いた。
そのまま場外。
「なっ!?」
観客席がざわつく。
「一発!?」
「昨日よりキレ増してねえか?」
もう一人の前衛が怒鳴りながら来る。
だがカイトが横へ回った。
「遅いよ」
足元を払う。
体勢が崩れる。
そこへ俺の拳。
終了。
二人目沈黙。
残る後衛は青ざめていた。
ユウトが笑顔で手を振る。
「降参する?」
「くっ……!」
魔法を構える。
その瞬間、ユウトの妨害術式が先に刺さる。
詠唱が乱れた。
「うそだろ!?」
「最近ちょっと練習した」
俺が歩く。
相手が後ずさる。
「待っ――」
拳一発。
試合終了。
「勝者――トライ・ブレイク!」
歓声が上がる。
圧勝だった。
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リングを降りる途中、ユウトが笑う。
「なんかスッキリした顔してるな」
「昨日の借りは昨日の相手に返す」
「今日は八つ当たりってこと?」
「違う」
少し間を置く。
「切り替えただけだ」
ユウトが目を丸くした。
「今のセリフ、かっこいいな(笑)」
「殴るぞ」
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控え席ではカイトが座った瞬間に寝転んでいた。
「終わった?」
「お前戦ってたよな?」
「疲れた」
「五分も動いてねえだろ」
「心が疲れた」
意味が分からない。
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その時、訓練場の反対側で歓声が爆発した。
視線が集まる。
別リング。
そこには エリシア隊 がいた。
試合が、もう終わっていた。
相手三人が倒れている。
「……早すぎだろ」
ユウトが引く。
エリシア・ノヴァ は汗一つかいていない。
隣では レナ が槍を払っていた。
その動きに無駄がない。
以前よりさらに鋭い。
「見た?」
ユウトが小声で言う。
「あの槍、前より速い」
「ああ」
そして ゴード は盾を下ろしたまま立っている。
多分、まともに動いてすらいない。
……差はまだある。
だが、縮める。
そのつもりだ。
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掲示板が更新される。
敗者側準決勝進出。
次の相手はまだ未定。
だが、そこへ近づいてくる影があった。
ガレスだった。
「よう!」
「お前ほんと元気だな」
「勝ったみてえだな!」
「見りゃ分かるだろ」
ガレスは豪快に笑う。
「いい切り替えだ!」
その後ろでセイルが静かに言う。
「先程の右拳、出力制御が安定してきています」
「……敵なのに教えてくれるのか」
「分析結果を述べただけです」
ドグは無言で頷いた。
なんなんだこいつら。
ガレスが俺の肩を叩く。
「三位枠、取ってこい」
「命令すんな」
「期待してんだよ!」
うるさい男だ。
でも嫌いじゃない。
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帰り道。
夕暮れの校舎前。
右拳を開いて、閉じる。
昨日ぶつけた感触がまだ残っている。
足りなかった。
でも届かなかったわけじゃない。
ユウトが横で言った。
「次、もっと強いの来るぞ」
「来ればいい」
カイトが欠伸した。
「眠い」
「それしか言わねえな」
空を見上げる。
残る一枠。
取る。
今度は力ずくじゃない。
この拳で、ちゃんと奪いにいく。
今回も読んでいただきありがとうございます!
第16話は、レッドファング戦で敗れた後の「立て直し回」でした。
負けた直後に沈むのではなく、すぐ次へ向かうクロウたちらしさを書きたかった回です。
特に今回は、クロウが少しずつ“一人で勝つ”から“チームで勝つ”へ変わってきた部分を意識しています。
ユウトの補助、カイトの崩し、そしてクロウの拳。
この三人がようやく噛み合い始めました。
一方で、エリシア隊との差もまだまだ大きいです。
レナの成長や、エリシア側の完成度も今後しっかり描いていく予定です。
そして次回は、敗者側準決勝。
残る一枠へ向けて、さらに厳しい戦いになります。
ここからクロウの右拳がどう進化していくのか、楽しんでもらえたら嬉しいです。
面白かった、続きが気になると思っていただけたら、ブックマークや評価で応援していただけると励みになります!
次回もよろしくお願いします!




